別居中の子連れ別居の強行とその後の解決に与える影響

 そもそも、父母間の葛藤が強くなく、一方が理性的である場合は子連れ別居など相手方の承諾なしに別居を踏み切ることはこどもに対する虐待行為になりますし、紛争の激化を招くので相当ではない場合もあります。  我が国では9割が協議離婚で、面会交流もルールを決めずにこどもが意思に基づいて自由に行き来しているというケースも少なくありませんし昔はそれが普通でした。地方の離婚案件の依頼を受けましたが、名古屋では大きな問題の一つの面会交流も、母親は「別に再婚する予定はないので、自由に来てもらって帰ってもらって構わない」と鍵まで元夫に渡している例もありました。この元夫は、母親の家に行き、こどもと一緒にお風呂に入ったりして、再び自分の家に帰っていくという生活をしていました。この元夫は非常に忙しい人ですから、月1回数時間というルーチンでは父子の絆が切れてしまうという考えもあったのかもしれません。このように父母のこどもに対する関わり方は量的なものととらえるとこどもは忠誠葛藤や心理的負担に悩まずにすみます。  子連れ別居をされたことで、9割が協議離婚しているわが国で協議離婚の目がなくなる、あるいは紛争が激化し離婚訴訟まで2年も3年も紛争を抱えた状態になるということは、よく見通したうえで判断する必要があります。  こどもは監護の安定が原則ですから、こどもが現在の幼稚園を変わったり居住場所を変えたりすることは、裁判所には意識されないことが多いですが世界的には、子の福祉侵害行為と考えられています。別居するにしても、面会交流についてきちんとルールを決めて共同監護の状態を構築してから別居されることをすすめます。しかしながら、現在、共同監護を実現できるほどの斡旋ができる調停委員はほとんどいません。また、弁護士も共同監護という頭がなくこどもを主たる監護者である以上連れ出すということに重点を置く弁護士が多いことから、父母間で話し合いをしつつ調停も行うということが理想といえます。  こどもを連れて行かれた方の親からすれば、突然こどもを奪われたも同然ですから、当然激しい対立感情を抱き、取戻しにいったところ警察を呼ばれさらに葛藤を高めるということをするケースもあります。ですから葛藤を高めず、前向きに話し合っていきたいというオーダーを弁護士に伝えておく必要があります。  そうなると、親権問題はもちろん、面会交流や金銭問題はもちろん、その他の親族から貸金返還訴訟まで起こされるなど全面的な中傷合戦になることがあります。  こうなると、一番の被害者はこどもです。こどもにとってはどちらも親であり、夫婦ケンカはしていても離婚ということまでは思い至っていないことが少なくありません。    驚いたことがありました。名古屋家庭裁判所の元家事調停官(裁判官)である女性弁護士が、こどもによればこどもの連れ去りに同行し、未成年者に対し「もっとママがいい」「ママもっと」とパパの前でいいなさいと、こどもを洗脳していた事例もありました。この元家事調停官は、「男性に育児は無理」などと準備書面に書き、かつ、フルタイムであることを理由にしていましたが、仕事をしていることでこどもとの関係を断ち切られるという考え方は、哲学や精神医学の観点から重要な問題を提起するものだといわざるを得ません。この弁護士の見解によれば、多くの女性弁護士たちも、「育児は無理」といっているに等しく元裁判官の認識でもこの程度のものであるのか、ということに驚かされます。  こどもは元裁判官からそのようにいわれ「悲しい気持ちになった」と話していましたが、元裁判官ですらその程度の認識なのです。  そもそも、別居自体がこどもを紛争に巻き込む行為であるということをそれぞれはよく理解しておく必要があるように思います。  別居時には、こどもの養育費、学校の転校、健康保険証など相手方の協力が必要なケースもありますが、自分で葛藤を高め話し合いができない状態にしてしまったため、交渉に応じてもらえないというケースもあります。  こどもに全く影響を与えずに別居することはできないにしても、環境を変えることになるのですから、こどもの負担を軽くするようにする必要がありますし、また、相互に無用の争いを招くことは許されません。そもそもこども自体が人権享有主体性は持つのであって、ある裁判官のように「こどもの幸せは裁判官が決めます」というような驕り高ぶった考え方では離婚紛争は解決できないのであって、いかに量的な問題としていくことかが大事です。

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