服部勇人弁護士が、こどもアドボガシー学会基礎講座を修了しました。
平素より名古屋駅ヒラソル法律事務所をご愛顧いただきありがとうございます。
今般、弊所に所属しております服部勇人弁護士が、「こどもアドボガシー学会」(会長堀正嗣)から2024年8月、基礎講座修了の認定を受けました。
こどもアドボガシーとは、児童福祉法のこどもの手続参加権の援助者などとして知られ、こどもが話したいことを自ら話せるように支援したり、必要な場合には、こどもの依頼又は承諾を得て、こどもの想いや意見などの声なき声をこどもに代わって表明する。
そして、こどもの側に立って、こどもがそうできるように働きかけたり、支援する人をこどもアドボケイトと呼ばれています。
こどもアドボガシーの任務は、こどもともに声をあげることです。筑紫哲也さんの「NEWS23」のテーマソングに「put your hands up」(坂本龍一)という楽曲がありました。
困った時に一緒に手を上げる大人です。こどもをエンパワーし、こども自身の意見や願いを自由に表明できるようになるためにこどもと協働します。こどもが自ら声を上げることが難しい時には、こどものニーズを意思決定者に対して代弁します。こどもの意思形成権や意見表明権を出発点に、こどもの権利条約のコア部分といえるこどもの手続参加権を促進し、こどもの権利が守られるように働きかけるというものです。アドボガシーの担い手をアドボケイトといいます。
こどもの権利条約では、様々な権利がありますが重要なのは、「デュー・プロセス」、手続参加権です。2006年障碍者の権利に関する条約採択時のスローガン、「私たちのことを抜きで決めないで」(Nothing about us without us)は、こどもアドボガシーのアングロサクソン法における基本原則である「Having a voice,No chice」にも通ずるものです。
こどもの声を聴くアドボガシーは、4つあります。一つは専門職であり典型的なものは児童相談所の職員や家裁調査官です。彼らは公権力と利害関係があり絶対的公平はありません(フォーマル・アドボガシー)。二つ目は似た痛みを持つ当事者によるピアアドボガシー、三つ目は親や養育者や地域の人などによるインフォーマルアドボガシー、四つ目は弁護士のように経済的に独立してこどもと接する者たちは独立アドボガシーと言われます。最終的には、こどもの「put your hands up」を促進します。こどもたちが声をあげること自身をセルフ・アドボガシーといいます。
児童相談所は比較的様々なアドボガシーが活躍している一方で、家裁では、フォーマルアドボガシーとインフォーマルアドボガシー(親)の二項対立となりますが、弁護士もこどもの専門家としての研鑽を強めていくべきです。とりわけ、名古屋市の児童相談所が行っている野心的取り組みであるこどものケース会議への参加は、全国のみならず裁判所津々浦々に広めていくべきものでしょう。
2024年4月にこどもを取り巻く社会情勢は大きく変わりました。
児童福祉法が改正され、社会的養育のこどもの意見の尊重をより確かなものにしていくために、①児童相談所や児童福祉施設における意見聴取等、②意見表明支援事業、③こどもの権利擁護に係る環境整備が規定されたのです。
児童福祉法とはいえ、こどものための法律で、こどもの声を尊重するための取り決めがここまで規定されたのは、極めて歓迎すべきことであり、全ての裁判所もまた、児童福祉法の理念に従うべきものと考えます。かように、こどもの進退に関わる事柄では、自由に独立アドボガシーに助力を依頼することを可能として、もってこどもの意見表明権、権利全般の保障をより確かなことにしていく日本にしていく必要があるものと考えます。
これまで、こどもの意見は、父母の都合のもとにかき消されてきた声ですが、声なき声に耳を傾け、手続参加をさせることこそ、こどもの権利が保障された自由・民主・平等・博愛の市民社会といえるものと考えます。
ノルウェイの実践である、こどものために大人たちが集まる「ファミリー・グループ・カンファレンス」のようなこどもを中心に大人が気づきを得るような実践を日本も取り入れていくものと思われます。
参考文献
著書 末冨棚芳ほか「こども若者の権利とこども基本法」(明石書店、2023年)
著書 マリー・コノリー=高橋重宏「ファミリーグループカンファレンス」(有斐閣、2005年)
論文 佐藤桃子「北欧におけるファミリー・グループ・カンファレンスの特徴と展開」(島根大学学術情報リポジトリ)
YouTube ファミリー・グループ・カンファレンス(日本語字幕)
<こどもアドボガシー学会事務局>
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