協議離婚での思わぬ失敗で離婚後紛争にならないように
協議離婚においては、思わぬ失敗があり、離婚後紛争として顕在化するものもあります。そこで、「離婚における失敗」というものはどうなるのか、弁護士が入っている場合は失敗は少ないので協議離婚レベルでの失敗例をみていきましょう。
1 離婚を先行させてしまったケース
例えば、親権、養育費、慰謝料、財産分与で争いがある場合は離婚をしないで争うということが必要な場合もあります。とにかく離婚したい、という一心で何も決めておらず、そのため法的なベースラインより損をしているというケースもあります。例えば、吉野麗子さんは、吉野恒夫さんと夫婦でしたが、吉野恒夫さんの不貞が原因で離婚してしまいました。麗子さんは勝気な性格で感情的になり不貞を問い詰めて離婚したのですが、恒夫さんからも家事はやらない、自宅には帰ってこない、ポンキッキーズの着ぐるみを着て変なコスプレをするなどといって、瞬に悪い影響を与えるといって、離婚に合意して、とりあえず親権は父親にして、後で話し合おうといわれたところ、瞬くんを連れ去られてしまいました。
よくあるパターンは、「何も決めていない」で離婚して、親権や財産分与で争いが生じるケースがあるのです。ここでは、離婚に至る経緯の中で吉野麗子さんと恒夫さんが怒鳴り散らして泥沼になり、そのまま親権者をとりあえず父親にして別れてしまったことが後に尾を引きます。
しかし、離婚をしていない場合は、離婚をするために、男性側に離婚給付をするモチベートがありますが、離婚をしてしまった場合は、離婚給付をしたり親権を変更したりするメリットは父親側にはありません。私も高葛藤の離婚事件や離婚先行型ではいきなり強制執行されたり、支払いを受けられなかったりした例がありました。最悪のケースだと、不貞は葛藤が高い事案が多いので「侮辱的な発言を受けたから、そうなると、また心理に時間がかかる」というような反訴請求を受ける意趣返し的妨害を受けることもあるのです。
そこで感情的に離婚を思いとどまり、決めるべきことを決めた方が時間的にも経済的にも「お得」なのです。
2 決めたけど実行してもらえない
離婚後紛争で多いのは、養育費などの未払いです。公正証書などを作成していればまだいいのですが、弁護士関与がなかったために、事実上養育費の支払いを受けることが困難になった例もあります。たしかに養育費は1か月あたりもらえる金額が少ない場合もありますが、こどもが0歳なら20年分の給付になると大金です。そうした人生に大きな影響を与えるときは法律家を介在させるのが妥当です。
養育費が未払いになり、面会交流もしていないと連絡先が分からず内容証明の送り先も分からないということが生じます。そもそも差押えを行うためには、判決や調停調書などの「債務名義」が必要ですが、これがないと不安定ですし強制執行認諾文言がないので、会社の給与を押さえることもできません。
そのため、協議離婚で養育費を決めたり慰謝料を決めたりした場合は、公正証書を作成しておかなければなりません。債務名義に基づいて銀行口座を差し押さえる場合、銀行名及び支店名までわかっていなければなりませんし、給与も会社が分かる必要があります。
慰謝料の場合、訴訟を起こしたとしますが、訴状を受け取ってもらえない場合があります。そうすると、弁護士は探偵のように、住所の所在調査に出掛けることになります。
そして、裁判所に報告書を提出するのですが、この作業にも時間がかかります。そうなるとあっという間に3か月から4か月は経過してしまいます。そして判決はもらったけど支払いを受けられないというケースがありました。以前、悪徳弁護士が関与している事案で、強制執行を午前9時3分にしたら弁護士の指導で午前9時に預金を全額引き出し、弁護士口座に異動させられて、弁護士が法テラスの報酬を確保しているという強制執行妨害事案がありました。このように強制執行をしたりと、また回収には労を割かなければならないのです。
実行してもらうためには、面会交流と養育費はセットでとらえた方がいいです。よく裁判所や女性団体のキャッチフレーズに「養育費を支払うことは子育てへの関与です」といいますが男性としてはほとんど共感しません。まるで、お金を払えばその子のためになる、というのでは風俗と同じではないか、と怪訝な態度をとる人の方が多いのです。そして、むしろ女性が働いて養育費を稼げばいいのでは、と言い返されてしまえばこの議論はおしまいです。
基本的には、養育費と面会交流をアレンジしてかわいい子供のために面会をして、生活費が必要だよなと父性をはぐくんでもらう必要があるのです。そのためには、定期的な面会交流や写真などの成長記録を送ってあげる必要があります。施設系の弁護士(共産党系の弁護士)が弁護し、DVをでっちあげて賠償命令などを受けた例などもありますが、こういう不必要に、離婚の際の葛藤を高める弁護士は「こじらせ」弁護士です。配偶者暴力センターなどが紹介するからといって、円満な弁護士の道先案内人とは限りません。むしろ、父親を怒らせて養育費の支払いを途絶えさせて、面会交流はさせない態度を貫きこどもに喪失感を抱かせるなどの結果に終わることが多いといえます。むしろ、面会交流と養育費を同時にアレンジすることによって、こどもにとっても、生活費を出してもらって、お父さんだから面会しているんだ、という気持ちを持つことは、こども自身の自己肯定感の育成にもつながるものです。
最近は、相談窓口として、モラルハラスメントがあるから配偶者暴力センターの弁護士に相談する人もいますが、基本的に彼らは円満離婚をさせることができない弁護士たちです。結果的に面会交流ができずこどもから不満をいわれたり、養育費も当然確保できず、挙句、面会交流妨害で訴訟を起こされた方などもそれなりにいるところです。円満離婚し、こどもにも父親の愛情を感じてもらいながら成長してもらえる方がよっぽど前向きといえます。
特に失敗では面会交流を重視しない母親が挙げられます。子育ては、キャパシティもあります。やはり元夫に金銭援助を申し入れたいときもあるのです。そういうときに面会交流を続けていて、父親が父性を持って子の成長を受け止めていると、父親としての自覚を持っている人がいます。現在担当している事件でもお子さんが2名いても、全くお子さんのことを気にせず住居を奪おうとする父親がいますが、住居確保の見通しもないのに、と思うのはやはり健全な面会交流ができていないからなのです。
子育ては長期戦なので、決めるべきことを決めてやるべきことをやり、「あとは独りで育てていく!」と思っていてもはやりキャパオーバーは出てしまうものです。面会交流は感情面でのキャパオーバーを補ってくれますし、こどもが私立高校に進学する際も、中学のころも含めて面会交流を続けさせていれば、臨時の出費として養育費の加算に応じてくれる親は多いものです。他方、面会させない親に対しては何があっても父親の側も1円も払いたくないという心情になり、割を食うのは父母ではなく子の最善の利益なのです。
このように、面会も安易に拒否するのではなく、父親としての継続実施により父親としての自覚をきちんと培ってもらうことが重要です。
3 その他恐喝的に脅されて離婚したり協議書にサインしたり公正証書にサインをしたりしてはいけません。
こういうものは、後でどうにかなる、と思って弁護士に相談しに来る方もいるのですが、実際は、なかなか難しいという例を経験したこともあります。例えば、モラハラだ、と断じられて妻の父が怒鳴り込んできて不相当に過大な養育費の支払いと子を連れ去られたという事案がありました。面会交流はできるようにこぎつけましたが、養育費は裁判官から事情変更の原則から難しいといわれ、詐欺や恐喝の主張をしてもやはり難しいところがあるのです。そこで、誓約書にしても協議書にしてもサインをする前には弁護士に相談することが必要であると思います。