離婚にあたり、子どもの意見が取り入れられることはあるのでしょうか。
●離婚にあたり、子どもの意見が取り入れられることはあるのでしょうか。
家事法は子の意思を反映する制度の充実を図っています。一定の場合、子供は手続行為能力を認められ、利害関係人として手続に参加するとともに、弁護士を手続代理人に選任することが可能です。また、家庭裁判所は子の意思の把握に努め、その意思を考慮しなければなりません。さらに、15歳以上の子の陳述の聴取が求められる場合もあります。
子供の手続き行為能力
民法では、未成年者が法律行為を行う場合には、親権者の同意を得ることが必要とされ、同意を得ないでした法律行為は取り消すことができるものと規定されています。家事法は、この原則に例外を設け、未成年者であっても、一定の事件については、子どもに意思能力(物事の善悪がわかる程度の能力)があるかぎり、親権者から独立して手続をすることができる手続行為能力を認めました。
離婚に関連して子供に手続能力が認められるのは、次のとおりです。
① 子の監護に関する処分の審判事件及び同審判を本案とする保全処分(ただし、養育費請求事件を除く)
② 親権者の指定又は変更の審判事件及び同審判を本案とする保全処分
③ 子の監護に関する処分の調停事件
④ 親権者の指定又は変更の調停事件
子供に手続行為能力が認められる場合には、子どもは、家庭裁判所の許可を得て、家事新頁なの手続に利害関係人として参加することができます。
ただし、家庭裁判所は子の年齢及び発達のその程度その他一切の事情を考慮して手続への参加が子の利益を害すると認めるときは、申立を却下しなければならないとされています。また、申立がない場合でも、家庭裁判所の方で子どもの参加を認めた方がよいと判断すれば、職権で、子どもを利害関係人として手続に参加させることもできます。その場合、子どもは事件当事者と同様に記録を閲覧謄写したり、期日に立ち会うことができます。
この規定は、調停の手続きにも準用されます。親権者の指定は、通常、両親の離婚調停の中で話し合われます。離婚調停に関する手続行為能力を定めた規定も、子どもの利害関係参加人としての参加を排除する趣旨とは考えられていません。
従って、両親の離婚調停で親権者が話し合われる場合には、子どもは、家庭裁判所の許可を受けて、利害関係参加人として、独立した立場で両親の離婚調停に参加し、意見を表明することができると考えられます。
子どもの手続き代理人
子どもが独立の立場で手続に参加できるといっても、実際に子供が単独で手続きに参加するのは非常に困難です。そこで、子どもが弁護士の援助を受けて意見表明できるようにするために設けられたのが手続き代理人の制度です。
① 選任
裁判長は、必要があると認める時は、申立により、又は職権で、弁護士を手続代理人に選任することができます。本制度の利用が有用な事案の類型としては、以下のようなものがあります。
イ)子どもの言動が対応者や場面によって異なると思われる事案
ロ)子どもの意思に反した結論が見込まれるなど、子どもに対する踏み込んだ情報提供や相談に乗ることが必要と思われる事案
ハ)子どもの利益に適う合意による解決を促進するために、子どもの立場からの提案が有益である事案
② 権限
手続代理人は、子どもの代理人として利害関係人参加の手続き等に関与し、その主な役割は以下の通りです。
イ)子どものための主張立証活動
ロ)情報提供や相談に乗ることを通じた、子どもの手続きに関する意思形成の援助
ハ)子どもの利益に適う、合意による解決の促進
ニ)不適切な養育等に関する対応など
③ 報酬
子どもの手続き代理人の報酬は、裁判所が相当額を決定します。
調停や審判の手続き費用は本人負担が原則ですので、子どもの手続き代理人の報酬も子ども本人が負担するのが原則ということになります。
しかし、子ども自身は多くの場合無資力で、費用を負担するのが困難な場合が多いことから、非常に問題が多い制度となっています。
裁判所は、事情により当事者など本人以外の者に費用を負担させることができますので、手続代理人の報酬について両親を負担者とする決定を出すことが考えられますが、両親が任意に支払わない場合には、手続代理人自身が強制執行などによって取り立てるほかありません。
調停の場合には、その負担者をあらかじめ調停条項で定めておくことになりますが、両親が費用負担をめぐり対立する可能性もあります。
このような報酬の負担者をめぐる制度の不備も一因となって、子ども手続代理人の選任件数は伸び悩んでいるようです。子どもの手続き代理人を選任する権利を実質的に保証し、この制度の利用を促進するためには、法律総合支援法を改正するなどして、子どもの手続き代理人の報酬を公的負担とすることが必要不可欠でしょう。
子の意思の把握
家庭裁判所は、親子や親権に関する家事審判その他未成年である子(未成年被後見人を含む)がその結果により影響を受ける家事審判の手続きにおいては、この陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努めるものとし、審判するにあたっては、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとしました。この規定は、調停手続きにも準用されます。
15歳以上の子の陳述の聴取
子の監護に関する処分の審判、同審判前の保全処分、親権者の指定・変更に関する審判、同審判前の保全処分をする場合には、家庭裁判所は、15歳以上の子の陳述の聴取をすることが求められます。
ただし、養育費に関する処分の場合は除かれます。