財産分与

年金分割をしない合意をすることはできますか。

年金分割をしない合意をすることはできますか。

 

名古屋本庁ではできないと解されていますが訴訟外ではできますし、このような合意は公序良俗に反しない限り有効です。つまりできます。

 

1 年金分割の合意分割

 年金分割のうち、「合意分割」は当事者間の合意によってなされるものであり、当事者は合意することも、しないこともできます。

 裁判例によりますと、離婚協議書において、離婚に伴う財産分与を定め、共済年金は全額夫が受取り、妻はこれを放棄するという内容について、離婚当事者は協議により按分割合によって合意することができるのであるから、協議によって分割しないと合意することができるとしています。そのうえで、静岡家裁浜松支部平成20年6月16日家月61巻3号64頁は、原則有効との判断を示しています。年金分割請求権は行政的権利ですが、裁判所は民法的に合意することも公序良俗に反しない限り有効との判断枠組みをとっているようです。

 

2 年金受給年齢が迫っている場合

 年金をすでに受給していたり、年金受給年齢が迫っている年齢に達している人が離婚を成立させる場合には、年金分割について明確な取り決めをしておくことが年金分割をする方にとっても、される方にとっても、後日の紛争の予防という点からみても重要といえます。

 

3 年金分割による年金額の増減額

 年金分割だと半分になるというイメージが強いですが、現実には平均3万円程度の増減額が生じる程度です。ただし、婚姻期間が30年ないし40年ということになっている場合、また、専業主婦の場合は、年金分割による増減額は月額7万円に及ぶこともあります。まさに離婚後の生活のクオリティを左右する死活問題といえるでしょう。

 

4 年金分割はしないで離婚する

 年金分割をしない旨の合意がある場合には、離婚調停が成立する際に「年金分割の審判・調停の申立てはしない」との条項を入れておく必要があります。しかしながら、名古屋本庁では、年金分割請求権は公法上の権利であり、家裁の事物管轄を超えると考えているように思われます。そこで、調停の席上で私的な協議書にサインをしてもらうという方法を弁護士が入ってしてもらっています。

 なお、清算条項は民法上の権利の清算であり、年金分割請求権は含みませんので注意が必要です。

 また、年金分割を行わないとしても、3号分割については、年金分割請求権の行使を直接制約することはできないとされます。平成20年以降については強制分割になっていますので、合意をしたとしても強行法規が優先し、3号分割=平成20年以降の分割については対照になりますので、すべての放棄ができるわけではありません。

 

5 静岡家裁浜松支部平成20年6月16日家月61巻3号64頁

 検討するに,離婚当事者は,協議により按分割合について合意することができるのであるから,協議により分割をしないと合意することができるところ,本件においては,申立人と相手方との間には,離婚協議書による離婚時年金分割制度を利用しない旨の合意がある。このような合意は,それが公序良俗に反するなどの特別の事情がない限り,有効であると解される。上記認定したとおり,当該離婚協議書は,申立人と相手方が話し合った上で,申立人が数日の熟慮期間をおいて下書きをしたことに基づいて作成されたものであり,そして,その作成時には,申立人と相手方との間に何らのトラブルもなかったのであるから,この合意を無効とする事情は存しないといわざるを得ない。
 なお,申立人は,平成16年の覚書について主張しているが,同覚書は,離婚時年金分割制度が施行される前のものであること,離婚協議書においても「財形年金の受け取り分は,Aが半額を受け取るものとする。」と規定されており,覚書の年金についての配慮がなされていることを併せ勘案すると,平成16年の覚書を離婚時年金分割制度における合意と認めることはできない。

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