会社名義の財産は財産分与の対象になる?法的に可能なケースを解説

会社名義の財産は財産分与の対象になる?法的に可能なケースを解説

 

最近は、東京でも地方でも、資産家は、資産管理会社を持っているケースが多いほか、実質的な個人資産も同族会社に置いているという例は少なくないように思われます。会社の経営者が財産分与を行う場合、会社名義の財産は分与の対象になるのでしょうか。経営者や医師必見の解説です!

この記事では、離婚協議の際しばしば争点になるこの問題について見ていきます。財産分与が法的に可能なケースについても解説しますので、経営者の離婚問題に直面している方はお役立てください。

会社名義の財産は財産分与の対象になるのか

会社名義の財産は原則として対象外

会社名義でも財産分与の対象となるケース

事実上、個人資産の場合

財産が混同していると認められる場合

個人名義の財産を会社名義に変更した場合

会社名義の資産を財産分与する場合の注意点

原則として複雑で難しい

財産隠しが行われている可能性を考える

離婚手続きが複雑化する可能性も

財産分与において弁護士を雇うメリット

相手財産の調査ができる

財産の評価を主張できる

相手側との交渉を一任できる

調停対応も任せられる

まとめ

 

会社名義の財産は財産分与の対象になるのか

結論からいうと、離婚の際に会社名義である財産は分与の対象になりません。その理由について、以下で詳しく解説します。

会社名義の財産は原則として対象外

離婚の際の財産分与では一般的に、婚姻中に夫婦が協力して得た資産が対象となります。

会社の財産は、あくまで夫とは別人格である会社名義の財産として帳簿に記載されています。経営者の財産と会社の財産は別ものであるため、共有財産だから分け合うという主張は通らないのです。裁判所も基本的に共有財産を分けるという命令を出すのは著しく困難というべきでしょう。

会社経営者のほとんどの資産が会社名義・法人名義になっている場合でも、離婚の際にそれらを配偶者に分与することは原則的にできません。

もっとも、配偶者が、婚姻後に会社を設立し、その会社の株式を所有していれば、当該会社の株式が財産分与の対象となります。分与の方法は、個別具体的事情により異なりますが、現物の株式を分与する例は少なく、株式の評価額を考慮に入れて金銭的評価による分与が一般的であるように思われます。金銭的な分与をする場合の株式評価は、実務上、口頭弁論終結時、つまり現時点が基準日となります。

株式の時価評価は困難が伴うのは一般です。

個人経営に近い会社においては、決算日が必ずしも正確な財務状態を反映しているとはいえない場合もあります。なぜなら、ポイントとして、①経営者への貸付け、②経営者への負債が計上されている場合には、かえって、会社関係で、夫婦共同財産を減じるマイナスの財産が出てくることもあるのです。

ただし会社名義の財産だとしても、実質として経営者個人の財産とみなされる場合は例外です。

会社名義でも財産分与の対象となるケース

会社名義であっても、離婚の際に財産分与の対象とされるケースを3つ紹介します。

ただし会社の財産の扱いは複雑であるため、個々のケースごとに調査が必要であることを踏まえておきましょう。

事実上、個人資産の場合

第1のケースは、事実上の個人資産と考えられる場合です。

婚姻中に会社を立ち上げ、その会社の株式を経営者である配偶者が保有しているとき、株式は実質的に個人名義の財産となります。また配偶者が経営する会社に配偶者本人が出資していれば、その貸付金も個人名義の財産となります。

もっとも、個人事業主と異なり、法人の場合は、事業用財産を財産分与の対象にするのはかなり困難であると思います。

この点、夫婦が共同で行っていた事業が法人化された事案で、夫婦が中心とする同族会社であって、夫婦がその経営に従事していたことに徴し、法人名義の財産についても財産分与の対象として考慮した裁判例はありますが、現在どれくらいの通用力があるのか疑問です(広島高裁岡山支部平成16年6月18日)。

そもそも、法人は独自に決算をして、独自に法人税も支払わなければなりませんし、借入も起こしているでしょうから、根拠もなく法人格否認の法理を適用できないと思われます。

この2つのケースにおいて株式や貸付金は経営者個人の財産とみなされ、財産分与の対象です。これらは、医療法人を除き、昭和40年から50年代の裁判例であることに注意が必要です。そして、話題に上がることが多かった医療法人についても、持分ありの医療法人は、2007年4月以降の設立ができなくなっているため、この問題も落ち着いていくのではないかと思われます。

一般的に、社員が増えてゆき業務規模が拡大すれば、個人事業と同視する余地はあく、また、経営者個人の裁量で会社の資産と夫婦の財産を混同させるといった行為は困難といわざるを得ません。したがって、このような場合、会社名義の資産は財産分与の対象にはなりません。

財産分与を受け取る側は、会社の経営者である配偶者に対して保有する株式や貸付金の金額などが分かる資料を提出するよう求めてください。

財産が混同していると認められる場合

第2のケースは、会社の財産と経営者の財産が混同されて区別がつかないと判断される場合です。このケースも、会社の財産が分与の対象となります。通常、それでは、法人の経理として不適切というしかありませんが、社会的実態において個人事業者性が残存するためと思われます。

経営者が自身の名義の資産と会社名義の資産を区別せずにいる場合、または経営者自身が持つ個人口座と会社名義の口座間で頻繁に預金のやりとりが行われている場合などがこれにあたります。家族経営や零細な会社に見られるケースです。

 

  • 夫婦が協力し資産を形成し、会社を設立したこと
  • 株式を全て保有し、規模が小さく個人事業主と同視できること
  • 会社名義の預貯金から家計を支出していること
  • 会社の財産と夫婦の財産が混在していること

 

財産分与の対象であるかを判断するには、資産を1つずつ調査して個人資産と会社の資産との関係を確認する必要があります。

個人名義の財産を会社名義に変更した場合

第3のケースは、経営者がもともと個人名義で所有していた資産を配偶者に分与するのが惜しくて会社名義に変更した場合です。もっとも、出資は金銭のみならず現物で行うこともできるため、適法な出資との区別は現実には難しいように思われます。

 

ところで、共有財産が少ないように見せかける行為であるため、意図的な財産隠しの発覚を免れる目的であるとすれば、刑法上・民事上の詐欺行為に当たるおそれがないとはいえません。

いずれにせよ、余りアクロバティックことを考えるのは相当ではなく、会社財産と家計が混在している場合は、実際に夫側の資産が非常に小さいなどの事実関係の下では、交渉で、一定程度、会社名義の財産を実質的に夫婦共有財産として扱う方向性で交渉をしていくことがポイントのように思われます。

会社名義の資産を財産分与する場合の注意点

会社名義の資産を、夫婦間で分与するのは簡単ではありません。弁護士間の交渉に委ねられるところも少なくないでしょう。

ここでは財産分与をするうえでの注意点を、3つご紹介します。

原則として複雑で難しい

たとえば夫が会社経営者で妻もある程度会社経営に参加してきたならば、会社名義の財産の中でどれが財産分与の対象であるのか判断がつきやすいでしょう。

一方で夫が単独で事業を進めている会社で妻が経営に関わることなく夫を支えてきた場合、どれが財産分与の対象であるか判断するのは困難です。夫婦といえども、自身の手で相手の資産を調査するのは難しいでしょう。例えば、会社の預貯金A銀行については、夫婦とは区別されており分与財産とならないと主張されてしまう可能性もあるでしょう。

 

財産分与を公平に行うために、離婚に詳しい弁護士に依頼して財産分与の算定を適切に行ってもらうことをおすすめします。

財産隠しが行われている可能性を考える

夫が会社経営者である場合、夫婦の関係があやしくなってきてから妻に知られないように夫婦の共有財産を会社名義に変更してしまうことが考えられます。

名義変更が巧妙に行われた場合、見抜くのは困難です。離婚を考えるならば、自分から離婚を切り出す前にお金の出入りをチェックした方がよいでしょう。

 

夫の名義であっても事実上夫婦で共有しているような口座があれば、お金の流れに不可解な点がないか確認してください。財産隠しが疑われる部分があるなら、しっかりと説明を求めましょう。

離婚手続きが複雑化する可能性も

会社経営者とその配偶者の離婚手続きは、複雑化するケースが多く見られます。

 

離婚交渉は夫婦それぞれの地位や経済状況を踏まえて進められるため、慰謝料や養育費などの取り決めが複雑になりがちです。合意に至るまで、長い期間を要することがあるでしょう。

たとえば多くの場合、幼少のこどもの親権は母親が獲得しますが、子どもの生活水準や教育水準を維持するためには、会社経営者である父親が親権者である方がよいと判断されるケースがないわけではないでしょう。

 

慰謝料の金額や妥当性に関しても、一般的な金額より高くなるか協議が複雑化する傾向にあるうえ、慰謝料というよりかは財産分与の調整金としての性格が強くなっていくでしょう。

財産分与において弁護士を雇うメリット

例えば、同族会社の場合は、叔父や叔母も役員や株主であるなど複数の親族によって経営されていることがありますので、夫婦共同財産とするのが難しい要素と、財産の混在があるため夫婦共同財産とできる要素が入り組んでいます。また、同族会社の場合、事業承継で会社を継いでいる場合、株式は特有財産であり分与対象財産とすることもできず、法人保有財産と個人の財産の峻別がなされている場合も複雑といえるでしょう。

会社名義の財産がある場合には財産分与の判断が複雑になるため、弁護士を雇うのがおすすめです。

ここからは、弁護士に依頼する4つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

相手財産の調査ができる

離婚する際の財産分与に関して依頼を受けた弁護士は、できる限り相手の財産について調査します。

たとえ配偶者であっても相手の資産を個人で調査するには限界がありますが、弁護士であれば弁護士会照会という制度に基づき官公庁や団体で可能な限り調査を進められます。

また、裁判所の調査嘱託(しょくたく)を用いて調査することが可能です。

弁護士に依頼することで隠された財産を見つけ出し、相手に分与の請求ができます。

財産の評価を主張できる

財産がすべて現金であれば分与で争いが起きる可能性が低いと思います。

他方、夫婦で購入した不動産や車・有価証券・貴金属といった動産については評価額が分かりにくく、夫婦間の主張が食い違うケースがあります。また、自動車の名義は法人名義になっていることも少なくないでしょう。

弁護士に依頼すれば不動産や動産の価値を評価し、正しい分与を主張できるでしょう。離婚・財産分与にかかわった経験のある弁護士が対応することによって、適正な評価額を算出して解決に至ることが期待できます。

ところで、税金対策のため、会社の計算書類の価値が低く評価されていることも珍しくありません。また、本来、夫婦間の資産になるべき会社に対する貸付金勘定が正確に計上されていない場合があります。そうした場合、なかなか衡平を図る方法が限られるのも事実ですが、裁判所命令では会社財産の直接分与は困難ですので、協議の積み重ねも必要になってゆくものと思われます。

相手側との交渉を一任できる

弁護士は財産が適正に分与されることを目指し、依頼者の代理人となって交渉を進めます。

離婚の話し合い自体が、大きなストレスがかかる交渉です。そこに金銭の話が入れば、個人間での冷静なやりとりは非常に難しいと考えられます。相手のペースで交渉が進み、肝心な部分で譲歩するようなことがあれば悔いを残すことになりかねません。

また財産分与は、離婚成立後2年経過(法改正後は5年※2026年までに施行)すると請求不可能になります。納得できていない部分の解決を後回しにしていると、すぐに2年(法改正後は5年)が過ぎてしまいます。

自分の権利として主張できるところはしっかり主張し、交渉は代理人である弁護士に任せましょう。

調停対応も任せられる

相手の財産がはっきりしないケースでは、家庭裁判所の調査権限を利用することがあります。また、配偶者の方もビジネスをされていていそがしい場合もあるほか、財産分与以外争点がない場合は弁護士に任せてしまう方が合理的といえるでしょう。その際は、財産分与に関する調停・審判を家庭裁判所に申し立てることになります。

調停とは家庭裁判所の主導で進められるものではなく、離婚に向けて動いている当事者が主体となった調査・主張が必要です。財産分与は調停までで整わないと離婚訴訟になってしまいますので、人事訴訟のレベルも踏まえて翻って充実した協議・調停での攻撃防御こそがポイントとなってきます。

弁護士は依頼者の代理人として、調査・主張を適切に行ってくれるでしょう。

まとめ

本記事で解説したように、会社経営者との離婚は複雑で、正しく財産を分与するのは困難です。離婚の際の財産分与でお悩みの方は、まず無料相談を利用してはいかがでしょうか。

名古屋駅ヒラソル法律事務所では、財産分与を得意とする法律事務所として、経営者、スタートアップの方、投資家の方、同族会社の事業承継、医師、資産家、トヨタの方、三菱重工の方、キーエンスの方などの離婚の財産分与に関する経験が豊富な弁護士が、親身になってあなたの相談に乗ります。財産分与は、弁護士の腕に依存しやすいといえますので、一度、お問い合わせください。

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