どんな場合に不倫慰謝料支払うの?

1 不貞行為について

シュシュ:不貞行為については民法709条に違反して不法行為になると考える説があるけど、否定説も有力なんだね。

弁護士:否定説の論拠としては、不貞行為の結果、離婚となるところ離婚の葛藤状態がいたずらに煽られるという点を懸念していると思います。

シュシュ:肯定説の根拠だけど笑ってしまいました。俺の女に手を出した、私の夫を奪ったなどの考え方は相手方配偶者を自己の所有物とみるに等しく、不合理である、とされているけど、フランスでは当たり前だね。ペアが交代するのは当たり前だもの。

弁護士:慰謝料請求を認めても、発生予防にならないときとか、同居を続けているのならば慰謝料請求を認めるのはおかしい、自由意思の否定になるなど否定説の根拠は枚挙に暇がないね。

シュシュ:刑法上の違法性がないのはなぜなの。

弁護士:もともとは、「妻の姦通は家の血統を乱す」という発想が根拠にあります。しかし、思想的にいえば、このような家の血統ということそのものが封建的といえます。

シュシュ:不貞行為については、加害行為では肉体関係は要求されるの。

弁護士:理論的には、婚姻共同生活の維持を害する行為であり、不貞行為はそのような数ある行為の中の典型的な行為の一つです。したがって、配偶者に無断で人工授精を行うことや別居を強いる行為、会社が単身赴任を事実上強制するような事例を発する場合、違法とされる例があります。例えば勝手に精子を提供したような場合は妻に精神的苦痛を与えることになります(東京地裁平成24年11月12日)。

シュシュ:でもさ、不貞の慰謝料請求は、故意・過失が必要で、原告はかかる立証が難しいんだよね。

弁護士:過失がないというのは、婚姻関係を知らなかった、独身と偽られ騙されたとの主張が出てくることがあります。

シュシュ:不貞行為前の夫婦関係の円満であったということは要件ではない、とされているね。

弁護士:そうだね、慰謝料算定の考慮事情にすぎないとされているよ(東京地裁平成22年6月10日)。

シュシュ:子に対する慰謝料請求の可否については否定されているね。でも不貞相手にたとえばパパが奪われちゃったらさみしいし納得できないな。

弁護士:シュシュは、父子関係にこだわるよね。東京地裁昭和44年2月3日では、子に対しても不法行為責任を負うとされています。具体的には、こどもには、親から精神的平和・幸福感その他相互間の愛情利益を侵害されたというものですね。

シュシュ:これに対して否定した裁判例もあったんだね(東京地裁昭和37年3月1日)。弁護士:うん。不倫があっても、育児ができなくなるわけではないでしょうという点に根拠を求めているね。これに対して決着をつけたのが最高裁ということですが、最高裁昭和54年3月30日は、原則としてこどもは請求できないとして決着をつけました。しかし、子が、愛情を注がれなくなったこと、監護教育を受けられなくなったこと、その男性が害意をもって監護を積極的に阻止したことを要件としています。しかし、最高裁の特段の事情を満たす例は少ないと思いますね。法律論としては、相当因果関係がないという点に求めているようです。

弁護士:基本的には、不貞について主張立証責任については、確定的になっています。

 

請求原因

抗弁

裁判上の争点

不貞行為の存在

不貞行為の不存在

不貞行為の有無

 

故意・過失なし

故意・過失の有無

 

意思を制圧し関係を強要

意思制圧の有無

 

因果関係なし

因果関係の有無

 

婚姻関係が既に破綻

破綻の事実の有無

 

精神的苦痛が生じていない

精神的苦痛の有無

 

消滅時効

知った時と提訴の時期

 

除斥期間

不法行為終了時

 

期待可能性なし

期待可能性の有無

 

いわゆる枕営業

枕営業の該当性の有無

 

被害者の承諾

被害者の承諾の有無

 

権利濫用

原告による損害賠償請求の動機、AY間の不貞行為の内容等諸般の事情

 

シュシュ:叔父さんは不貞行為訴訟は、証拠が重要といっているよね。

弁護士:そうです。例えば、東京地裁平成21年6月3日は、「客観的証拠は存在しない」とか、供述があるとしても、「かかる主張ないしは供述を排斥するのに十分な証拠は存在しない」と説示しているんだ。事実はどうであれ客観的証拠を重視する姿勢が顕著だよね。

シュシュ:例えば写真はどうなんだろう。普通は不貞行為があったとなるよね。

弁護士:一応シュシュのいうとおりだと思うよ。お風呂に入っている写真でも客観的証拠にならないのであれば、あとは性交渉している写真しかなくなるけど現実的ではないよね。ただし否定した裁判例もあって、風呂の写真については、その撮影日時が不明瞭であるほか、正確な日付がなされたのかどうかの点について不明であるとしています(東京地裁平成20年12月5日)。

 証拠がすべてといっても、盗聴テープについては、東京地裁平成21年11月17日、調査報告書についても信用性を否定した東京地裁平成19年9月27日があります。メールやラインについて、証拠能力を否定した裁判例があるから注目だね(東京地裁平成21年12月16日)。

シュシュ:GPSについてはどうなんだろ。違法っぽいけど探偵はよくやっているよね。

弁護士:肯定的にとらえた判例もあるね(東京地裁平成27年3月17日)。

シュシュ:詫び状や誓約書については、恐喝などの問題点もあるよね。

弁護士:そうだね。ただ、サインをしてしまうと、「高度な教育を受ける不貞相手が、全く理由のない自らの責任を認めたり、事実に反する内容の署名に署名・押印するとは考えられない」と指摘した裁判例があるので、きちんと弁護士に相談することが重要だね(東京地裁平成21年11月26日)

シュシュ:ところで、妻と不貞相手の間男さんの場合、損害賠償責任は完全に一致するのかな。

弁護士:同じとする裁判例と間男さんの方が責任が軽いとする裁判例があります。まあ、不真正連帯債務だから意味ないというのが形式論だよね。

 これに対して、「一般に不貞行為はその相手方よりも配偶者の方が重いといえる」とするものや、「不貞について第一に責任を負うべきなのは、Xの配偶者でありながら、Yと不貞に及んだAであり、Yの責任は副次的」と指摘するものですが、私見は比較的珍しい裁判例と解します。おそらくは、不法行為制度の損害の公平な分担という趣旨を重視したものと考えられます。もともと婚姻破綻に瀕していた場合の不貞行為の場合は減額されるということがありますね。(最高裁昭和51年3月25日)

この判例は批判が強いけど、Aの過失をいわゆる被害者「側」の過失として考慮して損害賠償額は減額されるべきことを認めている。そうすると、この事例と不貞訴訟とでは、Xを被害者、AYを共同不法行為者とする点で構造を同じくする以上、不貞訴訟におけるYXに対して負うべき損害賠償額もまた減額されるべきという議論もあるよ。

シュシュ:すごいアクロバットな議論だね。まあ、同乗した夫の過失を妻の過失として斟酌しているので、たしかに、不貞相手と夫が共同不法行為者ということで構造を同じくするかな、ということですね。

弁護士:いわゆる枕営業判決事件については、売春婦と同様に、顧客の性処理に商売として応じたにすぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害しないとした裁判例があります(東京地裁平成26年4月14日)。この種明かしのような裁判例が出されていますが、性的サービス提供を業務としている場合は、それ自体は直ちに不法行為にならないとしています。それによって夫婦関係が悪化しても関係ないとしています。問題であるのは、店舗外にも活動が広がっているようなケースです。そうすると、風俗嬢でもプライベート的に会っていたということでれば、それが、専ら対価を得る目的であったとしても、行為を抱いていることを認識している場合には、不法行為になります。要件としては、店舗外であること、性的処理にとどまらないこと、好意があること、店舗外で肉体関係の継続を求めていること、これについてこいがあること―以上を満たしている場合は、肉体関係が対価目的でも夫婦関係に悪影響を及ぼすという意味で夫婦共同生活を乱したということで不法行為になります。

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