試行的面会交流をしていないため面会が却下された事例
札幌高裁で、試行的面会交流を行っていないため申立てが却下された事例が出ました。
監護親が試行的面会交流を拒否したものの、このことと子の福祉は別論とした点が注目されます。
札幌高裁平成30年2月13日
(1) 父母が別居した場合であっても、子が非監護親と面会交流をすることは、子が非監護親からこれまでと変わらぬ愛情を注がれていることを知り、親子の間の深い結びつきを感じ取る機会となるのみならず、子の養育及び発達について配慮すべき責務を有する非監護親にとっても、子の置かれた状況や心情などを認識し、当該責務をより的確に全うすることにつながるものといえる。そのため、子の利益が害されると認められる特段の事情がない限り、子と非監護親が面会交流をすることを禁止すべきではないのであって、前記認定のとおり、未成年者らが面会交流に対して消極的意向を示しているとしても、子の福祉の観点からは、面会交流を実施する方向で調整を図って実施することが相当であると考えられる。
そして、前記認定のとおり、家庭裁判所調査官の調査結果によれば、未成年者らの不安を考慮すると当事者のみによる面会交流の実施は困難であり、札幌家庭裁判所における試行的面会交流を実施した上で、今後の面会交流の在り方を検討するのが相当とされていたが、抗告人が拒否したことにより原審において試行的面会交流の実施に至らなかった。
(2) ところで、試行的面会交流の意義、目的は、親子の交流場面を多角的に観察することにより、面会交流の実現可能性を見極め、面会交流の具体的内容や条件を検討し、また、非監護親と子が円滑に交流しているところを監護親が見ることによって、今後の円滑な面会交流の実施に向けて当事者の協議を可能なものとするところにあると考えられる。
しかしながら、原審で試行的面会交流が実施できなかったことにより、本件の面会交流の実現可能性を見極め、面会交流の具体的内容や条件の検討をすることが困難となっており、当事者間の紛争の実情に鑑みると面会交流を実施できるだけの信頼関係と協力関係が形成されているとも言い難く、当事者間で面会交流の実施に向けた具体的協議をすることも困難といえる。そうすると、現時点で相手方と未成年者らとの面会交流を実施するにあたっての諸条件が整っているとは認められない。
なお、抗告人が試行的面会交流の実施を拒否したことは、試行的面会交流の意義、目的を考えると遺憾と言わざるを得ない。しかしながら、その拒否の事実を面会交流実施の可否を判断するにあたって、面会交流を実施する方向での一事情とすることは未成年者らの福祉の観点からは相当とは言い難い。
(3) そうすると、本件においては、現時点で相手方と未成年者らの面会交流を実施することが相当であると認めることができない。
三 結論
よって、これと異なる原審判は失当であるから、原審判を取消し、相手方の本件申立てをいずれも却下することとして、主文のとおり決定する。