親権・監護権―アメリカの主たる養育者基準
こどもの監護をめぐる父母間の紛争の場合、主たる養育者基準がアメリカで用いられるようになっています。
日本においても,一部の裁判例では主たる監護者基準として参照しているものもみられます。
このアメリカ理論では,主たる養育者が監護権を有するという推定が働くというのが特徴です。
主たる養育者に監護されることにより、一方の親との落ち着いた家庭から幼い子を引き離すことは,子の情緒的成長を阻む要因となる、こどもの心理的ニーズを満たす親が継続して存在することは,子の情緒的成長にとって重要であること,などが論拠とされています。
もっとも,主たる養育者基準というのは、性中立的基準ですが多くは母親にあてはめられる因子が多いことから幼年理論(母子優先の原則)に近いとの指摘がなされています。
そして,本件のように,父母がこどもの世話を平等に分担していた場合を想定し,この場合には推定の効力は及ばない、とされています。
この点,平等で優劣がつかない場合には,親としての能力が比較衡量されるものとされています。
具体的に,アメリカ理論は10のことを挙げています。
1 食事の支度をして、計画を立てる
2 入浴をさせ、身なりを整えさせ着替えをさせる
3 衣服を購入し、洗濯をして手入れをする
4 医療を施す。看病をしたり医者へ連れて行くことも含む。
5 学校が終わった後の遊び仲間との付き合いの手はずを整える。
6 他人、ベビーシッターなど世話を頼む手はずを整える。
7 ベッドに寝かしつけ,様子をみにいく、朝起こす
8 しつけをする、マナー一般を教え、排せつのしつけをする。
9 教育する。社会・文化などの諸側面において教育をする。
10 基本的な技能を身に付けさす。すなわち,読み書き計算を教える。