認知の無効を主張することはできますか?

認知の無効を主張することはできますか?

私の夫は、私と結婚する際に、息子が自分の子ではないことを知りながら、自分の子として認知をしてくれました。この度、夫とは離婚することになりましたが、夫は、息子の悠聖が自分の子ではないとして「認知は取り消す」といっています。夫の主張は認められますか。 離婚後300日以内のポイント ■最判平成26年1月14日により、認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知した場合でも認知の無効を主張できる ■血縁関係がないのになされた不実の認知は無効であるというのが実務・通説 ■認知の効力が生じるには血縁関係が必要との最判昭和50年9月30日がある ■嫡出否認の訴えは、夫からしか起こせません。 ■嫡出子の場合には、血縁関係がなくても実親子関係が認められる場合があり(最判平成25年12月10日DNA裁判)。これに対して血縁関係がない場合には認知は無効とされ実親子関係が認められない嫡出でない子の場合と差異が生じることになります ■相続関係にも影響するものであることにも留意が必要

 

認知者自身が自らの任意認知は事実に反して無効を主張できるか

最判平成26年1月14日は、「認知者は,民法786条に規定する利害関係人に当たり,自らした認知の無効を主張することができるというべきである。この理は,認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異なるところはない。」と判断しています。 その前提として、判例は、「血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は無効というべきであるところ,認知者が認知をするに至る事情は様々であり,自らの意思で認知したことを重視して認知者自身による無効の主張を一切許さないと解することは相当でない。また,血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知については,利害関係人による無効の主張が認められる以上(民法786条),認知を受けた子の保護の観点からみても,あえて認知者自身による無効の主張を一律に制限すべき理由に乏しく,具体的な事案に応じてその必要がある場合には,権利濫用の法理などによりこの主張を制限することも可能である。そして,認知者が,当該認知の効力について強い利害関係を有することは明らかであるし,認知者による血縁上の父子関係がないことを理由とする認知の無効の主張が民法785条によって制限されると解することもできない。」としています。 木内道祥裁判官の補足意見は、「認知者が血縁のないことを知りながら認知した場合に認知無効の主張を許さないことは,子から法律上の父を奪わないという意味で子の福祉に資するということはできるが,民法786条は,子以外の利害関係人も認知無効の主張をすることを認めており,この利害関係人には,子の母,認知者の妻,認知によって相続権を害される者なども含まれる。また,同条による認知無効の主張については期間の制限も設けられてはいない。従って,認知者の無効主張を制限したことによる子の父の確保の実効性はわずかなものでしかなく,そのことをもって,被認知者の地位の不安定を除去できるものではない。本件において,被上告人に認知無効の主張が許されなかったとしても,被上告人の訴えが斥けられるにすぎず,被上告人と上告人の間の法律上の父子関係の存在を確定するものではない。現在,認知無効を主張するのが被上告人だけであったとしても,今後,新たに利害関係人が生ずることもありうるのであり,将来,被上告人以外の利害関係人から認知無効の訴えが提起されると,被上告人と上告人の間の法律上の父子関係は否定されざるをえないのである。」と実質的な判断の理由を補足しています。 これに対して大橋正春裁判官のみ反対意見を述べてました。反対意見は、「民法786条が反対の事実を主張できる者として父を挙げていない理由として,認知者自身が認知の無効を主張することが想定されていなかったにすぎないといわれることがあるが,同法785条が認知をした父自身が認知の効力を否定することがあることを前提にした規定であることを考えれば,立法者がこれを想定しなかったとは考え難く,同法786条が父を除いているのは立法者の明確な意思を示すものと理解すべきである。また,認知した父に反対の事実の主張を認めないことにより,安易な,あるいは気まぐれによる認知を防止し,また認知者の意思によって認知された子の身分関係が不安定となることを防止するとの立法理由には十分な合理性がある。 私は,法律の解釈は常に文理解釈によるべきであるとの立場をとるものではないが,条文の文言から大きく離れた解釈を採る場合には,これを正当化する十分な実質的な根拠が必要であると考える。」と多数3、結論支持1、反対1の多数決で認知の無効の主張は正当化されるとされています。 認知におつかれではありませんか。離婚をするのは、法的なこと、経済的なこと、心の整理といろいろ心理的に辛いことがあります。 ただ、認知問題に関しては、自分の新しい人生やお子さまの将来にも影響を与えることです。私も母子家庭で育ちましたが、一例では父親との関係をどうするかなどは高等教育を受ける際のポイントになるかもしれません。離婚は、法律的に決めることが正しいことではなく、経済的、精神的(心理的)に、きちんと整理していくことが必要です。離婚を専門としている弁護士は、「法的離婚」だけではなく、女性の依頼者に寄り添い、解決に向けて動いていきたいと思います。離婚というのは、「勝ち負け」があるのではなく、あえていえば「終わった」というか、パートナーの交代の年齢で互いに求め合うものがずれてきたという面が強いと思います。ただ、勝ち負けにこだわる男性からは,果敢に立ち向かう弁護士がヒラソル法律事務所です。

 

弁護士とシュシュとのパースペクティブ

シュシュ:5裁判官のうち、家族法の得意な弁護士2名で多数を形成して、多数3、有力裁判官の寺田裁判官が結論のみ是認の1、弁護士出身の大橋裁判官が反対1となりました。 弁護士 :繰り返しになってしまいますけど、血縁関係がない不実の認知は無効ということで前提問題は、昔は争いがあったのですが、現在は無効で固まっています。こういう理論的前提があると、不実の行為をしておきながら自分でやっぱり無効だったということを主張する信義則違反の側面が強いのかなという印象を受けます。 シュシュ:判例でも認知の効力が生じるためには血縁関係にあることが必要とされていますからね。でも女性の気持ちからすると、任意認知は、事実の承認的な側面があることは否定的な意思、意思行為の側面があることもあります。なので認知者のきまぐれでいいのかという大橋裁判官の反対意見も分かります。 弁護士 :ここでまた嫡出推定の話しが出てきてしまうんだよね。今回の事件でも、婚姻がありましたので、認知準正が生じてこどもは嫡出子のポジションを得たのですが、今回の請求で、父の嫡出子というポジションからは、落ちてしまうということになりますね。 シュシュ:そこで、思うのは、DNA裁判だよね。DNA裁判では、あれだけ「子の地位の安定性の確保」を打ち出していたのに、木内裁判官の補足意見は掌返しで、「子の父の確保の実効性はわずかなものでしかなく,そのことをもって,被認知者の地位の不安定を除去できるものではない。」となっているよね。 弁護士 :僕はそれだけ嫡出推定の制度が不合理なんだと思います。今回の悠聖くんも嫡出子だったわけですが、婚姻後に生まれたこどもではないので、認知推定が働かないんです。それでDNA裁判の方は嫡出子の地位を失わなかったけど、悠聖くんの方は失ったということになりますね。 シュシュ:自ら認知をした認知者自身が,血縁関係がないことを理由に,認知の無効を主張することができるか否かは権利の濫用になるんじゃないの? 弁護士 :法廷意見も権利濫用になる場合を認めていますが、本件は権利濫用の事実の審査をするために原審を破棄して差し戻すということまではしてません。つまり、民法786条は,子以外の利害関係人も認知無効の主張をすることを認めており,この利害関係人には,子の母,認知者の妻,認知によって相続権を害される者なども含まれるから、今回権利濫用にしても、また別の利害関係人が認知無効の訴えを起こすことが考えられるので、今後の実務の流れとしては、権利濫用にしないという方向性になるのではないかな。 シュシュ:僕は納得できない理由が3つあるね。一つは、父親を奪わないという子の福祉に反すること、二つは、嫡出推定が及ぶか否かで同じ嫡出子であるのに身分を失うか否かの差異についての合理的理由がない、三つは、自分で認知しておいてやっぱ止めたなんて無責任だよ!悠聖くんがかわいそう! 弁護士 :まあまあ。民法785条及び786条の規定との関係もあるが,理論的には,婚外子の父の定め方に関し,自らの意思で認知をしたという認知者の意思的要素を重視するか,血縁関係の有無という事実的要素を重視するかという問題に関わるんだよね。従来,認知者による認知の無効の主張を認めない見解であり,認知者がその意思で認知をしたという意思的要素を重視するものと思われる。大判大11.3.27民集1巻137頁も,傍論ではあるが,認知者による真実に反することを理由とする認知の無効の主張は許されない旨の判示をしている。 しかし,現在の通説とされる考え方は,事実的要素を重視するものであり,認知者にも認知の無効の主張を認める見解なんです。 シュシュ:どうして、血縁になったのさ。DNA裁判と矛盾しているよ。 弁護士 :うん。死後認知制度の創設と深くかかわっているといわれているよ。民法では、親の死亡から3年以内であれば子は認知(死後認知)の訴えを起こすことができると定めているわけ。検察官を相手として訴える。審理内容は血縁的な親子関係の有無だけ。だから意思的要素の重要性が減退して解釈に変動が起きたんだ。認知は子の福祉も大事だけど相続問題も関わってくるんだよ。だから認知の無効を主張できる人の範囲が推定相続人と広いんだね。 シュシュ:認知者が血縁上の父子関係がないことを理由に認知の無効を主張することができるか否かについて,嫡出でない子について血縁関係がないにもかかわらずされた認知は無効であるという以上,特定の者がその無効を主張することができないというためには,その解釈を支えるだけの十分な合理性が必要にして十分でないということなんだ。 弁護士 :子の母に認知者の子であると偽られて認知した場合や,種々の状況から自らの子であると誤解して認知した場合もあるしね。認知者が血縁関係がないことを知っていた場合についてみても,子の母と婚姻するに際して請われてその子を認知したが後にその母と離婚した場合や,子の置かれた境遇に同情して認知したが後に事情が変わった場合など養子縁組類似の利益状況のものもあるんだよね。だから、ステップファミリーの継父に養子縁組された場合の離縁と利益状況はにていると思うんだ。 シュシュ :そこで、自らの意思で認知したことをもっておよそ一律に認知者が認知の無効の主張をすることができないと解するには,実質的な根拠が十分でないんだね。 弁護士 :本判決も,権利濫用の法理に言及しているとおり,認知者による認知の無効の主張が権利濫用に当たる場合があることを否定するものではない、とされているんだよね。なのでシュシュがいうように、意思的要素、つまり、知っていたという事情にどれくらいのウェイトを置くかが問題となるね。知っていたというだけでは、厳しそうだね。権利濫用の法理を主張するには、認知者が認知をするに至る経緯や動機などの事情も考慮した上で,認知者による認知の無効の主張が権利濫用に当たるか否かを判断することになると考えられるね。

 

再婚禁止期間が100日以内でも再婚できる場合はありますか

民法の第七百三十三条は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」としつつ、第2項で、「次に掲げる場合には、適用しない」と指摘し、1号「女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合」、2号で「女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合」を挙げています。

 

強制認知の訴え

彼の子どもを出産しましたが、玲於が「自分の子かどうか分からない」「重い」といって認知してくれません。どうしたらよいのでしょうか。子の養育費も請求したいと考えています。 認知調停を申し立てることになります。相手方が認知に応じない場合は、認知の訴えを提起することになります。認知をしないと法律上の父子関係が生じないことから、養育費を請求するには認知の審判、判決が必要になります。 認知の訴えでは、まず家事調停をすることになります。そして、相手が子の認知である場合、訴外で任意認知をしてくることが実務上少なくありません。争いがある場合などは、相手が証拠調べなどを経て、自分の子であると認め合意に達した場合、合意に相当する審判を受けることに合意すれば、家裁は人訴と同一の効力を有する合意に相当する審判を出すことができます。調停ではダメで第三者に対抗できるようにするため、家事事件手続法277条の「合意に相当する審判」を利用することになります。そして、事実の調査として、DNA鑑定を行ったうえで、認知審判を最終的に行うことになりますが、合意ができない場合は認知訴訟を提起することになります。 認知の訴えについては、DNA鑑定がありますがこれが拒否された場合は、間接事実から判断されることになります。しかし、妊娠が可能な時期に外の男性との性交渉があることが男性側から証明された場合、認知請求は原則として棄却されることになっています。これを不貞の抗弁といいます。

 

血縁関係の不存在と養育費

僕は、離婚訴訟の最中に、7歳の英人が、不貞相手との間の子との事実を知りました。嫡出否認の訴えを提起しましたが却下され、親子関係不存在確認の訴えを起こしましたが請求を棄却されてしまいました。私は、元妻からの英人の養育費請求に応じなければならないのでしょうか。 法律上の親子関係がある以上、監護費用を支払う義務がありますが、妻の請求が権利濫用に当たる場合は支払いが免除されます。 本件では、法律上の父が、自然血縁上の関係の不存在を理由に、養育費分担義務を免れるかが問題となります。 本件のケースで最判平成21年3月18日は、妻の請求を権利の濫用としています。判決は「被上告人は,上告人と婚姻関係にあったにもかかわらず,上告人以外の男性と性的関係を持ち,その結果,二男を出産したというのである。しかも,被上告人は,それから約2か月以内に二男と上告人との間に自然的血縁関係がないことを知ったにもかかわらず,そのことを上告人に告げず,上告人がこれを知ったのは二男の出産から約7年後のことであった。そのため,上告人は,二男につき,民法777条所定の出訴期間内に嫡出否認の訴えを提起することができず,そのことを知った後に提起した親子関係不存在確認の訴えは却下され,もはや上告人が二男との親子関係を否定する法的手段は残されていない。 他方,上告人は,被上告人に通帳等を預けてその口座から生活費を支出することを許容し,その後も,婚姻関係が破綻する前の約4年間,被上告人に対し月額150万円程度の相当に高額な生活費を交付することにより,二男を含む家族の生活費を負担しており,婚姻関係破綻後においても,上告人に対して,月額55万円を被上告人に支払うよう命ずる審判が確定している。このように,上告人はこれまでに二男の養育・監護のための費用を十分に分担してきており,上告人が二男との親子関係を否定することができなくなった上記の経緯に照らせば,上告人に離婚後も二男の監護費用を分担させることは,過大な負担を課するものというべきである。 さらに,被上告人は上告人との離婚に伴い,相当多額の財産分与を受けることになるのであって,離婚後の二男の監護費用を専ら被上告人において分担することができないような事情はうかがわれない。そうすると,上記の監護費用を専ら被上告人に分担させたとしても,子の福祉に反するとはいえない。 (2) 以上の事情を総合考慮すると,被上告人が上告人に対し離婚後の二男の監護費用の分担を求めることは,監護費用の分担につき判断するに当たっては子の福祉に十分配慮すべきであることを考慮してもなお,権利の濫用に当たるというべきである。」としています。

 

弁護士とシュシュとのパースペクティブ

シュシュ:なんか僕、混乱してきちゃった。フランスではこどもの身分占有制度があるからこういうことにはならないよ。 フランスでは、親子関係は「身分占有」に基づいて成立しています。身分占有はフランス法に特有な制度で、子が特定の男性または女性との関係において子とみなされ、養育され、その氏を名乗り、子も相手を親とみなし、社会的にも子として扱われている状態をいいます。 弁護士 :判決は権利濫用として、元妻の主張をしりぞけています。本件では、法律上のパパさんはあくまで被告なので、出生した英人の嫡出推定の効果、つまり嫡出子の身分を奪われることはありません。しかしながら、実質的には血縁関係の不存在を優先させたといわれており、妥当な解釈のように思われます。水野紀子は、本判決について、嫡出推定制度の崩壊を招きかねないといって批判しています。 シュシュ:でも叔父さんは、山浦裁判官意見のように嫡出制度自体を不合理なものと考えているから崩壊しても実質的妥当性をとるべきと考えていそうだね。でも、権利濫用といっても、どんな場合にも権利濫用になるわけではないよね。 弁護士 :今回は、第一に妻は知りながら隠していたこと、第二に嫡出否認の訴えを起こせなかったことはやむを得ず代替的な法的措置を講じていること、第三にこれまで十分な監護費用を負担し信義誠実であること、第四に元妻は離婚に伴い相当額の離婚給付を得ることが挙げられています。そうなると、十分な財産がないケースも30代の離婚なのではありますから、直ちに権利濫用になるとまではいえない可能性があります。判決文を読む印象では、権利濫用のハードルはかなり高そうだ、という印象があります。2人こどもがいて、ひとりには養育費が支払われるうえ相当高額になることが予想されます。また財産分与もかなり高額であるので、事例判例にすぎません。ベースは養育費を支払わないといけないということになりますが、個別具体的な立証をしていくことになります。

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