国際的な子どもの連れ去りが起こった場合のハーグ条約について

 

国際的な子どもの連れ去りが起こった場合のハーグ条約について

 

国際結婚をしていた場合、離婚後に子どもを海外へ連れ去られてしまう可能性があります。

反対に国際離婚ご相談に日本で子どもを育てていると、別れた相手からハーグ条約にもとづいて返還請求されるケースもみられるようになってきました。

 

国際的な子供の連れ去りが発生したときに子どもを守るには、どうすれば良いのでしょうか?

 

今回は国際的な子どもの連れ去りについて定めるハーグ条約やそれにもとづく請求、国境を越えた子どもの連れ去りに遭った場合の対処方法をお伝えします。

 

国際離婚をして子どもを育てている方や相手から取り戻したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

1.ハーグ条約とは

ハーグ条約とは、国境を越えた違法な子どもの連れ去りが起こったとき、子どもを元の居住国へ戻すための条約です。正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」といいます。

 

ハーグ条約は徐々に批准国が増えて日本も2013年5月に批准を承認しています。2019年10月には101か国が批准するに至っています。

 

批准…条約を締結し、受け入れること

 

ハーグ条約では、国際的な子どもの連れ去りがあった場合の対応や国際的な面会交流権などについて定められています。

特に国際的な子どもの連れ去りに対しては厳正な対応が求められており、16歳未満の子どもが連れ去られた場合には原則として「もともと居住していた国」への速やかな返還が行われるように規定されています。

 

1-1.日本におけるハーグ条約の国内実施法

条約を締結した場合、自国内で実施するために法律を定めなければなりません。これを「国内実施法」といいます。日本におけるハーグ条約の国内実施法は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」であり、2014年4月1日に施行されています。

 

1-2.日本における中央当局

ハーグ条約は、子どもの連れ去りなどがあったときに具体的な対応を行うべき機関をもうけるよう各国へ要請しています。その機関を「中央当局」といいます。

 

日本における中央当局は「外務大臣」です。

 

1-3.子どもを取り戻す場所

国際的な子どもの連れ去りが起こった場合、ハーグ条約にもとづいて子どもを取り戻すことができます。取り戻されるべき場所は「子どもがもともと居住していた国」です。子どもが居住していた国を「常居所地国」といいます。

 

ここで、子どもを取り戻せる場所が「子どもを育てている親の居住国」ではない点に注意しなければなりません。たとえば子どもを育てていた親が連れ去り後に出身国に戻るなどして「育てていた国とは別の国に移住した」場合、ハーグ条約にもとづいて子どもを連れ帰れるのは「もともと育てていた移住前の国(現住国とは異なる)」という結果になります。

 

このように子どもを常居所地国へ戻すのは「子どもの監護方法は、子どもが育っていた国の裁判所が判断すべき」という考え方にもとづきます。

 

監護親や親権者が子どもを連れ去られた後に出身国へ戻った場合などには、特に注意しなければなりません。

 

1-4.手続きにかかる期間

ハーグ条約にもとづいて子どもを取り戻すのにかかる期間をみてみましょう。

 

子どもを連れ去られた場合、時間が経過すればするほど子どもに対する悪影響が大きくなります。早期に取り戻すため、ハーグ条約では原則的に「手続き開始から6か月以内に返還の決定が行われるべき」と定められています。

 

日本においても、ハーグ条約にもとづく返還の決定は原則として6か月以内に出るので、かなり迅速に進められる手続きといえるでしょう。

 

その間にさまざまな対応をしなければならないので、ハーグ条約にもとづく事件に対応するには迅速な判断と行動が必要となります。

 

1-5.対象となる子どもの年齢

ハーグ条約で取り戻しの対象となる子どもの年齢は、16歳未満(15歳以下)です。

日本では成人年齢が18歳なので、17歳以下の子どもについても親権者を定める必要がありますが、ハーグ条約にもとづいて取り戻せるのは15歳以下の子どもに限られます。

 

日本の制度とは必ずしも年齢が一致しないので、間違えないように注意しましょう。

 

2.国内実施法の定めについて

以下では日本における国内実施法が定めるハーグ条約の具体的な実施方法のポイントを解説します。

 

2-1.中央当局である外務大臣の権限

国内実施法は日本における中央当局を「外務大臣」と定め、その権限やなすべきことを以下のように認めています。

  • 子どもの返還や面会の支援
  • 子どもの所在地の特定
  • 他のハーグ条約締結国の中央当局との連携
  • 任意返還の促進

 

また子どもの連れ去りがあった場合の返還事件の手続きについて、以下のように定めています。

 

2-2.申立先の裁判所

日本においてハーグ条約にもとづく子どもの返還命令の決定を申し立てる場合、管轄は東京家庭裁判所または大阪家庭裁判所のいずれかです。どちらになるかは、子どもの居住場所によって異なります。

 

全国どこの裁判所でも受け付けてもらえるわけではないので、管轄を間違えないように調べましょう。

 

2-3.子どもの返還が認められる要件

ハーグ条約の国内実施法によって子どもの返還が認められるには、以下の要件を満たしていなければなりません。

子どもが16歳未満である

対象となる子どもの年齢は16歳未満(15歳以下)です。

子どもが日本国内にいる

子どもが現に日本国内で居住していなければなりません。

連れ去りが申立人の監護権を侵害している

連れ去りは申立人の監護権を侵害するものでなければなりません。合法的な方法で日本に連れ帰った場合などにはハーグ条約の取り戻しによる対象にはなりません。

連れ去りがあったとき子どもの常居所地国がハーグ条約を締結していた

子どもの連れ去りが起こった時点において、子どもがもともと居住していた国がハーグ条約を締結していなければなりません。条約批准国でない場合には適用されません。

 

2-4.子どもの返還を拒否できる事由

ハーグ条約にもとづく返還事由が存在する場合でも、一定のケースでは返還を拒否できます。

返還拒絶事由は以下の通りです。

連れ去りがあってから1年以上が経過してから申立が行われ、かつ子どもが新しい環境になじんでいる

子どもが連れ去られてから1年が経過すると、子どもは現住国になじんでいるケースが多いでしょう。その場合、ハーグ条約にもとづく返還請求をしても取り戻せない可能性が極めて高くなります。

 

連れ去りの際、申立人が子どもを監護していなかった

監護権者であっても、子どもの連れ去りの際に実際に監護していなければ子どもを取り戻せない可能性があります。

申立人が連れ去り(子どもの移住)に同意した

監護権者が子どもの移住に同意したら、もはや返還請求は認められません。

常居所地国に子どもを返すと子どもの心身に害悪を及ぼす可能性が高い

たとえば申立人が子どもに暴力を振るうおそれがある場合や、環境的に子どもに悪影響を与える可能性が高い場合などには子どもの返還が認められない可能性が高くなります。

子どもが返還を拒絶している

子どもの年齢がある程度高くなっていると、子ども自身の意思も尊重されます。本人が返還を強く拒絶していれば常居所地国への返還は認められません。

人権や基本的自由の保護に関する原則からして、子どもの返還を認めるべきではない

その他、人権侵害となるおそれがある場合などには子どもは返還されません。

 

ただし返還拒否事由があっても裁判所の裁量によって返還が認められるケースもあります。返還拒否事由は絶対的なものではありません。

 

2-5.調停について

ハーグ条約にもとづく子どもの返還請求が行われた場合、裁判所はその判断により調停に付することができます。つまり当事者同士で話し合って解決するよう手続きを進めるよう促進できるのです。調停で穏便に解決できれば親同士の関係も悪化しにくく子どもにとっても良い影響を与える可能性があるためと考えられます。

 

 

3.返還命令が出ても相手が子どもを返さない場合の強制執行

ハーグ条約にもとづいて子どもの返還命令が出ても、子どもを返さない人は存在します。その場合、以下のような方法で強制的に命令を実現することが可能です。

3-1.間接強制

まずは「間接強制」の方法で返還の実現を目指します。間接強制とは、相手に金銭を払わせることによって間接的に子どもの引き渡しを強制する手続きです。

直接子どもを連れに行くことはできません。

 

3-2.直接強制

間接強制を行っても相手が子どもを引き渡さない場合において、はじめて直接強制が可能となります。直接強制は、裁判所の執行官の助けを借りて子どもを強制的に元の居住国へ戻すための手続きです。

 

このように、国内実施法では「まずは間接強制」、それが奏功しない場合に直接強制、という順序で強制執行を進めなければなりません。いきなり直接強制すると、子どもに対する悪影響が懸念されるためです。

 

強制執行を検討する際には、執行方法の順番を飛ばさないように注意しましょう。

 

3-3.人身保護請求

直接強制でも子どもを取り戻せない場合などには人身保護請求によって子どもの取り戻しを図ることも可能です。

 

4.ハーグ条約にもとづく面会交流事件について

ハーグ条約では、面会交流についても定められています。

日本においても国際的な面会交流の請求は可能です。

ただし子どもの引き渡しのような細かい規定はなく、日本国内に一般的に通用している面会交流調停や審判などの手続きを利用して手続きを進めます。

管轄についても、東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所だけではなく子どもが居住する場所の家庭裁判所に管轄権が認められます。

 

 

5.ハーグ条約にもとづく請求で弁護士が必要な理由

ハーグ条約にもとづいて子どもを取り戻したい場合には、必ず早期に弁護士へ依頼しましょう。以下で弁護士が必要な理由をお伝えします。

 

5-1.手続きが複雑で難しい

ハーグ条約にもとづく請求には国内実施法が適用されます。ここでは一般的な子どもの取り戻しの手続きとは異なる対応をとらねばなりません。非常に複雑で専門的な対応を要求されるので、専門知識とスキルをもった弁護士の助けが必要となるでしょう。

5-2.迅速な対応が必要

ハーグ条約にもとづく請求をするには、原則として「1年以内」に申立をしなければなりません。また手続きは原則的に6か月以内に終わります。

非常に迅速な対応が必要となり、素人対応で迷っている時間はありません。早急に動ける弁護士に任せる必要があります。

 

6.子どもの問題に取り組んでいる弁護士を

子どもの取り戻しや面会の手続きを依頼する場合、どの弁護士でも良いわけではありません。子どもの問題はデリケートで専門的なので、特に子どもに高い関心をもって積極的に取り組んでいる弁護士を選びましょう。

 

名古屋駅ヒラソル法律事務所の弁護士はかねてから離婚にともなう子どもの問題に非常に関心をもっており、数多くの案件を解決してきました。ハーグ条約について知りたい方や具体的に手続きをとりたい方は、お早めにご相談ください。

依頼者様の想いを受け止め、
全力で取り組み、
問題解決へ導きます。

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