こどもの手続代理人の選任が適切な事件

こどもの手続代理人の選任が適切な事件

子の手続代理人と家裁調査官制度が類似の制度として併存しているが、後者が常勤であることから、特段の事情のない限り、こどもの意向や心情についての業務は後者が代行しがちである。もっとも、重要なのは、家裁調査官の意向も無視した判決が出されたり、そもそも面会交流であったりするなどで複数回の調査官関与があり互いの調査官に対する不信感が強い場合が考えられる。日本では、継続性の原則と母子優先の原則などから、基本的には、こどもを連れ去った者に親権が与えられる公算が強い制度である。しかし、正面から連れ去ったもの勝ちとはいえないことから、調査官を入れて表面的な調査をして、まるですべてを見てきたような報告書を作り、こどもの福祉に沿っているというデコレーションをする機関、と云わざるを得ない。現実にハーグ条約施行法では、家裁調査官に出番はないのであって、より能動的関与が求められる場合、家裁調査官はあくまで裁判官の補助者であって、こどもの補助者ではない。以下、もう少し調査官制度の限界を指摘しておこう。

先述のとおり、調査目的による限界がある。我が国では連れ去ったもの勝ちという実態があるものの、それを正面からいうことは美しくないので、家裁調査官に基礎的な資料を収集させて、さも「何もしないこと」に正当性があることを装うのである。例えば、こどもの意向に関しても、パパもママも好きと述べておれば、母親に監護させても、特段の問題はない、ということで継続性追認の意見を補強できる。それゆえ、調査自体、「結論ありき」で行われることから、子の監護状況などの受命事項で、非監護親は調査すらしてもらえないという社会的実態も生じている。基本的には、連れ去った者を擁護するため、もっともらしい資料を収集するのが調査官の役割であるので、紛争当事者からみると中立性も公平性も当然ながら一方に肩入れしたものになってしまう。

この点が、アメリカのメディエーションシステムと異なるところであり、合意のあっせんをするという機能を全く持っていない。また、調査官は、判断権者ではないので心証を開示した調停の試みもできないわけである。

この点、子の手続代理人は、裁判所に所属していないことから、かえって中立的役割を担えるといえる。また、弁護士であることから、審判の経過、得意な弁護士として見通しを踏まえて、和解案の提案などをすることもでき、実質的に公平性や中立性を保持しながら、調停のあっせんができるという特色を有している。

したがって、家裁調査官制度と矛盾するものではないものの、裁判所は調査官資源を優先的に利用したがる傾向にあるだろうが、両者は役割が異なるものであるからこそ、両親としてもこどもの手続代理人の選任に前向きであるべきという姿勢が望まれる。

こどもの手続代理人は、少なくとも継続性の原則、母子優先の原則に続く判断要素として、子の意向というものがあり、この可能性を高め得るものといえる。つまり、こどもの視点からみても連れ去りは、住環境のみならず、学校、友人関係を変化させ、少なくとも自分が何も意見を言えないままに引っ越しを強制され、他の親のところへ連れていかれることは、こどもも納得していないケースもあった。現実に面会交流中の引き揚げ事案の弁護をした際、こどもと面会をした際、勝手に幼稚園を転園させられて、無理やり自動車に乗せられたと訴えたこどももいたが、日本でも明晰なこどもは心理的につらい想いをしている。そこで、こうした反駁は調査官ではできないことであり、こどもの立場に立った意見を述べることができる。

たしかに、忠誠葛藤が強い事案もある。要するにこどもが父母のいずれにつきたいのか、フラフラしているケースである。特に面会交流では、こどもは監護親に遠慮して面会交流は楽しくなかったといった言動をして、監護親に心情に配慮することを余儀なくされている。監護親がそれを真に受けると「子の拒絶」があるという主張になるのである。この点、こどもの手続代理人は、裁判所調査官とは異なり幾度も面会をすることで真意をつかみやすいということで、直接接触する機会が多く、調査面接、試行的面会交流に立ち会う機会もあり、信頼関係の中で、子の言動の変化を継続的に観察ないしはディスカッションをしながら、親権者や面会交流の頻度についての意見などを形成していくというのは理想的と思われる。

こうした観点から、こどもの手続代理人がある程度は「客観的利益」と主張して、こどもの「主観的利益」を代弁し、こどもの意向をいう三軸目を「ダメ押し」から「最初に考慮すべきポイント」に代えていくことすら可能であるといえる。

技術的にこのような場合に、こどもの手続代理人の活用が重要と戦術的にとらえるのではなく、離婚自体はカップルの問題はプライベートだがこどもの問題はパブリックな問題だ、と述べて、公共化を図っていくことも大事だ。日本では、離婚はプライベートの問題であるからこそ、現状追認と母子優先が原則とされていたのである。そして調査官調査は、それらの「結論」を疑似科学の観点から誤魔化す内容にすぎなかった。ところが、子の手続代理人は、子の利益に適う合意による解決を促進するために、こどもの立場からの提案が有益であると思われる事案では、客観的なこどもの最善の利益をベースに、可能な限り主観的意図も取り入れ「子の意向」を裁判所に提出し、親権や面会交流の決定に考慮してもらうべきである。

一例を挙げると、幼児期の子の手続代理人は、養育計画を具体的に提案し、和解・調停へ向けた説得を行うことも期待される。そうだとすれば、監護者と子との間に実質的に考察して利益相反が懸念されるケースでは、全件子の手続代理人を選任することが妥当のように思われる。

もっとも、こどもの意向の主観的な代弁が子の手続代理人の職務であるが、客観的利益との合致を目指すものもおり、究極的には「子の最善の利益」に投影して判断させるのが妥当である。こどもに単に10分、準備された発言を録取する探偵をあてがうのではなく、子に法律の得意な弁護士、子の客観的利益の保証、子の心情を伝えることは、プライベートの領域ではなくパブリックな領域での活動である。子を忠誠葛藤から解放し、できる限り裁判所に、子の意向を尊重してもらうため、能動的な活動が期待される。また、パブリックという観点からは、学校からの行動調査も能動的に行われるべきように考えられる。子の意思は、主張としてのみならず、子からの調査報告書を証拠として提出することも考えられる。

いずれにしても、子の監護に関する事件は、子が成長するまで長期にわたる生活環境の形成に終わるものであるから、審判での解決よりも、当事者の納得を踏まえた調停での和解的解決が望ましい。子の手続代理人としては、子の意思を両当事者ないしその手続代理人に伝えて、和解的調整を向けた交渉を進めることで子の利益を実現することが期待される。

この観点から最後に問題となるのは、手続行為能力である。意思能力と手続行為能力はどのような観点から論じられるかというケースもあるが、現実には9歳での選任例があり、現実では9歳が手続行為能力の最小例といわれている。しかしながら、思うに、子の奪い合いが激しいのは、こどもが3歳から10歳くらいまでの間である。そして、この期間に、子が父母双方から愛着を受けられることが後の人格形成に大きな影響を与える。

したがって、小学校高学年や中学年に限定することなく、調査官調査の対象となる7歳程度の就学児童はその反射として手続行為能力もあるのではないかと考えるべきように思われる。現在は、選任の契機はこどもの希望によるものが最も多く子の意向表面権の保護の観点も意識するためには、選任ができるための教示もシステム化していく必要がある。以上のとおり、子の手続代理人は、子が違憲を表明する機会を保障するだけではなく、その客観的利益の指針を図れるものであるから、親権、面会交流権、養育費に関する問題を解決し、それに充実した納得性を与えるものになると確信される。以上から、非訟の調停・審判では、原則、こどもの手続代理人を選任すべきである。

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