人身保護請求の拘束者側で勝訴しました。
第三者を監護権者に指定することができるか、という論点と密接に関わるこの論点ですが、法理論上は置いておいて、第三者が監護しているこどもにつき親権者が人身保護請求をした事例で第三者側の代理人に就き勝訴しました。
人身保護請求とは
人身保護請求というのは刑事法の一種です。したがって、家事事件では第三者といっても親戚などですから極端かつ一方的な審理が予定される人身保護請求にそもそも向かないのではないかと考えられています。
この点、家庭裁判所では、審判事項にあたるという見解とあたらないという見解があるそうです。子の監護者指定・引渡しは当事務所では多くを扱っているので、子の引渡しが審判事項ではない、という点について考えてみました。
この点、東京高裁平成20年1月30日決定が事実上の指導的判例となり、「第三者(祖父母)を相手方とする子の引渡しの申立ては家事審判事項にならない」と判断をしています。 このため、家庭裁判所の資源を利用することが難しい事例といえるでしょう。 しかしながら、関西地方では、上記東京高裁決定に反して、従前の家裁実務の運用に反するとの批判が強く、子の福祉を重視する見地から子の監護に関する処分に該当するという見解があります。 このケースですが、ある教科書では、家裁に監護者指定の申立及び子の引渡しの審判を申し立てるべき、との見解が記載されています。もっとも、名古屋家裁の運用としては、東京高裁平成20年1月30日決定に従っている可能性が高く、審判で申し立てても「審判事項」に制限のない調停事項として調停で話し合われる限度でしか取り扱わず、不成立の段階で家裁の関与は終了するというやや無責任な対応をとっているようです。
人身保護請求は、私が扱ったのは2例目となりましたが、充実した国選弁護士の調査が期待できるという点がフェアな点で、結論ありきの調査官調査とは異なるところです。今回の人身保護請求でも、家裁は調査官調査の信用性に触れることはありませんでしたが、今回は国選弁護士の調査の信用性に触れており裁判所で再検討していることがわかりますが、裁判所の附属機関だからといって法曹資格者でもない調査官ないし調査官補の調査が無条件に信用できるというのは妥当ではない、というのは国選弁護士やこどもの手続代理人の調査報告書を読み続けていくとその集積からおのずと分かるところといえるかもしれません。
人身保護請求は、規範が非常に厳しいものであるため、厳しい争いとなりましたが、「被拘束者を監護者である請求者の監護の下に置くことが拘束者の監護の下に置くことに比べて被拘束者の幸福の観点から著しく不当」に該当するという珍しいケースとなりました。
公開弁論で行われたものではありますが、第三者を監護権者に指定する論拠ともなり得る事例と考えて紹介することにしました。
国選弁護士の丁寧な調査に敬意をあらわすとともに、その調査報告書に基づいての1日ほど前の報告書による尋問準備が結論を分けるなど劇的な展開だったのではないかと個人的には位置づけているところです。