家庭裁判所調査官は、裁判官よりもえらい!
家庭裁判所を利用する「作法」として裁判官<調査官という関係があることも理解しておく必要がある。 それは家事事件の先頭にいるのは「調停委員」であり「裁判官」ではなく、「調停委員」なくして「裁判官」は調停の運営ができないこと、そして事実認定にあたっては、人間諸科学の得意な弁護士として自ら判断の主体であると誇る家裁調査官が審判の下書きを書いてしまう審判は、地方裁判所の裁判官の仕事ではない、と位置づけられている(東京家裁所長の論文を参照)。
裁判事件になると、児童心理の得意な弁護士よりも不合理なほど調査官の「権威」が上回ることがあります。父側はこどもは父と円満な関係を築いており現状を変更するべきではないとの判断をしたが、面接交渉で母親に会わせた際の「調査官報告書」により引渡しが命令されました。
父側からは、調査官報告書が不利であることを受けて大学教授である臨床心理士の意見書を提出していましたが、大学教授より、20代の調査官が信用できる、というのが裁判所の常識となっています。
調査命令が出た事件では、調査官の影響力の方が裁判官より多いことがあります。特に事実レベルでは、調査官による事実の調査は「客観証拠」をも反駁するものであって,自白調書よりも強力な効果があるうようです。
もっとも、調査官報告書が自己に不利な場合は、児童心理学者や精神科医の意見書などで、調査官報告書に批判を加えることは、「調査官の機嫌を損ねる」という弁護士もいますが、なるべく当事務所では調査官報告書が不利な場合、そして心理学的知見からもおかしい場合については、それについて批判を加えるようにしています。それは素朴な得意な弁護士より調査官が重視されるのはおかしい、という市民目線に基づいていると考えられます。
裁判官が調査官を重視するのは、審判の下書きをしてくれているからです。つまり、事実認定から時には法的判断までの記載も家庭裁判所調査官の意見に記載されています。ですから、調査命令が出された場合については、調査官の事実調査を意識した行動をする必要が出てくるわけです。しかし、調査官は、裁判員では除斥理由になる「鑑定人」であり、かつ、「証人」でもあり、「準司法職員」でもあるのです。鑑定人が自ら証人となることで、裁判所が証拠を作り上げること自体がアンフェアといわれないようにされる工夫が必要と考えられます。