婚姻破綻後の別居の面会交流
昔は、別居時は、面会交流はできないものと考えられていました。
高松高裁平成4年8月7日判タ809号193ページです。この裁判例は、親の子に対する親権の行使は、親権者の自由な判断に委ねられるべきであり、親権者間に親権の行使につき一致を見ず、対立を生じたとしても親権者間の子の福祉を第一にした自主的解決にまつべき、などとしました。
しかし、父母が話し合いをすることができないのに、話し合いによる自主的解決というのは、理想倒れしている感が否めません。高松高裁は刑事法の分野でもおかしな判決を多く出す裁判所ですが、最決平成12年5月1日民集54巻5号1607ページにより効力はなくなったというべきでしょう。
高松高裁は、面会交流は離婚した後の話だから離婚していない場合は面会交流なんてありません、という論理でした。子どもの福祉をおきざりにした論理重視の「闇夜の穴」ともいうべき裁判例でした。
しかしながら、最高裁は、婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉することは、子の監護の一内容ということができる。そして、別居状態にある父母の間で、面会交流につき協議ができないときは、家庭裁判所は、民法766条を類推適用し、家事審判法9条1項乙類4号【家事事件手続法39条】により、面会交流につき相当な処分を行うことができると解するのが相当である、と判断をしました。
事実上の離婚状態にあるがまだ法律上離婚に至っていない親についても同様に考えられるかどうかについて、これを否定する裁判例もありましたが、民法766条を類推適用して家事審判の対象となると解する見解が多数説となっていました。
平成12年の最高裁決定は、「別居状態にある父母の間で面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法七六六条を類推適用し、家事審判法九条一項乙類四号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができる」と判示しました。
法律の明文の規定はないのですが、家庭裁判所が子との面接交渉について相当な処分を命ずることの可否とその根拠法条が明らかにされました。
婚姻関係が破綻して別居状態にあるが離婚に至っていない父母の間で協議が調わないときに、家庭裁判所が面接交渉について相当な処分を命ずることができる旨を明らかにした初めての最高裁の判例であり、別居中であるから面会交流の審判はできないという抗弁は成り立たなくなったと評価することができます。