祖父母との面会交流が問題となるケース

熊谷一哉さんと萩原未央さんは、2年前に離婚し、未央さんが親権者として心哉くんと一緒に生活しています。

しかし、離婚の原因は、いわゆるSIV、突発的なケンカが暴力に発展したDVでした。一哉(いちや)さんは、映像クリエイティブ・脚本家で、未央さんはモデルなどをしていました。

未央さんは、眼底骨を骨折し,全治2カ月の傷を負ったことから保護命令の申立をして東京地裁がこれを相当と認め保護命令を命じて、一哉さんからの面会交流調停・審判も却下されてしまいました。

映画監督の熊谷史郎氏とその妻である良子さんは,未央さんと心哉(ここや)くんと会いたいと考えています。なぜなら、一哉さんを通じて面会することもままならないうえ、史郎氏は、内孫の心哉さんを可愛がっていたからです。また、保護命令事件に発展した場合、面会交流はなかなか認められないか短時間に限られることが多いといえます。そうすると,史郎さんなど祖父母を通じて、一哉さんのイメージをよくしていく、ということも考えられるからです。

おそらく社会的実態として、祖父母の面会交流が問題となるのは、父母間の葛藤状態が高い状態が今日に至るまで続いているケースで、祖父母を通じて、父のイメージをよくしようというものと考えられます。

このような場合、一般的に父側祖父母が介入することで、父母間の葛藤はさらに高まることもありますので、紛争に巻き込まれないように注意を払う必要があると考えられます。

祖父母が面会交流調停をすることができるかというと、家事事件手続法244条の親族に準ずる者の間という一定の身分関係の存在という要素があり、家事調停事件になるものと考えられます。

もっとも、祖父母との間の面会交流が調停でまとまらなかった場合、審判では法律上、祖父母に面会交流権があるとまではいえないことやもともと正月やお盆など要所でしか会わない関係であったことに照らすと,審判は却下されてしまう公算が大きいように思います。ですから、法律上は、野田愛子元裁判官などの論考では、第三者にも子の監護に関する処分事件の申立てが認められるから、祖父母も面会交流の主体になると考えられているようです。

しかしながら、理屈ではそういっても実務上は、なかなか認容に至るのは難しいように思います。学説では積極説が主流を占めてきましたが、祖父母が監護者指定を受けられるかという論点につき裁判例が消極で決着したことに照らすと、なかなか実務上は、心情面だけではなく法的にも厳しく調停での話し合いの期待が大きいものと考えられます。

公表審判例の中には、祖父母との面会交流審判は存在しないようです。

東京高裁昭和52年12月9日

子の監護者の指定申立事件(浦和家庭裁判所越谷支部昭和五〇年(家)第八四、八五号)につき抗告人らの抗告を棄却する。
幼児引渡し申立事件(同庁昭和五〇年第八六、八七号)につき、原審判を次のとおり変更する。
抗告人らは、相手方に対し、事件本人両名を、おそくとも昭和五三年三月三一日までに、両者協議によつて決定した、日時場所において引き渡せ。
抗告人らは、本決定確定の後右引渡しに至るまで、毎月一度以上両者協議して決定した日(但し、協議が調わないときは第二土曜日から翌日曜日)に、事件本人らを、相手方住所に、宿泊させ、相手方と面接交渉させよ。
相手方は事件本人らの引渡を受けた後二か月以内に一度両者協議して決定した日時に抗告人ら方に宿泊させ、抗告人らと面接交渉させよ。

理   由

本件抗告の趣旨は別紙抗告状(略)に、理由は別紙抗告理由書(略)にそれぞれ記載されているとおりである。
抗告理由書(略)一枚目裏八行目から、二枚目裏八行目までの主張は、原審判が示した相手方と抗告人らとの間の養育委託契約の存在およびその解除の認定を攻撃するものであるが、抗告人らのいうように右認定が誤りであり、もともと相手方と抗告人らとの間に養育委託契約が存在しなかつたとすれば、抗告人らが事件本人らの正当な監護権を取得することが全くなかつたというだけで、原審判の結論に影響のあろうはずのないことは多言を要せず、右主張の失当なことはいうまでもない。
同二枚目裏九行目から、三枚目表一〇行目までの主張は、原審判の文言を正しく理解しないでなされているもので、採用することができない。
同三枚目表一一行目から五枚目裏九行目までの主張は、原審判の事実認定を非難するものであるが、いずれも単なる附随的事情に過ぎず、原審判の認定した事実関係全体から、右非難された認定事実を除外して考えても、原審判の結論になんらの消長があるとは考えられないから、右主張もまた採用に値しない。
同五枚目裏一〇行目から、末尾に至る主張は、要するに相手方には事件本人らに対する父親としての愛情に欠けるものがあり、一方事件本人らは生まれ落ちた時から、抗告人らの手許で何不足なく育つたので、抗告人らに心の底からなじんでおり、この環境を変えて、事件本人らを相手方に引き渡せば、事件本人らの精神形成に悪影響を及ぼし、結局未成年者らの福祉に害があるというにある。しかしながら、家庭裁判所が親権者の意思に反して子の親でない第三者を監護者と定めることは、親権者が親権をその本来の趣旨に沿つて行使するのに著しく欠けるところがあり、親権者にそのまま親権を行使させると子の福祉を不当に阻害することになると認められるような特段の事情がある場合に限つて許されるものと解すべきことは原審判のいうとおりであり、原審判は、右の見解に立つたうえ、本件において相手方につき右のような事由があるとは認められないと判断しているのであつて、当裁判所も原審判の右判断はこれを是認すべきものと考える。

抗告人らは、相手方には事件本人らに対する父親としての愛情に欠けるものがあるというが、本件記録にあらわれた資料および当審における相手方本人審問の結果によれば、相手方は事件本人らに対し父親としての愛情を十分に抱いているものと認められるし、その他相手方に親権者として事件本人らを監護、養育するにつき著しく欠けるところがあることを窺わしめるものは見当たらない。また、現在事件本人らが抗告人らに心の底からなじんでおり、この状態を変更すれば事件本人らの福祉に悪い影響を与えるとの点も、確かに子どもの環境が大きく変化することは一時的には多かれ少なかれ子どもに精神的影響を及ぼすであろうが、相手方が親権者として子を養育監護するにつき欠けるところがないかぎり、それは一時的現象にとどまるべく、子の福祉に回復することのできないような障害を与えるということはできず、抗告人らの右主張は、ひつきよう相手方が親権を正常かつ適正に行使しえないことを前提とするものであつて、採用しがたい。

結局、抗告人らの抗告理由として主張するところはすべて理由がないので、子の監護者指定申立事件については抗告人らの抗告は棄却のほかないが、幼児引渡申立事件については、その引渡を命ずるにつき環境の変化により事件本人らが受ける影響を考慮してその具体的方法につき特段の配慮を施すことが相当であると考えられるところ、原審判がこのために定めた経過措置がその後の日時の経過により実行不能となつたので、家事審判規則第一九条第二項に従い、原審判を取り消したうえ、あらためて事件本人らの引渡しの時期方法につき調整を施すこととする。

事件本人らの引渡しにあたつては、当事者双方は前記趣旨を十分に諒承して、事件本人らの真の幸福のため感情的対立を捨て誠意をもつて協議し実行すること、特に抗告人らがそのために協力的態度をとることが望まれる。その引渡し方法は、前記事情のもとでは、月一度以上の相手方宅に宿泊させることを伴なう相手方及びその妻瑞恵(父及び養母)との面接交渉を少なくとも四回以上持つた上で完全に引き渡し、その後事件本人らが相手方宅が真実の住居であることを自ら納得し自らの意思で相手方に帰宅するようにするため、その引渡のあつた日から二か月以内に少なくとも一度以上抗告人方に宿泊させ、抗告人らと面接交渉をもたせることが相当である。よつて、主文のとおり決定する。
なお相手方が抗告人らに対し本決定において定められた義務の履行を求めるに当つては、相手方において家事審判法第二五条の二、家事審判規則第一四三条の二等の規定により家庭裁判所調査官の関与を求めることが望ましいことを附言する。(裁判長裁判官 中村治朗 裁判官 石川義夫 高木積夫)

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