離婚時の財産分与と「清算割合」──医師夫婦の事例に学ぶ

 

離婚時の財産分与と「清算割合」──医師夫婦の事例に学ぶ

財産分与の基本から例外までを解説。清算割合とは?

はじめに

離婚に際して避けて通れないのが「財産分与」。中でも重要なのが、夫婦が築いた財産をどう分けるかという「清算割合」です。

今回は医師夫婦のケースを題材に、家事労働の寄与、名義と実質の違い、子ども名義の資産の扱いまで、最新の実務運用に即してわかりやすく解説します。

事例:医師夫婦の財産分与争い

  • 婚姻期間:30年(20年目から家庭内別居)
  • 財産構成:妻800万円(預金)、夫600万円(預金)+株式2000万円
  • 家事育児:妻が全面的に担当
  • 妻の主張:7割の清算割合
  • 夫の主張:各自管理していた財産であり清算不要

財産分与における3つの考え方

① 寄与度説(実質的共有説)

夫婦それぞれの「貢献度」を個別に評価して割合を決定する方法です。

② 平等説

経済的貢献の差にかかわらず、法的に「等しい貢献」とみなし50%ずつ分ける考え方です。

③ 平等推定説(実務運用)

原則として夫婦の寄与を「2分の1」と推定し、明らかに差があるときだけ修正されます。

夫婦のタイプと清算割合の違い

類型原則的な割合特徴
専業主婦型1/2家事育児を担うことが経済活動を支えると評価
共働き型1/2収入差があっても原則修正されない
家業従事型原則1/2(例外あり)一方に特殊技能がある場合など例外あり。特に夫婦ともに医師であった場合や他方が、看護師、医療事務だったケース。

本件の焦点はどこか?

  • 家事労働の評価:妻が長年家庭を支えた事実は高く評価される
  • 資産の名義:名義が夫でも「婚姻中の収入」であれば共有財産
  • 株式の評価:夫が医師として独自に得た財産かどうかが争点

子ども名義の財産は分与対象か?

以下の基準で判断されます。

  • 児童手当・養育費の積立:分与対象になる
  • お年玉・祝い金:原則として子どもの固有財産で対象外
  • 学資保険:夫婦の共有資金で支払っていれば分与対象

子ども名義の預金が実質的に夫婦の財産から出ている場合、それは「名義預金」として分与の対象となる可能性があります。

実務上の結論:本件では「1/2ルール」が基本

妻の主張する7割分与は、原則として実務においては認められにくいと言えます。財産形成への寄与が極端に偏っていない限り、多くの家庭裁判所では「2分の1ルール」が採用されます。

弁護士からのアドバイス

次のようなケースでは、早めに専門家への相談をおすすめします。

  • 一方の名義で大きな財産がある
  • 収入は少ないが長年家事育児を担ってきた
  • 学資保険や子名義預金の扱いに悩んでいる

まとめ

  • 財産分与は「清算的分与」が基本
  • 清算割合は原則「2分の1」が実務基準
  • 家事育児の貢献も正当に評価される
  • 子名義資産や学資保険も分与対象となることがある

離婚に伴う財産分与でお悩みの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。

清算割合が修正される例外ケースとは?

原則として2分の1の割合で清算されますが、以下のような例外的事情が認められる場合には、寄与度に差を設けることがあります。

  • 特殊な資格や才能により高額な財産を形成した場合
  • 家計を破綻させるほどの浪費や不正行為があった場合
  • 就労も生活費の分担もせず、家庭に無関与だった場合

こうした要素は、家庭裁判所が「一切の事情」として考慮します。

家庭裁判所の実務と法改正の動き

2024年の家族法制見直し要綱案では、寄与度を「原則平等」としつつ、婚姻期間や生活水準、年齢・健康なども評価項目として明文化されました。実務でも「名義より実質」が重視されています。

公平な再スタートを保障する制度として、財産分与の在り方は今後ますます柔軟かつ実質的な判断へと進むと見られます。

2024年改正法の財産分与(令和8年5月施行)

財産分与の改正について

2024年5月17日に成立し、同月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(改正法)は、父母の離婚後の子の養育に関わる問題を多角的に見直しており、その一環として財産分与に関する規定も改正されました。

改正の背景と目的 財産分与は、直接的には子の利益の確保を目的とするものではありませんが、今回の家族法制部会で検討の対象となりました。その背景には、ひとり親世帯の半数近くが相対的貧困の状況にあり、その多くが離婚を理由としている点があります。離婚時に適切な財産分与が行われないことが、子の貧困の一因となっているのではないか、また、離婚後に子と同居する親が適正な財産分与を受けることが子の利益の観点からも重要である、という問題意識がありました。

改正の主なポイント 今回の改正では、主に以下の3点が変更されました。

  • 請求期間の伸長 財産分与を家庭裁判所に請求できる期間が、現行の2年から5年に伸長されました。これにより、より長期間にわたって財産分与請求の機会が確保されることになります。
  • 考慮要素の明確化 財産分与の請求において、家庭裁判所が考慮すべき要素が明確化されました。現行法では、財産分与の法的性質として、夫婦財産の清算、離婚後の扶養ないし補償、離婚慰謝料の3つの要素が挙げられていましたが、特に「扶養ないし補償」の要素が軽視されがちであるとの指摘がありました。今回の改正は、具体的な考慮要素を示すことで、財産分与の中に清算と扶養の要素があることを明確にしようとするものです。
  • 財産情報開示命令の新設 財産分与に関する家庭裁判所の手続きにおいて、財産情報の開示命令に関する規定が新設されました。これは、当事者間の情報格差を是正し、より公平な財産分与を実現することを目的としています。
  • 今後の課題と実務への影響―扶養的・補償的要素の考慮 考慮要素が明確化されたことで、これまで実務で定着していた「2分の1ルール」に代表される清算的要素に偏りがちだった財産分与の判断が、改正法によって扶養的・補償的要素も適切に考慮される方向に変化していくのか、またその具体的な金額がどのように判断されていくのかは、施行後の実務の集積が待たれるところです。
  • 情報開示命令の実効性 財産情報開示命令の実効性については、課題も指摘されています。命令に違反した場合の過料(10万円以下)が、事案によっては制裁としての機能を果たさない可能性があります。このため、財産分与の認定において、情報開示命令に応じない姿勢を適切に考慮するなど、適切な情報開示を促進する実務運用が求められるでしょう。
  • 運用の定着 これまでの取り決めに比べて、様々なバリエーションが想定されるため、何が子にとって最善の利益となるかを判断することは、特に運用が定着するまでの間、困難が生じる可能性があると推測されています。

これらの改正は、離婚後のひとり親世帯の経済的安定を図り、ひいては子の利益を確保することを目指していますが、その実効性は今後の運用と実務の積み重ねにかかっています

相談時に持参すべき資料チェックリスト

  • 婚姻期間中の預金通帳(写し)
  • 不動産の登記簿・住宅ローン残高証明
  • 保険証券(学資・生命保険など)
  • 源泉徴収票・確定申告書など収入資料
  • 生活費や家計の分担に関するメモ等

これらの資料があると、弁護士も的確な助言・清算額の見積りが可能になります。

依頼者様の想いを受け止め、
全力で取り組み、
問題解決へ導きます。

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