離婚協議における合意形成の促進

今日は、弁護士と、横浜市の福祉主事、それにシュシュで、パースペクティブをしていきたいと思います。

弁護士:未成年の子がいる離婚の場合、両親の合意による解決が望ましいです。それは合意内容を自主的に履行すること、子の成長に対応して内容を修正、変更することにつながるからです。

福祉:合意形成を可能にするためには、合意の前提としての基本的な情報提供が不可欠よね。財産分与、親権者、養育費、面会交流、家事調停の意義、裁判官、調査官、調停委員、弁護士など離婚に関わる法律家の役割、離婚が子に与える影響、夫婦間の葛藤などからの自己回復です。特に、福祉は、司法からも医療からも「下に見られている」傾向が強いですが児童虐待などの最前線にいるのは私です。

シュシュ:叔父さんが問題視しているのは、日本では、協議離婚の場合は、情報提供や援助の確保がない、ということだよね。

弁護士:はい。女性でも、親権者は旦那でとにかく離婚したいから離婚届けを提出してきたという相談もあります。韓国では、協議離婚にも家裁が関与していますし、シュシュがいるフランスもそうですね。

福祉:対立型から調整の場になればいいのよね。

弁護士:韓国と台湾は共同親権なんです。面会交流も法的権利として保障されるのに対して、日本では単独親権なんです。ですから深刻な紛争になるということで、日本は特に、親権や離婚慰謝料肯定説がとられているだめ、「対立型」からの脱却は難しいですね。

シュシュ:まあ、僕は、フランスにいたいです、という意見を尊重してくれましたので、パパが監護者になっていますが、僕もフランス人なので共同親権行使でママも親権者なんです。日本をみると「・・・」と思います。父母が子の利益の視点に立つよりも、監護能力の優劣を争ったり、そのために相手方の人格を誹謗中傷したり、監護実績を作るためにこどもを拉致して別居親に合わせない、実力行使でこどもを連れ去るなどの熾烈化があります。フランス人からは、理解できないですね。

弁護士:どの辺が理解できない?

シュシュ:フランス人では、母親もひとりの女性なんだよ。だから、ママにはママの生き方がある、君は7年間も、ママに幼稚園や小学生の送り迎えをしてもらえたのだから、幸福な部類に入るのだよ、といわれたことがあります。フランス人は、こどものためにという発想はありませんね。フランスではペアリングといって、いいパートナーを紹介しあう文化があって、離婚してもステップファミリーになることも多いです。

弁護士:シュシュっくんのフランスでは、別居と相互の同意を中心に有責性を争うことが少なくなり、離婚慰謝料などもありません。それはあくまで扶養として論じられます。このように、離婚を理由とする損害賠償請求が否定されたことが、対立を激化しない制度的保障となっているのです。

福祉:アリゾナ州では、離婚・別居等の裁判手続きを申請してから45日以内に家族センターで義務的親教育を受けることが義務付けられています。いかに離婚後の親子関係を形成していくか、子の養育計画、つまりペアレンティングの調整をします。

弁護士:日本でも、当事者の合意によって紛争を解決することが理想ですが、親権、面会交流、財産分与、慰謝料に争いがあると調整的解決は難しいなあと感じています。つまり「対決型」ですね。

シュシュ:日本も、調停は、子の養育計画を考える場にすれば、親権なんていう形式的な権利に固執する必要ないのにね。親権といってもこどもを支配できる権利ではないのだから。

弁護士:さて、日本では、子の意思の尊重をどう考えるか、家事事件手続法の改正もあります。

福祉:子の意思の尊重というのは、第一に、子の意思を把握することにより、父母が子の利益を考え、子の気持ちに配慮し、親同士の対立・葛藤を鎮め、親の責任として、離婚後の子の養育計画、つまりペアレンティング(面会交流、養育費の分担)を話し合う必要性を認識することにつながる可能性ですね。特に、私は10歳の双子の母ですが、まだまだ、甘えん坊です。仮に離婚することになったとしても、公務員のように比較的時間に自由や余裕がある仕事の場合は、月2回くらいの面会交流もあっていいと思います。

 第二は、子を独立した人格として承認し、子は自分の気持ち、意見を表面する機会を保障され、その意思が優先されるべきであるという、手続の当事者という位置づけです。

弁護士:あなたの場合、息子さんが割と感情表現される人で、共働きで僕はさみしいんだ、といって、しばらく一緒に寝ていたというエピソードもありましたね。

福祉:双子なので、二段ベッドなので、私が床に布団を引いていたのですが、ほこりっぽいので、今はもう卒業ね、というようにしていますが、たまにベッドにもぐりこんでくることがあります。

シュシュ:日本で最悪だと思うのは「親の事情にこどもを巻き込むのはよくない」とか「離婚は説明すべきでない」という考え方のうえで、生活が激変することがあるでしょう。それをなぜかと問うても「こどもには関係ない」と断じられると、こどもって人権共有主体性があるのかな、とか、その前にぐれちゃうような気がします。

弁護士:シュシュの意見は?

シュシュ:僕の意見は、離婚のケースは様々であり、こどもによって感じ方も違う。ただね、親の離婚は自分の人生観も含めて今後の人生を左右する重要な問題です。「被害者的地位」において臭いものにはフタみたいなことはよくないね。僕は僕なりの気持ちをもっているし、意思もあるさ。

福祉:アメリカでも、一般的に、離婚手続きに入る前に、親教育が義務付けられ、親が子と対話することが浸透していますね。日本でも、子の意思の尊重のために、子自身の受け止める力を信頼して、子への情報提供をすべきであると思います。ところで、こどもに必要な情報ってなんなのかしら。うちは、A型コンビで私と息子、B型コンビで父親と娘が仲がいいのだけど、そういうことなのかしら。

シュシュ:そういうことではなくて、親の離婚は自分のせいではないということだと思うよ。僕も、「もっと僕がいい子だったらママは出ていかなかったかなあ」と思うことがありました。それから、こどもは復縁願望、つまり、「パパとママがやり直す可能性」を期待してしまいますがないことをはっきり説明するべきでしょう。それから、父子家庭も難しいけど、情緒的にはどうかしらないけど、法律上は、親はこどもを守るべきで、こどもが親を守るべきではない、とはっきり説明することかな。

弁護士:親がダメな人の場合、背伸びしていたり、甘えられない子が多いもんね。

シュシュ:あとは見捨てられたわけじゃない・・・僕のママは不倫をしていましたが、うーん僕の心の中では捨てられた感はありますが、そういうこどもが少なくなることを願います。それから別居した親とも交流できること、離婚を経験することは自分だけではないことです。

弁護士:シュシュも課題図書で、「今夜、僕は夫婦と離婚した」という課題図書を出されていたよね。

シュシュ:フランスでは離婚が多いから、離婚している人の心情をその立場にたって考えることも重要と考えられているんだ。日本みたいに「標準家庭」をベースに、いじめをするみたいなダサい国じゃないんだよ。悪いけど。

福祉:10歳から12歳のこどもには、客観的情報や法的情報を与えるべきかしら。

シュシュ:あなたは、10歳でも幼いと考えているから否定的なのかもしれないけど、離婚しているこどもはサバイバーだと思う。だからして、親が離婚する場合の手続き、家裁や家族の法律の仕組み、裁判官、弁護士、調停委員、調査官などの役割、別居後の生活の変化などですね。正直、僕は、こどもの代理人がいて、離婚の際はこどもの立場から主観的利益を寄り添ってくれる人がいると、こどもも救われると思いますね。日本も導入すべきだと思います。調査官とは全然役割が違います。

弁護士:どんなところが?

シュシュ:こどもの代理人というのは、今、自分がどんな立場にあって、これからどのような経過をたどるのか、どのように対応できるのかを予習できるのか、突然のことにどうしてよいのか分からない事態、とまどいなどのケアも踏まえて法的主張をしてくれる、と嬉しいですね。10歳から12歳って、離婚サバイバーのこどもにとって、テンダーイヤーズじゃないと思うんですよ。だから、あえてロケーションで選ぶってのもありだと思うし、僕のフランスでは乳母を雇うのが普通だから、それほど母子優先にこだわる必要もないと思うんだよね。だからさっきいっていたB型コンビならB型コンビでいいんじゃない?って思うわけ。

福祉:親が離婚に関して、こどもに伝えるのは難しいのよね。

シュシュ:うん。僕は10歳だったけど、自宅で離婚協議して丸聞こえだったのでね。特に説明してくれなくてもいいよ、しかもママの不倫が原因だし、みたいな、感じでした。たしかに、子の年齢に配慮する必要はあると思うけど、あまりばかにした説明よりも本質を突いた説明の方が納得を得られると思うけどね。

弁護士:パパは、シュシュの話しを聴いてくれた?

シュシュ:さあ?でも離婚を契機に、パパさんキャラで売り出しているし、僕のために何ができるのか考えてくれている印象は受けます。情報も伝えてくれるし、子の声も聴いてくれるし、その声を尊重してくれるかな。ところで、もうお分かりだと思うけど、児童虐待にも通じると思うけど、協議離婚の際にこどもの声がかき消されているという問題が日本ではあるね。現在の協議離婚制度は廃止した方がいいよ。

弁護士:少なくともこどもがいる場合については、家裁や認定機関などでの親教育が必要だよね。

未成年者がいる離婚というのは6割なんだ。22万人ということになるよね。喪失感というのは、昇華行動の原動力になるけどステップを踏み外す理由にもなります。

シュシュ:あと、日本は面会交流が貧弱すぎるね。裁判所ですら、「スタートラインを決めるだけ」というのですから、面会交流の履行について、支援する公的制度を行政機関でもうける必要があると思います。

福祉:私は、離婚したら男は、こどもの責任がなくなるという印象に反対なの。実際、施設は、児童虐待やDVで保護している子よりも父子家庭の子が多いの。育てられないのよ。だから、父母は離婚しても監護教育の責任を有するから、離婚後も共同親権を原則とした方がこどもの地位が安定するのではないか、と思います。もちろん、DVなどの場合は例外法制があってもいいですが、日本では、DVに詳しい弁護士が、DVを仕立て上げたという名古屋地裁の判決が出るくらい、制度の不備、疲弊が目立ってきていますね。正直、立法政策で対応すべきか、行政対応が必要なのだと思います。しかし、行政といっても、児童虐待等の事例の優先もあり、明石市のように弁護士出身の市長のように、意識が高くないと、というのはどうかなと思います。正直、明石市がやっていることは、驚くべきことではないし、名古屋市でも横浜市でもやれるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

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