ドイツにおける離婚後の原則共同親権制度とこどもの利益に関するドイツの実地調査

【特別寄稿】日本弁護士連合会家事法制委員会のドイツにおける離婚後の原則共同親権(配慮権)制度とこどもの利益に関するドイツの実地調査に関する家事法制委員会委員の調査報告を拝聴しての若干の思索と批判的検討を巡って

第1 家事法制委員会の調査

家事法制委員会については、鈴木博人中央大学教授(児童福祉法、家族法)とともに、令和7年、ドイツ連邦共和国を訪問し、離婚後の共同親権(共同配慮)の運用について調査を行ったものである。
論旨は、ハンブルグ市及びミュンスター市を訪問のうえ、主に、前者のハンブルグ市、弁護士会、高等裁判所、地方裁判所、ミュンスター少年局を訪問したものである。なお、ハンブルグはドイツ第2の都市であるのに対して、ミュンスター市は地方都市に該当するという。

第2 私見の「知識」と報告の交錯点

1 ドイツにおける親権概念-「配慮権」について
父母の養育を受ける子の権利に関して、民法は、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」(民法820条)と定めるのみであり、子の権利であることへの言及はない。
他方、ドイツでは、子が自立した個人に成長するために子を保護し援助する義務を行うことを的確に表現するために、「親の権力(elterliche Gewalt)」から「親の配慮(elterliche Sorge)」に変更された。さらに、ドイツでは、親の配慮権行使に際して、「父母は、自らの責任で自覚した行動をする子の能力及び意欲の増大を考慮する。父母は、子の発育の度合いに応じて適切である限り、親としての配慮の問題につき子と話し合い、相互理解に努める」と規定しているところである(ドイツ民法1626条2項)。

日弁連報告によると、かつては「親権」という用語があったものの、現在では「配慮権」とされ、「親権」は用いられていないところであるが、本稿では「親権」と定義する。

日弁連報告は、ドイツ基本法6条2項を引用しつつ、こどもの監護・養育は、「親の自然権」であるとともに、「親の義務である」と定めていると報告する。

配慮権が義務とまでいえるか私見は分からないが、日弁連報告は、「子の福祉のための義務」という点を強調している。

第3 共同親権が原則となった経緯

離婚後は今までどおり,単独親権とされていた。1982年に連邦憲法裁判所は、離婚後の単独配慮を定めたドイツ民法の規定は,「子の養育および教育は両親の自然の権利であり,かつ何よりもまず両親に課されている義務である」とする基本法6条2項1文に反するとして違憲判決を出されている(相原佳子 編『Q&A 子どもをめぐる離婚事件実務 弁護士が知っておくべき基礎知識』273頁(青林書院、2015年))。

日弁連報告では、「子の福祉にかなう場合にまで共同親権を否定するのは憲法違反とされた」と報告している。

実務が法改正を引っ張る形で、1997年に親子法が改正され、父母が離婚後も共同配慮を継続するということで合意している限り,裁判所はその合意に干渉しないものとされた(民法1626条a1項1号)。

それゆえ、離婚後も共同配慮を原則とすることが立法化されたものである。例外的に特に問題がある場合,例えば両親の同意がある場合,子の意思による場合,虐待などで子の福祉に悪影響が考えられる場合,申立てにより単独親権が認められる(増田勝久「IVドイツ2」日弁連法務研究財団編『子どもの福祉と共同親権:別居・離婚に伴う親権・監護法制の比較法研究』155頁)。

日弁連報告によると、ドイツでは明文で原則共同親権と規定されていないのである。そして、憲法上の基本権とこどもの利益の観点から、離婚後も共同親権が「事実上の原則」として理解されると報告する。

日弁連報告によると、離婚後98パーセントから99パーセントのケースで共同親権が維持されているという報告である。そして、共同親権が原則となる以前は、離婚後に一報の親、特に父親との関係が途切れてしまうケースが多い尾に対して、現在では双方の親がこどもの養育に関わる状態が維持されているという説明を受けたという報告である。

第4 裁判所の役割とこどもの聴取

1 日本の家庭裁判所は、子の監護者指定や子の引渡しをめぐる手続に際し、こどもが置かれている状況を把握するために、心理学等について専門的知識を持つ家裁調査官に、当該家庭やこどもの調査を命じることがある。
2 ドイツの家庭裁判所では、裁判所の中に、日本の家裁調査官のような人物はいません。しかし、ドイツにおいても、児童心理学等といった分野について専門的知識がない裁判官が、こどもをめぐる事件でこどもの利益について判断せざるを得ない。そこで、ドイツの裁判官は、まず、裁判所の外にある少年局の力を借りることになる。
3 家庭事件及び非訟事件手続法(FamFG)162条1項が「裁判所は、こどもの身上に関する手続において、青少年局を審問しなければならない」と定めている。これに加えて、ドイツの家庭裁判所は、臨床心理士等といった専門家に鑑定を依頼することができる。
4 家裁の職権探知主義(FamFG26条「裁判所は、職権で、裁判の基礎とすべき事実を確定するために必要な調査をしなければならない」)の一環として、個々のケースにおいての事実の確定の一つの手段として、専門家の鑑定が依頼されることがある。
5 特にこどもをめぐる事件(親の親権者指定、親子交流、子の居所指定権等をめぐる事件等)では、よく依頼される。しかし、特に後者、すなわち家裁の裁判官が依頼した専門家(診療心理士)鑑定については、その質に関し、近年懸念が示されている。
6 2014年に公表されたドイツのハーゲン大学の心理学の先生が行った、過去に家裁で使われた専門家鑑定の質をめぐる調査で、調査の対象となった鑑定の7割ぐらいが、非常に質の低いものであったことが明らかになった。具体的に、科学的にみて、その結論にきちんとした根拠が示されておらず、中立性等にも問題があったことが明らかにされた。
7 家裁の裁判官が、こどもをめぐる事件で何が最も「こどもの利益」に適うかを明確にするために、専門家(臨床心理士)に鑑定を依頼することがあり、最終的な判断の中で、その鑑定の内容にそれなりに重みを置いて判断してきた。
8 そこで、ドイツ・ハーゲン大学の先生の調査結果を持って、専門家鑑定の質をどうやって確保できるかについて、活発に議論され、法改正(専門家鑑定法等の改正に関する法律(BGBl.IS.2222、2016年10月15日執行))が行われている(道垣内弘人=松原正明 編『家事法の理論・実務・判例4』79頁(勁草書房、2020年))。例えば、鑑定人についていえば、精神科医、心理学者、教育学者、社会教育学者(後二者は診断に関する条件付)に資格が限定された。これら改正により、「なんとなくこどもに詳しそうな似非専門家」が鑑定人から排除されることになった。
9 ドイツには、協議離婚制度は認められておらず、離婚にはすべて裁判所の関与が必要となる。離婚の要件は,破綻したとき(民法1565条1項)とされている。
日弁連報告によれば、ドイツによれば、離婚自体に合意していても弁護士強制主義の下、裁判所で手続的に離婚が成立することになっている。
ドイツでは共同親権が、原則となっているため、親権について裁判所が判断することはないとの報告であり、統計上も1パーセントから2パーセントにとどまるとのことである。

第5 日弁連報告におけるドイツの家事事件手続の審理

1 日弁連報告によると、親権が問題になるのは、①単独親権への変更、②こどもの居所や進学先など重要事項の決定、③海外渡航やワクチン接種といった個別事情、④親子交流を巡る紛争などが挙げられるという。
2 日弁連報告によれば、「判決ありき」ではなく、できる限り当事者の合意形成を促す姿勢を重視している。
そして、こどもの成長過程において、手続の長期化は生活の安定を害するため、迅速な対応が強く意識されている。
日弁連報告によれば、通常は、申立てからすれば、「1か月以内」に期日が設定され、その時点までにこどもを含めた当事者の聴取が行われるという。
3 日弁連報告は、裁判官自身が、こどもを直接聴取するという点であるという指摘を印象的なものとして報告した。ドイツには日本の家庭裁判所調査官制度に相当する制度がなく、裁判官が自らこどもと面接をすると報告した。
原則は3歳以上とされているが、3歳未満であっても生活状況を直接確認する必要性があるとされている場合もあると報告された。具体的な監護の状況の確認であり、ドイツでは、面接を省略をして性虐待を見逃した反省に立って裁判官の聴取を積極的に行うべきものとされている。
しかし、ドイツにも裁判所の内部に常勤で配置された専門職は存在しないが、子どもの状況把握は主として Jugendamt (青年局)や Verfahrensbeistand (こどもの手続補佐人)の外部専門家が担い、裁判官は原則として自ら子どもを直接聴取する青年局制度があるし、裁判官は専門家(臨床心理士)に鑑定を依頼することができるため、家庭裁判所調査官制度は不要であるから配置されていないものと考えられるので、この限度で報告は誤りである。

第6 裁判官が聴取するこどもの意向聴取

1 親権・監護・親子交流では、こどもを証人としても当事者としても尋問することは禁止されている。関係するこどもは、証人としても当事者としても尋問してはならない、とされている。しかし、これは、裁判官によるこどもの聴取が義務付けられるという観点を理解することが必要である(二宮周平=渡辺惺之編『子どもと離婚』153頁(信山社、2016年))。
2 つまり、裁判官による「こどもの審問」がある。ドイツ法の規定によると、①子の性向、②結びつき、③意思が裁判にとって重要である場合―を法律要件として、手続の中で、こども本人に義務的に審問しなければならないとの義務規定となっている。
したがって、全件で、裁判官がこどもの審問を実施する点ではない(前掲二宮153頁)。
3 もっとも、14歳に達しているこどもは全員義務的審問を実施しなければならないものとされている。なお、14歳未満の場合、ドイツ法ではこどもの意向表明の考慮義務があるから結果的に審問が義務付けられることが多いと説明されている(前掲二宮153頁)。
家事裁判官はこどもの意思に反する決定をする場合は、その決定内容を説明する法令上の義務があり、こどもとの対話力も要求される。
4 フォルカー・ビスマイヤー(ベージクハイム区裁判所長)によれば、「私の所属する家事事件部では、原則として3歳のこどもも審問を実施している。当然のことながら、幼児期のこどもの場合は、両親との相互の影響を確認することに限られる」(二宮153頁)と指摘するし、日弁連報告でも、「生活状況を直接確認する必要がある場合」とされている。
5 同時に、こどもの手続補佐人の選任が推奨される。手続補佐人は鑑定人ではなく、FamFG158条に基づきこどもの意思と利益を把握し、それを手続の中で擁護するために設けられた独立の手続主体である。資格は法律家に限定されず、社会福祉・教育・心理・法学等の専門職が担うとされるが、実務上は弁護士やソーシャルワーカーもあり得るとされる。
6 日弁連報告は、「特に印象的だったのは、裁判官自身がこどもを直接聴取する点です」とあるものの、むしろ、日本の家事裁判官の専門性の欠如や下請けとして家庭裁判所調査官を利用し過ぎているといった問題点も浮かび上がるといえる。
7 日弁連報告は、その背景として、過去に「こどもが小さい」という理由で聴取を行わず、性的虐待の事実を見逃した事例への反省があると報告する。日本の家庭裁判所も「調査官調査」や「こどもの手続代理人の選任」は「こどもの負担が重い」と述べて制度倫理にこどもの声を取り入れることに消極的である。
8 ドイツでは、こどものプライバシーに最大限配慮し、親は同席せず、場所も知らされない環境で聴取が行われているとされる。

もっとも、日弁連報告では、裁判官は「どちらと住みたいか」といった選択を迫る質問は避けるというが、ドイツのように専門の家事裁判官を養成する仕組みが重要になるように思われる。

9 日弁連報告においても、家事事件を扱う裁判官には、心理学や教育学を含む研修義務が法律上課されていると報告する。

第7 日本の家庭裁判所調査官は、ドイツでは「鑑定人」になれない

1 ドイツの2016年改正(専門家鑑定法等の改正)は、「鑑定そのものを礼賛する」改正ではなく、こどもの事件でいられる専門家の質がバラバラで、有害であるという実証的研究(ハーゲン大学の調査など)に対する、かなり技術的な「後始末」が行われている。
2 まず、入口の段階で、誰でも家裁事件の「鑑定人」にはなれないようにしたものである。親権・親子交流などこどもをめぐる事件については、医学・心理学・(追加訓練を受けた)教育学・社会教育学など、一定の専門資格とトレーニングを備えた者だけを「適切な鑑定人」として選任できる、と法律で規制した。
3 したがって、日本の家庭裁判所調査官は、医師や心理学に関する国家資格を有しておらず、教育学者や社会教育学者ではないため、鑑定人になる資格はないことになる。このように、ドイツでは、「子どもに詳しそうな“自称専門家”」を排除することを決めている。
4 鑑定の内容や運用については、裁判所側に一定の「品質管理義務」を課している。ゆえに、鑑定嘱託の時点で、調査事項を具体化し、期限を切り、遅延や杜撰な鑑定に対しては交代・制裁も視野に入る、という枠組みが整備されている。
5 それゆえ、家事裁判官が、「とりあえず鑑定に丸投げ」して、「いつ鑑定が終わるかはよく分からない」という運用を正面から問題にした形となった。
6 これらから分かるように、ドイツ法の改正は、「ドイツの裁判所から依頼を受けた鑑定は素晴らしいから日本も真似を」という話では全くない。
7 むしろ、家事裁判官が、鑑定への依存を強めていく中で、その依存を前提に最低限度の質とスピードをどのように確保するという立法対応である。
8 日本の家庭裁判所調査官制度を持ち上げるのでも、ドイツを理想化するのでもなく、「どちらにせよ鑑定の実質があるものの『質』の問題は逃げられない」という文脈が問題なのである。

第8 日弁連報告における弁護士の役割

1 弁護士の依頼人は「親」であり、こどもと直接関わるわけではないと報告するが、親の代理人でありながら、「こどもの利益を最も優先する」という点で他の分野とは異なる役割が求められると報告するが、基本的に誤りである。
2 そもそも、日本でも「親」の弁護が家族法の弁護士の倫理としてどこまで許されるかという議論はあるものの、子の監護権紛争を伴う離婚事件において、当事者の代理人弁護士は、依頼者の利益と子の利益の狭間で時に苦しい選択を迫られる。この状況は、依頼者の意識が子に向いていないときや、日本では、こどもの手続代理人など、「子の利益を代弁する第三者がいないとき」がほとんどであるという制度的な問題に由来するものが大きい(二宮周平編『離婚事案解決マニュアル 当事者ケアと子どもの権利・利益実現に向けた、弁護士のサポートのあり方』【馬場陽】233頁(日本加除出版、2020年))。
3 この点、日弁連報告は、「単に依頼者の主張を通すのではなく、その主張が子の利益にかなうかという観点から検討し、合意形成を支援する責任を負う」とするが誤りである。そもそも、日弁連報告は、「依頼者と異なる利益のために動くと『Parteiverrat(背任的代理)』として刑罰対象になること(ドイツ刑法356条)を看過しており、ドイツ刑法学やドイツの利益相反学について精緻な検討を加えるものではない。親の代理人とこどもの補佐人は全く異なることは、こどもの手続代理人と同じである。

また、日弁連報告は、ドイツには、家族法専門弁護士制度があり、一定の実務経験、集中的な研修、試験、家事事件の取扱実績が必要とする。しかし、これも論理の飛躍があり誤りである。日弁連報告が述べる家族法専門弁護士制度は、家族法の知識(婚姻・親子・面会・国際私法)に加えて、120件の家族法案件経験があることで専門家認定をするのみであり、特段、こどもの最善の利益を優先して行動しなければならない原理を課されるものではない。

ドイツでも、家事事件手続の判断基準が子の福祉に置かれていることから、家族法分野の弁護士は、依頼者の感情的な要求をそのまま訴訟に持ち込まず、子どもに明らかに有害な訴訟戦略を抑制し、合意形成を図るべきだとする倫理的な議論は見られる。

しかしながら、制度上「子の利益」を直接代表する役割は、子の手続補佐人(Verfahrensbeistand)や青年局(Jugendamt)に割り当てられており、親の代理人弁護士が、依頼者の利益主張を犠牲にしてまで子どもの利益を最優先すべき法的義務が一般に認められているとまでは言い難い。この点で、「親の代理人でありながら子の利益を最優先すべきだ」とする日弁連報告の叙述は、ドイツ法の制度構造を事実誤認し、理想の「倫理」に上塗りした説明と評価せざるを得ない。

4 ドイツでは弁護士強制主義が採用されていることから、党派性を帯び書面も攻撃化し対立が先鋭化されやすいとされている。そこで、ドイツでは、地域の裁判官の提唱により、「コッヘム・モデル」、「ハイデルベルグ協働モデル」、「ミュンヘンモデル」「ベーブリンゲン・モデル」があるが、いずれも、弁護士を裁判官、少年局職員、各相談所、児童保護センターと協働させようとするものであるが、特に、「ベーブリンゲン・モデル」では特定の論点について弁護士が勝手に議論してはいけないとすらされている(二宮104頁)。
しかし、DVの場合でも、「ミュンヘンモデル」では、「事実の証明可能性はさしあたり劣後」とされたり、「ベープリンゲン・ゲスト」では、「弁護士は『けんか早いおんどり』ではない」といった記載がある。

しかし、ドイツ型の過度な「協調モデル」は、「弁護士強制主義」という事実関係の下ということができるが、過度に協調を強いれば、DVや児童虐待の被害者としては沈黙を余儀なくされる構造であることは指摘しておかなければならない。

第9 少年局・手続補佐人・鑑定人

1 少年局
少年局は、少年援助の実施及び監督に携わり、家庭紛争や家庭が直面する問題の相談に応じる。少年局は円滑な親子交流のために情報提供し、当事者の自主的交流の取り決めを助言し支援することになっている。シュットガルト少年局は内部に心理学相談所を設置している。親子交流のスタッフはシュットガルトのみでも200名に上るという(二宮190頁)。
少年局では、「プレトライアル」の役割を担っており、家庭裁判所に申し立てる場合に、両親と相談し、最終的に合意に達して裁判手続が要らない状況を作り上げることに尽力しているという。また、家庭裁判所に離婚の申立てがあり、未成年のこどもがいる場合は、家裁から少年局に通報されることになっている(二宮191頁)。法令改正があり、多くの少年局のスタッフは審問に呼ばれるため、少年局の役割の変容が見られるようになっているといえる。
日弁連報告によれば、少年局は、裁判所の外部機関であり、日本の児童相談所に近い行政機関である。
虐待対応に限らず、離婚時のこどもの問題についても対応し、合意形成を支援する。
こども問題の最初の相談窓口とされる。少年局は、必要に応じて職権で裁判を申し立てる権限も有していると報告されている。
2 手続補佐人
手続補佐人は、こどもの立場から手続的支援を行う存在で、日本のこどもの手続代理人に近い制度といえる。手続補佐人には、「代弁者機能」と「福祉的機能」があるとされ、こどものメガホンと機能する一方、客観的な「子の最善の利益」を代理する点が日本のこどもの手続代理人制度と異なる(二宮259頁)。
手続補佐人は、重要案件や高葛藤事案で裁判所が選任し、意見提出や合意形成支援を行っている。必要な場面で選任されなかった場合には、手続上の瑕疵となる。
3 専門鑑定人
裁判所から選任された専門鑑定人は、心理学や医学などの専門的評価を担うが、鑑定人が判断主体とならないよう、裁判官はチェックリストを用いて鑑定書を評価し、客観性の確保に努めているというと日弁連報告はいう。そして、鑑定人は「関係人間の融和を回復するよう働きかける」とか、「紛争を終結させる効力は、最終的には鑑定人の人格にも左右される」という評価もあるところである(二宮154頁)。
日弁連報告によれば、鑑定結果によれば、調査官裁判同様、鑑定人が裁判をすることになりかねないとの批判もあるという。
日弁連報告は、少年局のスタッフ、手続補佐人、裁判所が選任する鑑定人の「質」の確保も問題になっていると言及した。ドイツでも、質を確保しつつ、人材を確保することの困難性について言及があった。
4 私見による検討
上記のように、ドイツ法では、弁護士強制主義が採用されていることに照らし、弁護士も、強調の枠組みに取り込まれており、そのことについての検討が日弁連報告は欠けており妥当性を欠く。
このほか、裁判所は少年局を審問することができるものとされている。少年局は、書面で報告書を作成するかはケースバイケースであり、報告書の提出により代替されることもあるという(二宮151頁)。ただ、上記で触れた「コッヘム・モデル」に象徴されるように、地方都市では、裁判官、弁護士、少年局、相談所の専門機関が学際的にカンファレンスを開催しているが、例えば、バーデン・ビュルテンブル区州司法当局の少年局への評価はネガティブであり、地域や親権又は親子交流によって少年局の法的立場は親権は参加は義務的その他は任意的であり、意見交換の際は、両親のみならず少年局代理人を召喚することもあるという。

第10 共同親権・単独親権(配慮)の判断要素

1 緒論
共同親権(配慮)とするか単独親権(配慮)とするかの判断にあたっては、主に次の4要素が考慮される。
2 どの判断がこどもの成長にとって有益か
第1に、どちらの方が子の成長にとって有益かという点である。学業のみならず、趣味や稽古、習い事、精神的安定、充実した時間を過ごせるかなども含めて総合的に検討される。
第2に、継続性の原則である。これまでどちらの親と多く過ごしてきたかという人的継続性(人を基準とする継続性の原則)、現在の居住地に住み続けられるかという場所的継続性(ロケーションを基準とする継続性の原則)が考慮される。
第3に、親との関係性・愛着関係の深さである。ただし、愛着の強さのみで判断されるわけではなく、例えば一方の親が他方との接触を拒否する場合には、慎重な判断が必要とされる。すなわち、こどもが、監護親に懐いでいる場合でも、親子交流に監護親が絶対拒否を貫いている場合は慎重に判断がなされるという。
第4に、子どもの意思です。概ね12歳以上の意思は原則尊重されるが、こどもの主観的意思が常に子の利益と一致するとは限らないため、専門職が客観的立場から客観的利益の助言をして理解を促すことも重視されています。ただし、ドイツでは、こどもは本心を話さないこともあるので、手続補佐人や少年局のスタッフがこどもの家庭訪問をしたり、学校関係者と面談をしたりする行政福祉が充実している。

3 4つの要素をどのように利益衡量するのか。

これら4要素に優劣はなく、裁判官が個別事案ごとに総合判断します。また、一度決めた内容であっても、必要に応じて2〜3年ごとに見直されることも少なくない。必要に応じて合意内容を修正することもあると日弁連報告は述べる。

4 親権者変更と事情変更

言い換えると、共同親権となっても、2~3年で単独親権に移行することもあるという趣旨と思われる。DVや児童虐待については、刑事裁判の判決の有無は重視されず、鑑定によってこどもの最善の利益が害されるかで単独親権への親権者変更を認めるということも考えられると思われる。
また、父母間で、こどもを交代監護をする場合でも、実際は、タイムシェアリングをすることによって、養育費を減額させる意図があり、例えば非監護親は、自宅を不在にしがちであり、監護親がほとんど面倒を見ている場合なども考えられる。
いわゆる交代監護についても、過去の監護実績も踏まえて、中身を伴って実現可能である可能性ないし蓋然性を捉えることになると思われる。
裁判官としては、結局、「この親が本当に実行ないし実現できるのかという観点」を重視して判断することになると日弁連報告を述べる。つまり、交代監護は意思疎通が父母間でとれる「協調親」である必要があるが、そもそも、裁判官曰くそのような利用率は低率にとどまる可能性があるとのことである。その他、こどもの負担も重たくなるので、どのように判断するのかという問題もある。
以上のような観点から、ドイツ法を検討すると、共同親権といっても、双方の親が「同程度」に関われば良いという裁判所の運用になっていないと思われる。したがって、個別具体的な監護状況に応じることが肝要であるように思われる。

第11 DV・虐待事案と親権形態

DVや性的虐待が問題となる場合には、行政の少年局が積極的に関与し、刑事裁判で有罪判決がない場合でも、子の利益が害される可能性を否定できなければ、全部または特定事項について単独親権とされる。
共同親権のもとでの養育形態としては、双方の親がほぼ半分ずつの養育時間を分担する交代監護モデル(タイムシェアリング)も存在する。
しかしながら、交代監護モデルは、「実行可能性」や「こどもへの負担」、「親の協力(協調)関係」を前提とする。したがって、ドイツの裁判で認められる例は少数にとどまるという。

第12 総括

1 原則共同親権
ドイツでは、原則共同親権(配慮)を原則としつつ、夫婦関係と親子関係を分離して考え、こどもの利益を最優先する視点が徹底されている。
裁判官、弁護士、少年局、手続補佐人、裁判所から選任される鑑定人といった関係者が専門性を高め、連携しながら、子どもの成長過程に応じた柔軟な対応を行っている。ただし、これらは、いわゆる「コッヘム・モデル」のように田舎で各専門家の関係性が「密」の場合にしか妥当しないとの批判もあるところである。
日本でも、人事訴訟法改正議論に当たり、家裁調査官が、他の機関と連携をしないことから、弁護士を中心に高い不信が示されていたところである。
2 20年経過しても暗中模索
もっとも、ドイツでは、共同親権が原則となって20年以上が経過した現在でも、「子の利益」について確立された唯一の答えがあるわけではなく、試行錯誤が続いているとの印象を受けたというのが日弁連報告の括りである。
3 我が国の将来への展望
日本でも来年4月より、選択的共同親権が導入されるが、運用の参考は少ない。子の利益をどのように守るかという点で、日弁連報告及び比較法を研究する筆者のドイツ法制を巡る検討が、今後の選択的共同親権法制を巡る子の最善の利益について参考になれば幸いに思う次第である。

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