妻がこどもに会わせてくれません。どのような方法がありますか。
- 妻に親権を得ることに夫が同意しており、夫と子の面会交流を妻が認めない主張をしている場合にどのように私は妻に面会交流を認めさせることができるでしょうか。また、調停等で面会交流が認められたにも関わらず、調停後、親権者たる妻が非親権者である夫と子の面会交流に応じない場合はどうすれば良いでしょうか。
Step1.面会交流拒否については、調停の申立てができます!
離婚調停の成立後、別途、家庭裁判所に、面会交流調停の申立てをすることが考えられます。
また、調停で面会交流についての取り決めが成立したにもかかわらず、これが履行されない場合には、裁判所から履行勧告をしてもらう、間接強制の申立てをする等の方法があります。履行勧告は、家裁調査官からの働きかけですが、意外とプレッシャーになるものです。
Step2.離婚後の面会交流調停の申立て
- 離婚後の面会交流調停の申立て
離婚後の面会交流については、離婚調停の中で話合いを行って、面会交流の方法を取り決めることができ、その場合には取り決めた内容が離婚調書に記載されます。これが本案の債務名義です。最近話題の間接強制事件はこの強制執行になります。
別居中(離婚成立前)に調停や審判で面会交流に関する定めがなされている場合、離婚後も事実上その取り決めに従って面会交流が行われることも多いとはおもわれますが、法的にはこれらの取り決めは、離婚後は効力を離婚後の実情に合わないものとなるので、あらためて離婚調書ないし和解調書に今後の面会交流についての定めを記載しておいた方が無難です。
しかし、離婚調停でどうしても話し合いがまとまらない場合には、離婚調停の成立後、別途、家庭裁判所に調停の申立てをして、面会交流に関する取り決めを求めることになります。具体的には審判に移行することになります。
Step3.面会交流の可否は両親の葛藤状態で決められている!
面会交流の可否の判断要素や調査官調査を含む調停及び審判の手続きについては、別居中、離婚後を問わず、ほぼ同様です。この場合、調査官インテークが行われ、父母間の葛藤が、調査官レベルでは実施するか却下するか裁判官に具申するメルクマールになっています。
Step4.不動産を分与した場合の実効税率は20.315パーセント!
- 取り決めが守られない場合、履行勧告―履行勧告を活用しよう!!
調停や審判で面会交流の取り決めがされたにも関わらず、他方当事者がこれを守らず、面会交流ができない場合、まずは裁判所から履行勧告をしてもらうことが考えられます。
履行勧告は、調停や審判で決まった義務を守らない人に対し、それを守らせるために裁判所から働きかける制度です。
具体的には、あなたから家庭裁判所に対して履行勧告の申出をし、家庭裁判所から相手方に対し調停や審判の取り決めを守るように書面等で通知します。
ただし、この制度には強制力や罰則等はないため、相手方が応じない可能性もあります。
Step5.最近、何かと話題の間接強制
- 間接強制
相手方が履行勧告に応じない場合、裁判所に対し間接強制の申立てをすることが考えられます。
間接強制とは、債務を履行しない債務者に対し、一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金を科すことを裁判所が警告(決定)することで、義務者に心理的圧迫を与え、自発的な履行を促すものです。
つまり、調停や審判で決められた面会交流の履行をはばむ相手方に対、違反1回に対して制裁金を支払えと裁判所から命じてもらうことでプレッシャーを与え、間接的に面会交流の履行を実現させようとするものです。
ただし、間接強制が認められるためには、債権者が履行すべき内容が十分に特定されている必要があり、調停や審判での面会交流に関する取り決めがかなり具体的でないと裁判所で認めてもらえません。
最高裁平成25年は面会交流に関し間接強制を認める基準について、「面会交流を命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないと言える場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」と判示しました。
そのうえで最高裁が間接強制決定を認めた事案では、前夫と子との面会交流を認めた審判の内容として、
- 面会交流の日程等は月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし、場所は子の福祉を考慮して全夫の自宅以外の全夫が定めた場所とすること、
- 面会交流の方法として、子の受け渡し場所は親権者である前妻の自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定めるが、協議不調の際はしょていの駅の改札口付近とすること、前妻は面会交流開始時に受け渡し場所において子を前夫に引渡し、前夫は面会交流終了時に受け渡し場所において子を前妻に引渡すこと、前妻は子を引き渡す場面のほかは前夫と長女の面会交流には立ち会わないこと、
などが定められていました。
一方で、最高裁が間接強制を認めなかった事案では、審判の内容として、前夫と長男及び次男が1カ月に2回、土曜日又は日曜日に、1回につき6時間面会交流をすることが定められていましたが、子らの引渡の方法については何ら定められておらず、この点で、債務者である前妻が履行するべき給付が十分に特定されているとはいえないと最高裁は判断しました。
また、同様に間接間接強制決定を認めなかった事案では、調停調書の内容として、前妻は、前夫と子が2カ月に1回程度、原則として第3土曜日の翌日に、半日程度(原則として午前11時から午後5時)面会交流をすることを認めるとの定めがありましたが、時間については、「ただし、最初は1時間程度から始めることとし、子の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする」との定めがあり、最高裁はこの点から当該調停調書では面会交流の頻度や長さを必ずしも特定していないと判示しました。さらに、当該調停調書では子の引渡し方法につき、「前妻は、面会交流の開始時に特定の喫茶店の前で子を前夫に会わせ、前夫は終了時間に同場所において子を前妻に引渡すことを当面の原則とするとするものの、「ただし、面会交流の具体的な日時・場所・方法等は子の福祉に慎重に配慮して、前夫と前妻との間で協議して定める」としており、このことに照らすと、本件調停調書は前夫と子の面会交流の大枠を定め、その具体的な内容は、前夫と前妻との協議で定めることと予定しているものといえ、前妻がすべき給付が十分に特定されているとはいえないと判断しました。
このように、本案で債務名義で獲得しても、裁判官の裁量によっては、そもそも間接強制ができない筋合いのものがあります。また、本案で債務名義を得ても、面会交流債務は不代替的作為義務を強調する見解があらわれ、本案で面会交流を認めつつも執行の間接強制で否定されるという事案が大阪高裁で複数出されています。これでは、何のための本案の審判であるのかわかりません。
Step6.損害賠償はやけくそ!面会をあきらめた人の人生の後始末!
- 損害賠償請求
また、間接強制による以外に、面会交流を命じた審判等がなされたにもかかわらずこれに従わない場合には、審判等の条項の不履行が不法行為を構成するとして、他方当事者に対する損害賠償が認められる可能性もあります。ただし、これにより監護親との中は決定的に決裂することになりますし、ここまでする非監護親には、裁判官もフレンドリーではありません。そうすると、やけくそ型の病理的末期現象というべきで、安易に提起するものでないものと考えられます。