内縁の夫や妻が死亡したら財産分与請求できる?

内縁の夫や妻が死亡したら財産分与請求できる?

 

相続?財産分与?

ごちゃごちゃになりやすいところを弁護士が解説!

内縁の夫や妻と別れた後、財産分与協議中に相手が死亡したら財産分与請求はどのように進めたら良いのでしょうか?やはり籍が入っていない以上、「相続できるのか?」「財産分与は?」といったお悩みが生じます。パートナーシップにとどめている方はきちんと話し合っておく事柄です。

 この場合、相手の「相続人」へ財産分与を求められる可能性があります。ただ内縁の配偶者には「遺産相続権」が認められません。残念ですが、相続人がいれば「相続」をすることは一切できません。この場合、遺言を残しておくなど手当が必要です。

加えて、実は、相手が死亡した場合に必ずしも財産分与請求できるとは限りません。夫婦共同財産なのに請求できないかも、という不条理があるのです。

 

内縁関係で相手が死亡すると、財産の清算について重大な問題が発生します。生前から遺言や生前贈与、信託などの方法でしっかり対策しておきましょう。

 

今回は内縁関係で相手が死亡した場合の財産分与についてのポイントを、解説します!

 

1.内縁関係でも財産分与請求できる

そもそも内縁関係であっても財産分与請求できるのでしょうか?

この点については、法律上も権利が認められています。内縁の夫婦が同居中に共同して積み立てた資産については法律婚の夫婦と同じように、内縁解消後に相手に分与を求められます。分与割合も法律婚と同じで2分の1ずつとします。

 

2.内縁の配偶者には遺産相続権がない

内縁関係の継続中に配偶者が死亡したとき、残された側に遺産相続権が認められるのでしょうか?

実は法律上、内縁の配偶者には遺産相続権が認められません。たとえ婚姻の意思を持って長年同居していたとしても、相手が死亡した場合には一切遺産を受け取れないのです。

遺産はすべて相手の子どもなどの「法定相続人」へと受け継がれます。

 

このように内縁関係の夫婦の場合、相手と「離婚」するのか「死別」となるのかで、受け取れる財産内容が大きく変わります。

 死亡の場合 ×相続

      では、財産分与法理では?となるわけです。

3.内縁関係解消後、財産分与の協議中に相手が死亡した場合

内縁関係を解消したら相手に財産分与請求できますが、協議中に相手が急死してしまう場合もあるでしょう。その場合、内縁の配偶者は誰かに財産分与請求できるのでしょうか?

 

裁判所は、「死亡した配偶者の相続人が財産分与義務を相続する」と判断しています(大阪高裁平成231115日)。これは内縁関係の解消後に妻が夫へ財産分与を請求し、家庭裁判所で「財産分与審判」が行われていた最中に夫が病死した事案です。ですので、財産分与義務が具体化していた事例とみることはできるかもしれません。

裁判所は妻の相続人への財産分与請求を認め、寄与度を2割と算定して先渡し分を控除した金額を内縁の妻へ引き渡すよう相続人に命じました。

 

このように、内縁関係を解消して財産分与請求権が確定している場合、その後に相手が死亡したとしても相続人へと財産分与請求が可能です。ただ、とっても限定的な場合であるんですね。

 

内縁の配偶者が死亡した場合の取扱い

死別したケースにおける内縁の配偶者への財産分与や遺産相続では、法律上以下のような考え方が採用されています。

 

  • 内縁関係継続中に相手が死亡したら「遺産相続」はできない
  • 内縁関係の解消後に相手が死亡したら相続人に「財産分与請求」ができる

 

まずはこの基本を押さえておきましょう。

 

4.内縁関係解消前に相手が死亡した場合

内縁関係の継続中に相手が死亡したら、配偶者には遺産相続権が認められません。そうだとしても、配偶者である限りは「財産分与請求」できるはずです。

相手と死別した場合、その相続人へと財産分与請求できないのでしょうか?

 

この点については法律家の間でも意見の対立があります。

肯定派は、内縁関係の解消後に相手が死亡したら相続人へ財産分与請求できるのに、解消前に死亡したら遺産相続も財産分与請求も一切できないのは不合理であるから財産分与請求を認めるべきと主張します。

 

しかし最高裁は、内縁関係を解消しなかった場合の死亡後の相続人への財産分与請求権を否定しています(最一小決平成12310日)。

「法律は、内縁の配偶者への遺産相続権を認めていないのに、死亡後の相続人への財産分与請求権を認めると遺産相続を認めるのと同じような結果になってしまう。それは相続の制度を崩してしまうものだから財産分与請求を認めるべきではない」というのが主な理由です。

 

法律の世界では最高裁の判断が最優先されるので、内縁関係の継続中に配偶者が死亡した場合、残された配偶者は遺産相続できないのはもちろんのこと、相続人へ財産分与を求めることもできません。

 

共有財産の清算は可能

ただし内縁の夫婦間で「共有財産」になっているものについては、相手の死亡後も清算を求められます。たとえばどんな場合があるか、紹介しますね。

1)登記名義が夫の土地について妻に2分の1の共有持分が認められたケース(大阪高裁昭和571130日)

2)共働きの内縁の夫婦の場合に相手名義の預金が夫婦共有と認められた裁判例(名古屋高裁昭和58615日)

3)夫婦が共同出資して建築した夫名義の建物について夫婦共有とした裁判例(東京地裁平成4131日)

などがあります。このような場合、残された配偶者は相続人へ「共有物分割請求」を行って自分の持分に相当するお金を払ってもらったり不動産を取得したりできます。

 

5.居住権について

内縁の配偶者には遺産相続権がないので、同居中に相手が死亡すると相続人である子どもなどが家を相続し、内縁の配偶者へ退去を求める可能性があります。

確かに内縁の配偶者には所有権も民法上の配偶者居住権も認められないので、退去を求められたら出て行かざるを得ないのが原則です。こういう場合はまずは内縁関係に詳しい弁護士に相談されると良いでしょう。

しかし内縁の配偶を保護するため、最高裁は相続人による明渡請求を「権利濫用」として退ける決定を出しています(最三小判昭和391013日)。

また賃借物件のケースでも、内縁の配偶者は亡き夫の賃借権を賃貸人へ主張し、居住を継続できると判断されています(最三小判昭和42221日)。

 

相手が死亡した場合の内縁の配偶者にも一定の「居住権」は認められるので、必ずしも退去しないといけないわけではありません。

 

6.内縁の配偶者がいる場合の対策

反対に、高齢の父親に、内縁の配偶者がいる場合などをこどもの観点から想像してみましょう。

この場合、内縁の妻には、遺産相続権はありません。

同居中に相手が死亡した場合には基本的に財産分与請求権も認められません。死後の内縁の配偶者の生活を守るには、生前に「遺言書作成」「生前贈与」「家族信託」などの方法で財産を受け継がせる対策をとっておきましょう。「家族信託」や「遺言書作成」はパートナーシップに詳しい弁護士にご相談されると良いでしょう。

きちんと家や預貯金などの財産を受け継がせれば、死後に内縁の配偶者が困る心配はありません。

 

名古屋駅ヒラソル法律事務所では内縁関係やご離婚のご夫婦への法的サポートに積極的に取り組んでいます。内縁問題や離婚問題でお困りの際にはお気軽にご相談ください。

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