服部弁護士が養育費に詳しい弁護士として共同通信でコメントしました。
令和7年8月7日付の共同通信配信の養育費の記事についてコメントいたしました。
なお、弁護士は記事の具体的内容は尋ねられず、養育費制度について質問され、それに対するインタビューに応じたものです。
弁護士の養育費に関する見解はこちらにまとめられていますのでごらんください。
拙稿「新しい養育費制度をめぐって」
https://rikonweb.com/column/child-support/7015
なお、一部補足いたしますと、私が言うアメリカの内国歳入庁への「情報開示」は行政間の限定的連携と執行協力であって、私人への生データ提供を相手方個人に渡すというではありません。比較の仕方についてご議論があるようですが、誤謬はありません。日本でも限定目的・限定主体・最小限データでの行政連携を整えれば、所在・所得の“発見”段階が大きく改善し、子の利益に資する実効的な履行が可能です。今回の新しい養育費制度では、所在の発見に関する改正が将来の残された課題とされています。なお、アメリカの制度は、連邦・州連携のものにつき、親権形態ではなくIV-D執行の登録がポイントとなっており、単独監護でも作動する制度です。なお、私のコメントの意図は、なぜアメリカでは7割も養育費が支払われているのかという学術的観点からコメントしました。その実効性の高さのポイントに内国歳入庁にアクセスできる点が大きいという事実は否定できないと思われます。
つまり、私が示した比較は、制度全体の優劣を論じたものではなく、発見→算定→執行のうち、とくに発見(所在・所得)段階の“税情報の行政間利用”に限定しています。そして、「発見」の部分に関する公式な法制度は日本ではかなり限られています。(弁護士が調べても2~3か月くらいかかるうえ、分からない場合があります。)
この点は親権が単独か共同かと無関係に評価できることです。米国はIV-Dに載った時点で税還付オフセット・給与天引き・パスポート拒否など行政連携が作動し、情報は私人ではなく公機関間で連携されます。日本は行政間連携に税務署が関与せず、守秘法制により恒常ルートが未整備です。この点は、「発見」の法未整備は、法制審議会でも議論されたことですので、議事録をご確認ください。この点、事実誤認をなされている方がいます。
本記事には、末冨芳日本大学教授(教育政策・こども政策)も私のコメントに賛意を示すオピニオンを示されています。
日本の養育費支払い率は3割弱と低く、先進国最悪の母子世帯貧困の要因のひとつです。民法改正によっても逃げた父親の給与財産を差し押さえる先取特権の行使が難しい状況は記事の指摘の通りです。 マイナンバーを活用し、税務署も協力して居所不明の父親から養育費を確保する仕組みの整備が急がれます。 例えば韓国では養育費未払いの親には罰金や運転免許証失効、出国禁止措置などの罰則が設けられています。罰則導入も日本では立ち遅れており、共同親権を導入した法務省の怠慢と言われても仕方ない状況があります。 国の定める法定養育費も、子どもの成長を支えるためには安すぎ、特に病気や障害を持つ子どもたちの生存権保障のためにはまったく不足しています。 我が国の法制上、子どもを育てる責任は第一義的には親にあります。責任を果たさず逃げ回る親に責任を果たさせるために、法務省は全力を尽くすべきではないでしょうか。
末冨芳日本大学教授(教育政策・こども政策)の見解に敬意を表します。韓国での制度(免許やパスポート)なども取り上げられています。また、現在、法学の最前線は今後、民事執行法のような刑事罰導入に関する論文も公表されています。批判をすることには、学術的展開や知見を踏まえる必要があるでしょう。
私も末冨芳日本大学教授に同感であり、ショート・ストーリーはありますが、制度構築として、今回は「発見」に関するプロセスが見送られており、共同通信の記事では上手く表現されておりませんが、制度構築として発展が進むことを望みます。
