いわゆる夜遊びと離婚原因の「不貞行為」(論考)
名古屋の離婚弁護士のコラムです。 離婚を扱っていますと、様々なケースに遭遇します。そういう意味では純粋に全く同じ流れをたどる離婚事件はありません。 しかし、そもそも離婚原因の中に「不貞行為」があること、慰謝料の発生原因は「不貞行為」と「暴力」が中心となることから、相手方弁護士から不貞行為の主張が、離婚原因や慰謝料の請求原因で、主張されます。 本当に不貞されている方はやむを得ないのですが、理論的に、考えさせられるものは2つあります。 一つはもともと夫婦関係が悪化の一途をたどり離婚を考え始めたときに、異性に離婚相談をしてその異性が親身に離婚相談に乗っているうちに不貞関係に陥ってしまうというものです。 たしかに、この場合は別居前であれば、一般の方が相談相手でしょうし、夫婦共同生活の平和は乱されたとはいえると考えられます。しかし、もともと夫婦間の葛藤状態が高まっており、別居前夜のような場合にまで、「不貞行為」として有責配偶者や離婚慰謝料の発生原因になる、ということは率直に違和感があるものと考えられます。これは保護法益といえる夫婦共同生活の平和がすでに「平和」ではなく「有事」になっているときまで不貞行為になるのか、という問題提起といえます。この点、学説は、相手方には法的な責任は原則なく強度な違法性がある場合のみ、自己決定権を尊重する立場から相手方の法的責任は追及できない関係、単に一方の夫婦が性交渉をもったということのみによって損害を受けたとするべきではなく夫婦共同生活が脅かされたとする見解、合意による不貞行為は、婚姻共同生活の平和の破壊と因果関係が必要とする学説などがあります。いずれも、夫婦末期の状態における損害賠償責任については、否定的見解を持っているといえます。 次に、より違和感が強くなるのが、クラブやデリヘルでの性交渉ということになります。 これまでは、これまた「不貞行為」として主張されるものが多かったようですが、個人的な感想としては裁判所は立証を許しながらも、事実上は、考慮対象から除外しているような印象を受けます。しかし、東京地裁平成26年4月14日が注目される見解を出しました。いずれかといえば、上で紹介した強度な違法性が必要とか、夫婦共同生活が脅かされたことが要件になる学説に近い判断をしているようであり、同判決は「専ら性欲を満たすためだけに遊び」として行われた性交渉の他方配偶者に対する不法行為該当性を考え直させる契機になるものと評価されます。 たしかに、特定の恋人がいる場合は、今後の再構築家庭の問題として、離婚後紛争も踏まえて調整を離婚弁護士が図ります。しかし、クラブやデリヘルが「不貞行為」にあたるという主張は、性的なセンシティブなプライベート情報を法廷で暴露されることであって、実際は、東京地裁の判例は別として一回的なクラブやデリヘルでは低額な慰謝料としか認められないと考えられることに照らすと、実務の常識とされた点にスパイスを与える最新判例といえるかもしれません。 いずれにしても、恋人がいる場合は格別、クラブやデリヘルなどで、人格攻撃に近い証明をする弁護士もいますが、単に夫婦間の葛藤を高め、こどもがいる場合などは「こどもを中心に据えた」離婚、子の福祉の考慮ができないものと考えられます。ですから、今後は離婚訴訟でも、クラブやデリヘルでの性交渉が、性的不調和や性交渉拒否事由に該当しない限りは、有責配偶者にしない、慰謝料も認めないなどの理論的視座を提供していくものと考えることが相当のように考えられます。