親権者の指定逆転勝訴のケース
親権者の指定逆転のケース
今回も、弁護士とシュシュとの間のパースペクティブ
弁護士:事案は、江藤なるみさんが、鈴世さんと平成25年に交際を開始し、平成26年に婚姻をしました。なるみさんには、前夫幸太との間に平成20年に生まれた長男緋生、22年に生まれた二男千騎がいた。鈴世は、婚姻と同時に長男と二男を養子縁組した。その後、平成28年になるみさんとの間に、長女ありすが生まれた。夫は、平日、会社員として働いており、月収は手取りで約30万円ありました。
もっとも、鈴世さんは、月収の15万円を家計に入れていましたが、残り15万円は自分の飲食代や遊興費に使っていました。
平成29年夏から、なるみさんは保育園でパートの仕事をして月10万円の収入を得るようになりました。なるみさんは日中働きながら一家5人の食事2洗濯、掃除などの家事を行い、アリスの保育園の送迎をしていた。夫は仕事のため、平日午前6時頃には家を出て、午後8時に帰宅、午後9時にはアリスと就寝してしまっていました。鈴世さんは、まもなくなるみさんに対して、「死んでほしい。」「早く死んで。」などのモラルハラスメント行為を行うようになった。
そこでなるみさんは離婚を決意して離婚調停を申し立てたが、鈴世さんは、3人たちのこどもの親権は自分がとると主張した。
シュシュ:事案だけをみていると、別居もしているようだし、しかも緋生、千騎は養子なので離婚に際して養子縁組の解消は認められやすいので、年齢も考慮すれば、ふたりの親権は問題がなさそうだね。そうだとすれば、争点は、婚姻破綻の有責性はいずれにあるか、親権者の指定が争点だね。
弁護士:過去の監護実績も調査官調査の結果からも、アリスの親権も母が得られて妥当ではないかと思われたところ、家裁の判決は、アリスは夫側に指定したのですよね。
どうして主たる監護者が親権を取得できなかったのだろうか
シュシュ:どうして母親が、親権がとれなかったんだろうね。
弁護士:まとめると、第一、監護の安定性については、親権確保を目指し合意に基づかず、こどもを連れ出したものであり尊重すべき事実状態ではない、第二、主たる監護者は、パート勤務まではなるみにあるといえるが、就労開始後は、食事を作るのは週2、3回になり、外食や弁当が増えており、週2回くらいは飲み会で遅くなり、気晴らしで外出することが増えた。第三、夫は休日にはこどもたちを外に連れ出したり食事を作った。第四、監護態勢については、夫の監護態勢は良好で安定しており、なるみと比べ変動要因が少なく、将来的にも安定が見込まれ、アリスの負担が少ない。
また、夫は家事をこなせ、なるみが作った食事がほとんど単品といった簡単なものであることから夫がこれと同程度の食事を作る術を習得するのに困難があるとは思われない。第五、なるみは就労時間を増やし収入を増やすことを考えているから、なるみの在宅可能時間は、就労時間の増加により、今後の夫の在宅状況と大差がないものと解される。
そして2名のこどもは、今後世界が開けていくが、アリスについては、従前と同様の監護は期待できない。 シュシュ:これに対して、どのような控訴理由が考えられるの?
シュシュ:男性が親権を主張する場合の参考にすべき事例ともいえるよね。
一審判決に対して、どのような控訴を求めるべきか
弁護士:やはり調査官報告書が自己に親和的である以上、それに依拠した主張をすることになると思います。具体的には、女性敗訴の場合でも、同居中及び別居後の監護実績や今後の監護計画の追加の主張立証、兄弟不分離の主張、今後の監護の意向などを主張することになります。
シュシュ:高裁での逆転は、やはり当初の調査官報告書が母親に親和的であったことが、強く影響したものと考えられます。