不動産に関する特有財産とは?財産分与で争点となる評価・立証の実務ポイント

 

不動産に関する特有財産とは?財産分与で争点となる評価・立証の実務ポイント

離婚に伴う財産分与において、不動産が関係する場合、特有財産の主張がしばしば問題となります。特に不動産の取得に一方が特有財産を出資していたとする主張では、その出資割合や不動産価値への寄与をどう評価・立証するかが争点となります。

この記事では、実務上の取り扱いや注意点を、具体的な事例とともにわかりやすく整理しますので、ぜひ参考にしてください。

 

特有財産の評価方法

特有財産を立証するために必要な証拠

特有財産性の立証

購入時の不動産価格に関する資料

不動産の「現在価格」の評価方法

基準日後に売却された不動産の取り扱い

まとめ

特有財産の評価方法

不動産に関する特有財産の評価は、一般的に「現在の不動産価格に、購入時に出資された特有財産がどの程度占めていたか」の視点で算出されます。

代表的な計算式は、以下の通りです。

 

特有財産部分 = 不動産の現在価格 × 特有財産出資額 ÷ 不動産の購入価格

 

特有財産を代金の一部に拠出して不動産を購入した場合、購入した不動産については、その代金のうち特有財産から拠出した割合を特有財産とする、ないしは特有財産と取り扱う場合があります。実務は、最近はこのような方法をとることが多いのですが、不動産全体を実質的共有財産として、特有財産からの拠出部分は寄与割合で考慮する取扱いもあります。上記の特有財産の評価方法は、特有財産を代金の一部に拠出して不動産を購入した場合、購入した不動産については、その代金のうち特有財産から拠出した割合を特有財産とする場合といえるかと思います。

 

購入価格とは、原則として「頭金+住宅ローン元金」の合計を指します。そして、算出された特有財産部分を現在の不動産価格から差し引き、残りを分与対象とするのが実務上の一般的な方法です。

 

住宅ローンが残っている場合には、次の順序で評価されます。

 

  1. 不動産価格から特有財産部分を控除
  2. 残額から住宅ローン残債務を差し引き
  3. 最終的な残額を分与対象財産とする

これは、東京高裁令和5年2月28日判決(令和4年(ネ)第4383号)でも採用された手法です。

 

なお、実例に基づいた不動産に関する財産分与の計算については、以下の記事を参考にしてください。

 

離婚時の不動産の財産分与とは?事例で学ぶ処理方法と留意点

特有財産を立証するために必要な証拠

計算式からお分かりのように、財産分与でまず立証が求められるのは、出資した資金が特有財産からであることと購入時の不動産価格です。

ここでは、特有財産であったことと不動産価格の立証方法を解説します。

特有財産性の立証

特有財産を主張する際は、それにより有利になる方に主張立証責任があります。頭金やローンの原資が婚姻前の財産や親からの贈与であることを客観的に示す必要があります。主張立証責任があるため、主張立証に失敗すれば、真実特有財産であったとしても、それを示す証拠はないということで特有財産にはなりません。

以下のような場面が、その典型例です。

 

  • 親の贈与
    親名義の預金口座の取引履歴や、親から直接不動産業者への送金記録などが重要です。贈与税の申告書も有力な証拠です。ただし、親族の陳述書だけでは不十分とされる傾向があります。
  • 婚姻前の預金
    婚姻前に頭金が支払われていれば、特有財産性は明確です。婚姻直後の支出でも、婚前の貯金を原資としたことが示されれば、特有財産と認定される可能性があります。

婚姻前に取得した不動産に対して婚姻後に住宅ローン返済をしていた場合や、基準日後に特有財産からローン返済を行った場合も、同様に特有財産からの出資が評価されます。ただしこの際、出資額はあくまで「ローン元本の減少額」とされ、利息や固定資産税などは別途検討される必要があります。

購入時の不動産価格に関する資料

不動産の購入価格を示すためには、売買契約書、頭金や購入代金の領収書などが必要です。仲介手数料や登記費用、印紙代などは、当事者間での合意がない限り、購入価格には含めないのが一般的です。

 

購入と同時に大規模なリフォームを実施した場合には、そのリフォーム費用が評価額に寄与するため、購入価格に合算して特有財産割合を計算することがあります。なお、古い取引で契約書が手元にないケースでは、住宅ローン元本を購入価格とみなされることがあります。

不動産の「現在価格」の評価方法

不動産の評価には、さまざまな方法があります。固定資産税評価証明書、路線価、不動産業者の査定書、不動産鑑定などがありますが、法律上の明確な優先順位はなく、客観的かつ合理的であればいずれの方法でも問題ありません。不動産鑑定士による鑑定による場合もありますが、一般的には簡易査定をいくつか取得したり、固定資産税評価証明書も参考にしつつ、認定する場合が一般的ではないかと思います。

 

都市部では、固定資産税評価額(時価の約7割から約8割)、路線価(時価の約8割)と実際の市場価格に大きな差があることが多いため、実務では当事者双方に不動産業者の査定書を取得してもらい、その平均値を用いるケースが一般的です。

 

一方、周辺都市部や地方では、固定資産税評価額や路線価で足りる場合があります。公的評価額が不明な場合は、地方自治体に対し調査嘱託を申し立てることが可能です。もっとも、路線価については、一般に公表されているため、照会できるかは疑問もあります。

 

鑑定評価については必ずしも必要とはされていません。離婚などの家族法の分野では、評価額が大きくかけ離れているような場合以外は鑑定士に依頼しないことの方が多いように思います。不動産鑑定士による鑑定は、当事者の一方又は双方が希望し、費用を予納する場合に限られます。費用も、もともと不動産鑑定士は、商業ベースに活動されている方が多いので依頼料も高額になりがちです。

基準日後に売却された不動産の取り扱い

離婚前に一方が不動産を売却していた場合、原則としてその売却価格が評価基準です。特段の事情、たとえば明らかに安値で売却したなどの不当廉売がない限り、その価格がそのまま評価額として用いられます(東京高裁令和3年11月5日判決・令和3年(ネ)第1980号)。

 

売却にかかった仲介手数料・登記費用・印紙代・残置物の処分費などの諸費用は、売却額から控除されます。

まとめ

不動産における特有財産の主張は、出資割合や証拠の整備、評価方法の選択によって大きく結果が異なります。ポイントは次のとおりです。

 

  • 特有財産は「客観的な証拠」での主張立証が不可欠(実際、事実があっても小尾がないと特有財産になれないことも)
  • 評価方法は、出資割合と不動産価格の妥当性を前提に計算
  • 売却済不動産は売却額が原則的な評価額
  • ローン残債やリフォーム費用の扱いにも注意が必要

公平な財産分与を実現するには、事前に資料を揃え、適切な方法で評価・整理しておくことが重要です。

 

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