子の塾や習い事の費用加算が問題となる事例

 標準算定方式においては、子の生活費指数を定めるに当たっては、公立中学校及び公立高等学校の学校教育費を考慮されています。では、子の塾や狙い事の費用加算が問題となることがあります。

シュシュ:叔父さん、僕、テコンドー習っているんだよ!

弁護士:そっかー!うまくなるといーね。

シュシュ:僕、バレーもやってる!

弁護士:元気の塊だね。

シュシュ:ところで、習い事が多くてフットボールもやりたいのに、ママが「やっちゃいけませんだって」

弁護士:アクティブなスポーツだから怪我を気にしているんじゃない?

シュシュ:ううん。学校のテストが一大事だ、だって。叔父さんがフットボールの費用出して!あと英語塾にも行きたいんだ!

弁護士:え?叔父さんはパパじゃないよ。

シュシュ:サン・シュルピス教会に連れて行ってあげるからー

特別の事情は個別事情で決まる

 

 そもそも、フランスにはあまり塾というものはありません。補講が活発に行われていますが、日本では、小学生からたくさんの習い事にいっているこどもがいます。一例を挙げると7つもというケースもあります。例えば、①シュシュくんが10歳になったので全寮制の私立学校に入れることになり、②フットボール、英語塾の習い事の費用を父親に加算請求できるのでしょうか。

 結論は事情によります。

 例えば、千葉家裁の裁判例では、「父親と母親がいずれも私立大学卒業であること、長男の私立学校の進学は同居中に決まっていたので承諾がある」とする裁判例があるそうです。

 つまり、父母が公立大学卒業や高卒の場合、また、別居後の私立学校への相談なしの進学の場合は、この裁判例からすると加算できない特別の事情にあたらない場合もあるのです。

 結果、千葉家裁の事例では、私立学校は承諾があるとみなされたものの、塾の費用について加算が否定されています。つまり、なんでも加算できないということです。

なぜ、塾代はこのケースでは認められない?

 ポイントとして、私立学校費用の方が、塾代やスポーツクラブ代に優先するということです。

 千葉家裁の事例では、ポイントの事情として、父親の義務者の減収が見込まれており、私立学校(中学・高校)の費用に加えて塾の費用まで負担させると、父親の生活が成り立たなくなるという配慮があったものといえます。

シュシュ:フットボールだめなの?

弁護士:うーん、意外と30代男性の給与の手取りというのは30万円代が多いです。この点、総支給額は40万円でも税金や健康保険料の控除などで手取りは30万円くらいになってしまうのです。そこで、養育費のベースが8万円と家庭して、中学の学費が乗ってしまうと、月々にならすと父親の負担は10万円から12万円くらいになります。他方、食費、家賃などは10万円~12万円は必要でしょうから、その他の固定費を併せると貯蓄がほとんどできないとなりかねません。

シュシュ:そっか、学校の学費は加算は認められるけど、塾の費用は加算を否定しているから、塾の費用負担は劣位すると考えられるね。

別居生活による不効率?

 

 この点、千葉家裁の裁判例の解説には、同居前の従前の状況と同額を負担すべきだとの議論は、必ずしも成り立たないとしています。

 親は子に自己と同等の生活をさせる義務があるのにどうしてでしょうか。この点、相当注目されて良い解説と考えられますが、「婚姻費用・養育費は従前と同レベルの生活を保障するという趣旨ではない」とされています。分かりやすくいえば、父母が離婚すれば「生活レベルが下がる」ので、離婚前後で同じ生活ができるわけではないということだと思います。

 同居時期に義務者が習い事や予備校費用を負担していたのでるから、別居後・離婚後も子の生活レベルを低下させないよう同額を負担すべきだという議論は、必ずしも成り立たない。

 シュシュ:でも、叔父さんのおこづかいから払ってよー

 弁護士:多分、ママはフットボールをさせたくないんだよ。掛け持ちじゃなくてバレー頑張れ!

 シュシュ:バレーは学校の部活だからね。無償だよ・・・。

 弁護士:そういうわけでは、シューズとか、練習用のボールやネットが必要になるだろ。

 シュシュ:どういうときに負担してくれるのかな。

 弁護士:習い事や予備校費用等については、義務者の承諾の有無、義務者の収入・学歴・地位、当事者の従前の生活状況及び現在の生活状況等に基づき、私立学校の学費よりも一層慎重に判断されることになりそうです。

 シュシュ:うう。

 弁護士:てか、送り迎えの負担もあるんだよ、ね。

調停条項の「一切の教育に関する費用をその都度支払う」の射程距離はどこまで?

 今回は、既に養育費について条項がありました。

 「現に通学中の学校及び将来進学する学校の授業料、教科書代、教材費、通学のための交通費、受験費、入学費その他一切の教育に関する費用をその都度支払う」となっていました(広島地裁の事例)。

 裁判所は、本件調停条項がもうけられた趣旨が、子らの年齢から、将来多額かつ容易に確定し難い教育費の支出が予想されるため、子らの教育に関して格別の配慮をしたというものであった。そこで、広島地裁は「教育に直接必要な費用のみならず子らの教育に間接的に必要な費用も含まれると解すべき」との解釈を示しました。

シュシュ:わーい、そうすると、フットボールの費用も出してもらえるの?

弁護士:フットボールについては学校のクラブ活動の範囲なので、シュシュの場合はスクールに通いたいということだから難しそうだね。

シュシュ:例えば、もし学校のクラブ活動でテコンドーをしていた場合、テコンドープロテクタや帯、道着、防具などは学校に支払うべき費用に入りそうだね。

一切の教育に関する分担費用とは??

 ポイントとしては、

  ・学校に支払うべき費用(クラブ活動を含む。)

  ・学校教育を受ける際に必要な学用品や制服などの購入費用

  ・学校教育を補完し進学準備のために一般的に必要な塾

  ・予備校の費用

 以上は調停条項の中に含まれるとの判断です。

 他方、

  ・給食費(算定表の食費として織り込み済み)

  ・ピアノレッスン

ピアノレッスンの費用は含まれないか

シュシュ:まあ、テコンドーはもういいよ。痛いし。でもピアノレッスンは、情操教育にもいいし、音楽は学校の科目にもある。そのうえ、音楽大学だってあるじゃない。

結論の妥当性は、ケースが詳らかではないので分かりません。

しかし、長女について広島地裁は、

「当時在学している短大の授業水準を超えており、また、他の音楽大学等の入学試験水準にも達していたことからすれば、それ以降のレッスンが授業や進学のために必要であったとは認められず、個人的興味に基づくものであった」とされた。

また、三女のピアノレッスンについては、

「合意当時三女がまだ小学5年生にすぎず、レッスンは同人又は権利者の個人的興味に基づくものというべき」とされました。

シュシュ:ただ、僕がいったように音大志望の人みたいに、教育目的に直接性がある場合もありそうです。

まとめ

 教育関連性が認められればすべての費用が自動的に認容されるわけではなく、内容や額によっては権利濫用になる余地があるかもしれません。広島地裁は、信義則上の義務として経済面を考慮する義務を設定し、教育費でも、義務者に加重の負担になる場合は、信義に反し権利の濫用に該当することがあり得るとしています。

 (なお、地域性もかなり考慮されるのではないでしょうか。筆者は東京家裁での審判の際、こどもは中学は私立に行くのが普通という感覚の裁判官にあたったことがあります。したがって、学費はもちろん東京などでは中学進学のための予備校を利用することは不当とまではされない可能性が高いと思っており、広島地裁も同旨の判断をしています。)

 

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