同居のまま離婚する方法|調停や訴訟も同居のままできるのか?

同居のまま離婚する方法|調停や訴訟も同居のままできるのか?

 

  • 調停や裁判で離婚するなら、別居しないといけない
  • でも別居するとお金もかかるし子どもの環境も変わってしまい、不安が多い

 

このようなお悩みを抱えていませんか?

 

離婚するとき、別居は必須ではありません。

確かに別居した方が好ましいケースもありますが、必ずしもそういった事案ばかりではないので安心してください。

 

当事務所が取り扱ってきた事案でも、同居されたまま離婚を実現したケースが少なくありません。協議離婚だけではなく、調停離婚や訴訟による離婚でも、最後まで同居しているご夫婦がおられます。

 

今回は「同居のまま離婚する方法」を弁護士の視点から解説します。

 

 

1.同居していても調停、訴訟はできる

一般的に、協議離婚なら同居のままでもできるけれど、「調停や訴訟となれば別居しなければならない」と思われていることが多いように見受けられます。たしかに、別居イコール婚姻破綻と考える考え方からすれば、「別居」しない限り、離婚しにくいのではないかとの懸念はあるところです。

しかし同居のままでも離婚調停や訴訟はできます。特に、住宅ローンや、他方に別居先がないなどの事情により、別居が実現しない場合、婚姻破綻の事情としては、離婚調停や訴訟が一つのメルクマールとなります。

1-1.離婚調停の場合

同居状態で離婚調停を申し立てると、家庭裁判所から夫婦それぞれに対し、呼出状が届きます。別居しているときと同じように「別の郵便」で届くので、夫婦が各自、自分宛のものを受け取って対応することになります。

 

1-2.離婚訴訟の場合

離婚訴訟を起こせば、家庭裁判所から訴状や答弁書、証拠書類などが自宅宛に送られてきます。

夫の提出書類は妻宛に、妻の提出書類は夫宛に送られてくるので、それぞれが受け取って対応を検討します。なお弁護士に依頼した場合には書類は法律事務所宛に届くので、自宅には届きません。個別に弁護士と連絡をとりあいながら対応を検討することになるでしょう。

 

このように、家庭裁判所は調停や訴訟において「同居」か「別居」かを区別していないということができます。別居が負担になる場合、最後まで同居したまま調停や訴訟で離婚することは可能です。どうしても別居できないなどの事情がある場合は同居のままでも手続を積み重ねていくということがあると思われます。

 

2.同居したまま弁護士に協議を依頼できる

相手と直接交渉するのが困難な場合、弁護士に離婚協議の代理を依頼する方がスムーズに進めやすいケースが多いでしょう。

弁護士を間に入れて話し合うときにも、別居する必要はありません。

同居の夫婦がそれぞれ弁護士を立てて離婚協議を進めることが可能です。もしくは一方だけが弁護士を立てても問題ありません。

 

同居で弁護士を入れる際の注意点

同居しているときに弁護士を入れて交渉する場合、家で当事者同士で話を進めてしまわないように注意しましょう。

また、同居しているとき、交渉が白熱してくると、同居の居心地が悪くなる可能性があるので注意しましょう。

同居の場合相手と日常的に顔を合わせるため、どうしても相手にひとこと言いたくなってしまうものです。しかし弁護士を入れた以上は、弁護士を通じて話し合いを進めないと混乱が生じてしまいます。

 

相手から直接交渉を持ちかけられても、「弁護士から回答する」と伝えて、対応しないようにしましょう。

 

3.同居のまま離婚を進める際の注意点

同居のまま離婚を進めるときには、以下のようなことに注意が必要です。

3-1.ストレスが溜まる

同居していると、もめている相手と日常的に顔を合わせることになるので、大きなストレスを感じる方が多いでしょう。

特に調停や訴訟の場合、相手方の意見を調停委員から伝えられたり相手方が提出した書面を受け取ったりするたびに、どうしても感情的になってしまうものです。

しかし家の中で相手と大げんかをしてしまうと、解決できる事案も解決できなくなってしまうリスクが高まります。

 

同居でストレスが溜まりすぎるようであれば、別居を検討した方がよいでしょう。

 

3-2.暴言、暴力につながる可能性がある

同居したまま離婚を進めると、ときには暴言や暴力(DV)につながるケースもあります。

もちろん全員ではありませんが、普段は感情的にならない方でも離婚という大きなストレスがかかったために、ついつい手を出してしまうケースがあるのです。SIVと呼ばれるDVの類型ですが、DVは常態的な暴力ではなく、離婚間際の別居直前のタイミングで生じることが多いので注意しましょう。

激しい口論が起こる可能性も高くなるでしょう。

 

もともとDVを受けていた案件では、同居のまま離婚を進めると身辺の危険が高まります。

 

同居継続が困難となりそうであれば、早めに別居を検討しましょう。

 

3-3.離婚原因が認められにくい

相手が離婚を拒絶しているケースで同居を継続すると、不利になる可能性があるので注意しましょう。

同居していると、訴訟になったときに離婚原因が認められにくくなる傾向があります。

たとえばメールなどで「子どもを迎えに行って」「牛乳を買ってきて」などと連絡を取り合い日常生活のやり取りをしていると、「夫婦関係が破綻していない」とみなされる可能性が高まります。一方が離婚を希望していない場合は、LINEなどを証拠として提出してきて、「牛乳を買ってきて」とやり取りができているので婚姻破綻はしていないと主張されると裁判官もある程度説得力を感じるといわれています。

 

不倫やDVなどの明確な離婚原因がない場合、訴訟で離婚するには、おおむね3年から5年以上の別居期間が必要といわれています。この点は事案の性質にもよりますので、弁護士に相談されると良いでしょう。

 

離婚調停であっても、同居したままでは調停委員から「本当に離婚したいのですか?」「なぜ別居しないのですか?」「元に戻ってはいかがですか?」などと説得されてしまうケースが少なくありません。同居しながらの離婚調停の場合、同居をしている事情などを弁護士から調停委員に説明させることで、離婚への本気度が伝わる可能性もあるといえます。

 

相手が離婚を拒絶しているなら、別居した方が有利になるケースが多いのでおぼえておきましょう。

 

4.これから別居したい場合の注意点

今は同居していても、これから別居したい方もおられるでしょう。

その場合、別居のタイミングや方法に注意が必要です。

4-1.正当な理由なく別居すると「悪意の遺棄」になってしまう

民法上、夫婦には同居義務が定められています。正当な理由なく一方的に家出をすると、同居義務違反となって不利になってしまう可能性があります。

また別居後も夫婦にはお互いに扶養義務があるので、収入の多い側は相手に婚姻費用を払わねばなりません。

 

別居のやり方を間違えると、「悪意の遺棄」となって離婚が認められなくなったり、相手から

慰謝料請求されてしまったりする可能性があるのでくれぐれも注意しましょう。

 なお、親権について争いがある場合、こどもの福祉の観点から同居したままの離婚協議に社会通念上の相当性があるかどうかも考慮してあげましょう。

 

 

4-2.同居中に証拠を集めておく

いったん別居してしまったら、離婚に必要な証拠や資料の収集が難しくなってしまうものです。いったん別居してしまうと、他方配偶者の許可なく自宅に立ち入るのは、原則として難しいと考えておきましょう。たとえば不倫の証拠を集めにくくなるでしょうし、相手名義の預貯金通帳や保険証書などのコピーをとるのも困難となるでしょう。

これから別居するつもりであれば、同居中にできるだけたくさんの証拠や資料を集めておくべきといえます。

 

5.同居のまま離婚を進める手順

 

同居のまま離婚を進めるなら、以下の手順で進めましょう。

5-1.相手に離婚意思があるか確認する

まずは相手が離婚に同意する気持ちがあるかを確認してみてください。

相手も離婚する意思があるなら、後は離婚条件を定めるだけです。この場合、「離婚条件」を定めるため、調停を利用しているのだ、と目的も明確にしやすいため、積極的な調停委員の斡旋を受けられる可能性も高まります。

一方相手が離婚に応じない場合、協議離婚は難しくなってしまいます。離婚するためには、相手を説得しなければなりません。

どうしても合意してもらえないなら調停や訴訟へ進むしかありません。

 

5-2.離婚原因があるか確認

相手が離婚を拒絶する場合でも、法律上の離婚原因があれば訴訟を起こすことによって離婚できます。

  • 不倫
  • DV、モラハラ
  • 生活費の不払い
  • 正当な理由のない家出、同居拒否
  • 3年以上の生死不明
  • 回復しがたい精神病

上記の他、セックスレスが離婚原因になるケースもあります。

 

一方、離婚原因がない場合、相手が同意しないと離婚できません。そのままでは、訴訟を起こしても棄却されてしまいます。

相手に再考を促すためにも離婚原因としての「長期間別居」の実績を作るためにも、いったん別居を検討した方がよいでしょう。つまり、3年から5年の別居が「婚姻を継続し難い重大な事由」と考えられています。したがって、同居のままで確たる離婚原因がない場合は、「長期間別居」の実績を作るのが良いといえるでしょう。

 

 

6.同居したまま離婚を進めるメリット

6-1.経済的な不安が小さくなる

別居するときには高額な引っ越し費用がかかりますし、別居後の生活費もかさみます。

相手が充分な生活費を払ってくれないリスクも懸念されるでしょう。

同居したままであれば、そういった経済的な不安が小さくなります。

 

6-2.スムーズに離婚できるケースも

別居するよりもむしろ同居のままの方が、スムーズに離婚できるケースが少なくありません。別居すると同居中に感じていたストレスを忘れてしまいがちですが、同居していると毎日がストレスになるので「早く離婚したい」と考える方がおられるためです。

 

6-3.証拠を集めやすい

別居すると資料や証拠の収集が困難となりますが、同居すると必要なものを入手しやすいメリットがあります。ただしこれは相手にとっても同じなので、自分の身辺管理には充分注意が必要です。

 

 

同居のまま有利に離婚するために、法律の専門家である弁護士による支援があると安心です。当事務所では離婚案件に積極的に取り組んでいますので、お悩みの方は離婚に専門的に取り組む当事務所に、是非、ご相談下さい。

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