財産分与における基準日の考え方とは

 

財産分与における基準日の考え方とは

例えば、基準日が前倒しになると、女性側は、財産分与額が少なくなるかもしれませんので後倒しを企図しやすいです。

また、男性側が財産分与額が少なくなるかもしれませんので、前倒しを企図しやすいです。

財産分与においては「夫婦の財産的な協力関係の結びつきが解消された日」が基準日とされ、財産分与の対象や額を決める際に重要な意味を持ちます。一般的には、別居日が鉄板ですが、調停提起日や合意日となる場合があります。

一方で夫婦の関係によっては、基準日を確定することが困難なケースがあります。単身赴任や家庭内別居などのケースです。多くの弁護士が別居をすすめるのは、財産分与の法理という意味もあるのですね。

この記事では、基準日の重要性とさまざまなケースにおいて基準日をどう決定するかを解説いたします。

 

財産分与において基準日を決める理由

基準日に関する基礎的な判例について

財産分与の基準日や開始時点の特定が難しいケース

  1. 家庭内別居のケース
  2. 単身赴任のケース
  3. 一時的な別居のケース
  4. 婚姻前に内縁関係があったケース

まとめ

財産分与において基準日を決める理由

財産分与において基準日が重要とされる理由は、大きく分けて以下の2つです。

 

  • 分与する財産の対象を明確にする
  • 財産の額を評価する時点を決める
  • なお、株式などの財産を評価するときは「裁判時」、つまり口頭弁論が終わるときです。

 

基準日以降にそれぞれが形成した財産は、特有財産として分与の対象にはなりません。一例を挙げると、別居後の住宅ローンの支払いも特有財産と法理上はなり得るのです。

婚姻(又は同居)関係の開始から、基準日までに形成された財産が分与の対象とされます。

また基準日は、財産の評価額を決める役割があります。不動産や株式のように評価額が変動する財産をいつの時点で評価するかは争いがありますが、こちらは別居時ではなく裁判時とされているので注意が必要です。

ただし、この2つの基準とされる日は一致するとは限りません。別居後に調停を経て離婚が成立した場合、財産分けをする貸借対照表を作る基準日は別居日となります。

他方、有価証券などの評価など、離婚が成立した日が評価を行うのは裁判時とされており、一般的に「基準日」というのは、前者のことをいい、評価の基準日のことは基準日と称することは少ないでしょう。

一般的に「財産分与の基準日」と言った場合は、前者の分与する財産が確定する日を指します。区別して後者を指す場合の呼び方は、「評価の基準日」です。この記事においても、主に前者の意味で解説いたします。

基準日に関する基礎的な判例について

名古屋高裁平成21年5月28日判決判例時報2069号では、離婚前に別居した場合は別居時点で協力関係を解消したとみなすとしています。

また、最高裁昭和34年2月19日第一小法廷判決・民集13巻2号では、財産分与において考慮すべき事情には訴訟時における財産状態を含むとしており、これが離婚成立時点(口頭弁論終結時)の価格で財産を評価すべきとする根拠とされています。

財産分与の基準日や開始時点の特定が難しいケース

一般的には夫婦が別居した日が基準日と考えられますが、ケースによって異なります。また、基準日ではなく婚姻関係の開始時点が問題になるケースもあります。

ここでは、それぞれのケースについて実際の判例も見ながら考えていきましょう。

 

  1. 家庭内別居のケース

最近、福祉専門職の公務員の方と話しましたが、経済的事情から別居に踏み出せないケースもありょうです。

夫婦が同居を続けながら関係が悪化した場合でも、生活費を共同で負担しているため経済的協力関係が完全に消滅したとは言えません。そのため、離婚調停の申立日や離婚訴訟の提起日を基準日とすることがほとんどです。したがって、同居を続ける限り財産分与のは話がしにくくなると理解しておくと良いでしょう。

 

  1. 単身赴任のケース

単身赴任や子どもの進学などで別々に暮らしていても、経済的な協力関係が続いていると判断されることがあります。したがって、単身赴任の場合は、離婚の意思を明確に相手に伝えた日(離婚調停提起時、離婚協議開始日や内容証明通知を送付した日)を基準日とすることが一般的です。

令和2年(ネ)第2720号事件では、別居後2年以上生活費を片方が負担しており、離婚調停の申し立て以降も状況はそのままでした。この判決でも、離婚調停を申し立てした日を基準日としています。このように離婚調停は、単に話合いをするだけでなく外部に離婚を望んでいるという意思表明をしたメルクマールとなるのです。

 

  1. 一時的な別居のケース

夫婦の一方が自宅を出た後、荷物を取りに戻ったり子どもと会うために一時的に帰宅したりしても、それだけで同居が再開したとはみなされません。最初に自宅を離れた日が夫婦関係の破綻を示すものであれば、その日を基準日とするのが通常ではないかと思われます。

しかし、夫婦によっては、ゴシックのように別居するケースもありますので、ケースバイケースといえます。

また、最初の別居時点では離婚を考えていなかった場合でも、長期間別居が続き同居を再開しなかった場合には、多くの場合で別居を開始した日を基準日とします。他方、同居を再開してしまった場合は再度別居した日が基準日となるでしょう。

また、医師、会社経営者、個人事業主などの場合、仕事の忙しさや夫婦関係の悪化によって徐々に自宅に帰らなくなり、最終的に完全に別居に至ることがあります。あるいは、医師などの場合、自宅とは別に病院の傍にアパートを借りているというケースもあります。

どの時点が正式な別居日なのか争いになるケースでは、一般的に「最後に自宅で寝泊まりをした日」を基準日とすることが一般的です。

 

  1. 婚姻前に内縁関係があったケース

婚姻前に内縁関係があった場合、財産分与の対象期間が婚姻後に限定されるのか、内縁期間も含まれるのかが問題になります。一般的には、法律婚の開始日(婚姻届を提出した日)を基準にしますが、内縁関係が長く続き、夫婦同然の生活をしていたと認められる場合は、内縁関係の開始日を財産分与の対象期間に含めることもあります。ただ、実務上は、内縁関係を取り込むことはそれほど多くないように思われます。

 

令和3年(ネ)第5609号事件では婚姻した日以降の財産を分与対象としていますが、一方で令和3年(ネ)第2605号事件では社会通念上の夫婦同然といえる関係があったかをポイントとしており、一義に決定できるものではなくケースバイケースで判断されるべきでしょう。

まとめ

財産分与の基準日は、夫婦の経済的協力関係が終了した時点とされ、通常は別居日が基準となります。ただし、家庭内別居や単身赴任など特殊な事情がある場合は、離婚の意思が明確になった日や離婚調停の申立日が基準日とされることもあります。また、内縁関係があった場合でも、財産分与の対象となるのは基本的に婚姻後の財産とされるのが一般的です。

財産分与の基準日をめぐっては、いつの時点を基準とするかによって、分ける財産や得られる財産が変わってくる可能性があります。医師、歯科医師、経営者、役員、上場企業の会社、大手自動車メーカーの方、警察官、消防官などは、戦略的に対応する必要があります。財産分与に詳しい弁護士がいるヒラソル法律事務所に是非お問い合わせください。名古屋市、愛知県、岐阜県、三重県、東京都などの方に対応しております。最近は、大学病院の勤務医の方もいただいております。

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