親権者変更により親権を取得し、面会交流を阻止することはできるか

親権者変更により親権を取得し、面会交流を阻止することはできるか

事案の概要
弁護士と伊串院生との対談
院生 :事案の概要としては、充希さんは、大学1年生のとき友人の紹介で16歳年上の夫と知り合い、3年ほど交際し婚姻しました。交際中、夫は気に入らないことがあると充希さんに対し殴る等の暴力を振るうことがありました。しかし、夫は殴った後には謝罪し優しくなるので充希さんは交際を続けていました。
弁護士:それで妊娠を契機に婚姻をしたのですね。
院生 :はい。平成20年9月に婚姻し、11月に玲於くんが出生しました。
夫は、IT関連企業のデイリーライブプラネットに勤務。業界では有名で、名大からも就職実績があります。充希さんは専業主婦として家事・育児をしていました。夫の隆聖さんは、しばらく仕事をしながら家事育児を分担していました。しかし、次第に、「こっちは仕事しているんだから、こどもをどうにかしろよ」等というようになりました。
弁護士:IT業界は慢性的な人手不足も影響しているかもしれませんね。クラウドなども「持ち帰り残業」を推奨するものですしね。
院生 :そのうち、家事育児はすべて充希さんに任せるようになるようになりました。玲於くんの夜泣きがひどいと隆聖さんはイライラし、充希さんに携帯電話や食器を投げつけてくるようになりました。その後、玲於の夜泣きだけではなく、日常生活で気に入らないことがあると暴力を振るうようになりました。
隆聖さんは、その後脱サラをして、喫茶店チェーンを立ち上げました。先生がモーニングを食べているクレシェンドムーンなんですけどね。
弁護士:え、あそこの社長なのか。モーニング、ボリュームもあってお得なんだよね。コーヒーもおかわりできるし。
院生 :夫は次第に夜遊びをするようになり、連絡もなく外泊をするようになりました。平成23年に、充希さんが玲於と帰宅すると、夫が女性を連れ込んで自宅に連れ込み一緒に風呂に入っていました。充希さんが抗議すると、夫は玲於くんの面前でもお構いなしに充希さんを殴ったり蹴ったりしました。
弁護士:こうしたことから、充希さんは、玲於を連れて離婚することにして、隆聖さんにそのことを告げると、あの子が好きになったから別にいいよ。こどもも連れて行っていい。ただ、児童手当は欲しいから親権はオレにしてくれといわれました。
平成24年12月、充希さんとしては早く離婚したい一心で玲於の親権者を夫と定めて協議離婚しました。そして、玲於さんと一緒に実家で生活を始めました。ちなみに、充希さんは母子家庭で玲於くんからみる祖母が健在です。
事件が起きたのは、その後で、離婚から3か月後、前夫の隆聖さんが登場し、「あの女性とは分かれたので戻ってこい」と復縁を迫ってきたわけです。充希さんが拒否したところ、前夫に顔を殴りつけられ、無理矢理玲於とともに連れ戻され、充希さんが断ると暴行を受けました。充希さんは近くの交番に助けを求めましたが、玲於を児童養護施設に入れる必要があるとのことで、シェルターに行くのは断わり、友人の未衣さんの家に避難することになりました。その結果、前夫が子の引渡しを求める審判を申し立てたとの申立書が転送されてきました。
院生 :DVの人が復縁を迫るために面会交流を利用することはありますが、子の引渡しを利用するという点が特色ですね。
弁護士:形式的には親権者なので人身保護請求などもできるので、相手方である隆聖さんの側にこどもを育てる環境なんてあるのか、意外と好々爺の祖父母が2名というケースもありますからね。では行きますか。
弁護士は、院生にも守秘義務があることを説明し、伊串くんの立ち合いの承諾をもらう。
充希 :玲於を前の夫に引き渡すことなんて考えられません。最初に相談にいった都民ファーストという法律事務所では、政治家を目指している女性弁護士が「女の幸せはこどもだけじゃないのよ。」と説教されて、年齢も離れているので私が若いからこどもを引き渡すのも一つの方法といってきました。しかし、そんなことは考えられません。親権者を前の夫にしてしまったことを今では後悔しています。
弁護士:復縁に関連して、いきなりこどもを引き渡せですからね。驚かれたことでしょう。親権者が前のままですと、長男さんの生活の仕方などを決める権限が前夫にあるということになってしまいます。
充希 :隆聖さんと顔を会わせると、それだけで具合が悪くなってしまいます。
弁護士:その点は大丈夫です。たしかに原則は、審判は対席です。しかし、裁判所に事情を説明して、同席をしない、出頭時間をずらす、待ち合わせ室を相手方と異なる階にする等、相手と顔を会わせないように申し入れます。裁判所に帰る時間もずらしてもらうように配慮を申し入れます。あと我々が立ち合いますし、なるべく人通りの少ないルートを通ります。
充希 :シェルターに入るように勧められたんですが、入ろうと思いました。でも、ネットで先生のことを調べて、こどもと別々になるかもといわれて友人の家にして良かったです。
弁護士:手元に玲於くんがいると安心ですね。前の夫が親権者としての適格性を欠くことの証拠を写メや手紙などで積み上げていきましょう。前の夫は、長男の前で充希さんに暴力を振るったり不貞相手を連れてきていたりしました。今まで面会交流もありません。
あとは別居の経過で充希さんが監護権者になったと主張しましょう。充希さんの方が長男を育ててきた実績がありますので、その点では有利です。あとは具体的な養育計画を作りましょう。
充希 :実は親戚の大ちゃんが、ゲーム会社に勤めています。私は理系ではないのですが、文系で海外文学や宗教に詳しいので、ストーリーなどの作成などを手伝ってほしいといわれています。中には託児所もあるそうですし。最初は時短で家でもできる仕事を振ってくれるといってくれています。
弁護士:そうですか。文学に詳しければある程度心理も詳しいと思いますが、はっきりいって充希さんが依存体質と思われると不利なので大輔さんとは、今は適正距離を保って良い援助者となってもらってください。
充希 :はい、もちろんです。大ちゃんはお兄ちゃんという感じですから性交渉とか、そんなことは考えられません。

院生 :どうしましょう。
弁護士:どうしましょうか。
院生 :まずは、子の引渡し請求に対する対応ですね。
弁護士:そうですね。経験は複数あるのですが、充希さんが思っているほど形而上学的に親権が指定されている場合、こどもを守れるかどうかは先行き不透明です。DVの証拠を集めて詳しい陳述書を作成する時間をとってもらいましょう。
そのうえで、対抗措置として親権者変更の審判と審判前の保全処分の申立て、接近禁止の仮処分の申立てで行きましょうか。
院生 :保護命令はやらないのですか。
弁護士:裁判所がクレシェンドムーンの社長に保護命令出すと思う?それに押しかけもあるので、ホットのうちに接近禁止の仮処分なら通りやすいかもしれないですね。
それに引渡し関連の方が懸念しますね。
院生 :人身保護請求の関係ですね。
弁護士:うん。僕は、拘束者代理人も請求者代理人もやったことがあるけれども、親権者と非親権者での奪い合いだと決定的に弱いですからね。
第一回目の審問
弁護士:意外でしたが、クレシェンドムーンの顧問弁護士は出てきませんでした。
院生 :なんででしょうか。
弁護士:第一にビジネスパートナーにプライベートのことを知られると事業上のパートナーとしてやりにくいということがあるのではないかな、第二に社長は交渉力が高いし簡裁の裁判くらいは自分でやるケースもあるから自信があるのではないかな。第三に離婚関連の弁護士を現在探しているとのことでした。
院生 :今回のケースですが、これまでの養育実績から、子の引渡しが認められることが難しいと説明してもらえないのですか。
弁護士:裁判所はそんな説明しないと思います。むしろ親権は隆聖さんにあるのですから、理は向こうにあると思います。むしろセンチメンタリズムな主張をしているのは客観的にはこちらという意識を持たないと裁判官の価値観によっては一気に急襲されてしまう可能性もあります。
院生 :本当は面会交流もさせた方が有利なんですよね。
弁護士:うん。でも今回は弁護士がいないし、東京家裁の調停振り分け要件にあてはまるのではないかな。接近禁止の仮処分決定を証拠提出しましたし。
第二回目の審問
弁護士:代理人が就きました。
院生 :企業顧問系の大池百合子さんですね。
弁護士:大池はギャンブラーだからね。どういうオーダーを受けているか分からないが、祖父母から跡取りの玲於を引き揚げろといって、大池が出てきた可能性もあるね。あと調査官調査が入ることになりました。
審判
子の引渡し却下、面会交流は4カ月に1度写真送付。親権者変更、親権者変更の審判前の保全処分認容。
弁護士:判決文を検討すると、親権者変更は、玲於の利益を考えて決めたものではないこと、前夫の暴力・不貞、現在の充希さんと玲於との関係、玲於の意思から、玲於の親権は充希さんに変更すべき、としました。
院生 :完勝ちでしたね。
弁護士:勝ちすぎたので即時抗告審が起きるかもしれないね。引き続き14日は警戒しよう。
院生 :今回のポイントはどういうところなんでしょうか。
弁護士:勝ちすぎ判決といえるくらい、といえますけど実際は薄氷の上を歩くようなものだと思います。つまり、どちらに転んでもおかしくなかったと思いますし、面会交流くらいは実施要領付で認められてもおかしくなかったとも思いますね。
ポイントは弁護士が就く前に、親権者の指定の経過が夫も児童手当を受け取るためで養育目的ではないと審問で述べたことが効きました。おそらくこの発言などが有機的に結びついて私たちの復縁目的という主張も認められたのだと思います。家庭の事件では、こういうことで結論が大きくぶれるのですよね。暴力は重視する裁判官とそうでない裁判官に分かれます。不貞はほとんど考慮されません。親権者指定の変更についてその経緯を検証するのは最近の福岡高裁の流れなのですが、虐待があるか否かだけを審査するにとどまる裁判所もあります。ですから、常識的な裁判体にあたったのも幸いしました。
あと、今回は離婚後実際に監護していたのは充希さんでしたが、これが常に有利になるとは限りません。単に監護委託していただけでそれを解消すると述べられれば、充希さんとしては監護する権限を失う可能性もあるのです。ですから事情変更が生じたわけではなく、そもそもの親権者指定が子の利益を考慮したものではなかったというケースなので、この判決は珍しいといえます。
院生 :先生の持論ですね。
弁護士:そうです。我が国の協議離婚制度は、こどもいがいる場合、公的機関の関与なしに親権者の指定ができるので、こどもの利益を考慮せず、不本意ながらチカラの強い者に押し切られて親権者が決まってしまうのですが、事情変更の原則を持ち出されると敗訴事案も相当に多いのです。そういう場合は離婚に詳しい弁護士に早急に相談して欲しいですね。

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