離婚届の記入前に確認すべきこと6つ
離婚届の記入前に確認すべきこと6つ
協議離婚は、離婚届を書いて役所に提出するだけでできますが、実際には離婚届の「作成前」に取り決めておくべきことがたくさんあります。
子どもの親権者を決めないとそもそも離婚届を提出することができませんし、必要事項を書き込めません。また、いったん離婚届を作成してしまいますと、慰謝料、財産分与、面会交流などについても話し合って決めておかないと、後から話し合う動機が一方に乏しくなりトラブルになってしまいます。
今回は、離婚届の記入前に確認しておくべき6つのことについて、解説します。
1.離婚届の記入前に確認すべき6つのこととは
離婚届を作成する前に、夫婦で話し合って決めておくべき事項は、以下の6つです。
- 親権者
- 養育費
- 財産分与
- 慰謝料
- 面会交流
- 年金分割
順番にどのようなことか、解説していきます。
2.親権者
親権者とは、未成年の子どもの財産管理や身上監護を行う人です。実際に面倒をみる人ですね。
婚姻中は両親の共同親権が認められていますが、離婚後には父か母のどちらかにしか親権が認められないので、離婚前に話し合って離婚後の親権者を決めておく必要があります。
離婚届には、子どもの親権者を記入する欄があるので、親権者を決めないと離婚届を作成することすらできません。
未成年の子どもが複数いる場合には、それぞれについて親権者を定める必要があります。
また、親権者と監護者を分けることも可能ですが、その場合、財産管理は親権者、身上監護は監護者が行うこととなります。その際、離婚届の「親権者」欄には「親権者」となる人の名前を書いて提出しますが、実際に子どもと一緒に住んで養育するのは「監護者」となります。本来は、親権者と監護者を分属させいずれにも法的な責任をとらせるのが妥当と思われますが、他方で監護者が監護するにあたり法律上の権限がないと相当に不便といえるため、日本では離婚後は単独親権行使となっています。
3.養育費
未成年の子どもがいる場合には「養育費」も取り決めておくべきです。養育費とは、子どもの身上監護を行わない親が同居親(通常は親権者)に対して支払う、子どもの養育にかかる費用です。最近では、市役所の書式にも養育費を記載する欄があるもので、養育費は自分のためというよりこどもの福祉のために決めるものだという意識を持ちましょう。
非監護親となる例えば父親の場合、子どもと同居していなくても親であることには変わりなく、子どもを扶養すべき義務があるので、養育費を支払う必要があります。これは、さまざまなことをいわれる方がいますが、アメリカやフランスでも離婚をされても母親と住むこどもが多いのですので、共同親権者であったとしても、養育費を支払われています。
養育費の支払義務は、自分と同等の生活を維持すべき「生活保持義務」なので、自分の生活レベルを落としてでも費用の支払いをしなければなりません。
養育費の金額は、請求者と相手方のそれぞれの収入によって決定します。具体的な金額は、家庭裁判所が採用している「養育費の算定表」を参考にして決めましょう。なお、算定表はあくまで目安にすぎないので、習い事や医療費などで支出が多い場合は期間を区切って増額してみるなどの交渉をしてみるのも良いでしょう。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
4.財産分与
夫婦が婚姻中に積み立てた財産がある場合には、財産分与についても決定しておくべきです。
財産分与の対象になるのは、夫婦が協力して婚姻中に形成したあらゆる財産です。現金や預貯金、不動産や車、生命保険や投資信託、株券など、すべて財産分与の対象となります。
財産分与の割合は、基本的に夫婦が2分の1ずつです。妻が専業主婦だったり、夫より給料が少なかったりしても減らされることはありません。
たとえば夫が家や生命保険などの分けられないものをもらうときには、妻に対してその評価額の半額に相当するお金を渡すことによって清算します。
若い夫婦の場合は婚姻期間中に増加した財産が少ないので、あまり取り決めをしない傾向にあります。また、いわゆる熟年離婚で長く専業主婦をなされていた方などは、財産分与は遺産分割同様、法律の専門家である弁護士に離婚前に、依頼をした方が良いと思います。
5.慰謝料
夫婦のうち、どちらかに「有責性」がある場合には慰謝料が発生します。有責性とは、離婚原因を作ったことです。典型的な有責事由は「不倫(浮気)」や「DV」です。他にも、モラハラや生活費不払い、家出などのケースで慰謝料が発生することがあります。
協議離婚で慰謝料の取り決めをするときには夫婦が話し合って金額を決定しますが、それぞれの慰謝料発生原因によって「相場」の金額があります。
たとえば不倫の慰謝料の場合の相場は100~300万円程度です。ただし、双方が納得すれば、相場に限らず自由な金額を定めることができます。たとえば慰謝料を500万円や1000万円にしてもかまいませんし、50万円にすることも可能です。特に有責配偶者からの離婚請求の場合は、高度な交渉を伴いますので弁護士に依頼されるのが良いでしょう。
また、一括で支払いができない場合には、分割払いなどにもできます。
6.面会交流
未成年の子どもがいる場合には「面会交流」についても取り決めておいた方が良いことがあります。
面会交流とは、別居親と子どもが定期的に交流することです。基本的には実際に会って交流しますが、それが難しい場合には電話やメールをしたり、手紙や写真を送ったりするケースもあります。面会交流権は、別居親に認められる権利です。離婚時に取り決めておかなかった場合、離婚後に別居親が家庭裁判所に「面会交流調停」を申し立ててトラブルになることもあるので、離婚前に両者納得できる方法で取り決めておきましょう。
月1回程度、子どもに負担にならない方法で定めるのが標準的ですが、ケースに応じてフレキシブルに対応すると良いです。週1回、月2回などにしても良いですし、2か月に1回にしてもかまいません。
離婚すると面会交流をする時間はとれないという女性が多いと思いますが、今後、法務大臣が共同親権化を進めるとしていますし、面会交流はこどもの人格形成に影響を与えるもので、その日数も欧米の影響を受けて増えることはあっても減る傾向にはならないでしょう。この点、日本の会社は、「今日は面会交流日ですので」という理由では休みにくいと思うのですが、少し極端にいうと離婚してもこどもが小学生の間は面会交流の時間を自分もとらないといけないという心持ちを持っておかれると休まるのではないでしょうか。例えば、面会交流は原則宿泊を伴うものにして、その間、自分は友人と月1回、家事のお休みの日をもうけている方もいます。
ただし、配偶者暴力や子の拒絶がひどい場合は弁護士に依頼することも考えると良いでしょうが、弁護士の立場からすると若い夫婦は経済的に余裕がなく、こじれにこじれてからご相談にいらっしゃるという感想を持ちます。たしかに弁護士費用はかかりますが、相手方と直接やりとりをする必要がなくなりますし、相手方が調停を起こした場合は、対応するための弁護士が必要になってくるかと思います。
7.年金分割
夫婦のうち、どちらかまたは両方が会社員や公務員の場合、年金分割を取り決めておくべきです。
年金分割とは、婚姻中に払い込んだ年金保険料を夫婦が分け合う手続きです。手続きをしておくと、将来年金が支給される際に年金事務所が調整をして年金支給額を決定します。
専業主婦の方だった場合にも、年金分割をしておくと将来の年金受取額が増えます。分割の対象になるのは夫婦の年金ですので自分のものも対象になります。
年金分割には合意分割と3号分割があります。平成20年4月以降の3号分割については話合いは不要ですが、合意分割をするには両者の合意が必要です。
平成20年4月以前から婚姻していた場合や、専業主婦などで夫の扶養に入っていた人以外の場合には合意分割をしなければならないので、夫と話し合って年金分割の取り決めをしましょう。年金分割割合を決定するときには、基本的に0.5(半分ずつ)にするのが公平です。
合意ができたら離婚後に年金事務所に行って「標準報酬改定請求書」という書類を提出すれば、年金保険料を分割することができます。なお、年金分割の合意はかつては公正証書が必要でしたが、現在は、「年金分割の合意書」を提出して、改定請求を行うことができるようになりました。本人同士の出頭が難しい場合は、委任状を持った代理人を立てることもできるそうです。ただし離婚成立後の場合、相手方が合意を撤回するリスクもあるので、よく弁護士などと相談されるようにしてください。
以上が離婚届を記入する前に準備しておくべきことです。自分達だけで話し合うのが難しそうであれば、お気軽に弁護士までご相談下さい。離婚をなされるのであれば、後悔のない離婚をしましょう。