再婚

再婚するにあたっての遺産分割

持ち戻し免除の意思の推定

シュシュ:今回の相続法の改正は、結局、妻の地位に関わるから婚姻法に関わるということで結婚をテーマにしているこのサイトでも論題にしないといけなくなってしまったね。

弁護士:今回の改正は、最高裁平成25年9月4日により、配偶者保護が立法目的で意識されるところが多かったんだけど、その後も判例変更が続き、いわゆる預貯金の遺産分割に関する最高裁平成28年12月19日も影響を与えて、その内容が二転三転するようになったんだ。

シュシュ:非嫡出子、要するに婚外子の相続分を差別が、ようやく憲法14条に違反するものとされたんだよね。

弁護士:現在の裁判官は、保守派が多いのですが、小泉政権や民主党政権時代の裁判官が、別論点で、事実上違憲を宣言するような判決を出してきました(国籍法非嫡出子差別違憲事件)ので、タイミングだったのでしょうね。

シュシュ:叔父さんは、この非嫡出子の問題の尾崎裁判官の追加反対意見を読んで法曹になろうと思ったんだよね。

弁護士:そうですね。シュシュとはアウシュビッツや911のグラウンドゼロにもいったけど、法曹の原点はやはり尾崎裁判官追加反対意見だと思うのです。

シュシュ:紹介しておきますね。「裁判官尾崎行信の追加反対意見は、次のとおりである。
 本件規定が違憲とされる理由は反対意見に示されているが、私は、次の観点を加えれば、その違憲性はより明らかになると考える。
 1 法の下の平等は、民主主義社会の根幹を成すものであって、最大限尊重されなければならず、合理的理由のない差別は憲法上禁止されている(憲法一四条一項)。本件規定は、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の法定相続分の二分の一と定め、嫡出子と非嫡出子との間に差別を設けているが、右差別が憲法一四条一項の許容する合理的なものであるといえるかどうかは、単なる合理性の存否によって判断されるべきではなく、立法目的自体の合理性及びその手段との実質的関連性についてより強い合理性の存否が検討されるべきであることは、反対意見に示されているとおりである。右検討に当たっては、立法目的自体の合理性ないし必要性の程度、差別により制限される権利ないし法的価値の性質、内容、程度を十分に考慮し、その両者の間に実質的関連性があるかどうかを判断すべきである。
 2 憲法は婚姻について定めているが、いかなるものを婚姻と認めるかについては何ら定めるところはない。あり得る諸形態の中から、民法が法律婚主義を選択したのは合理的と認めるが、法律婚に関連する諸要素のうちにも立法目的からみて必要不可欠なものとそうでないものとが区別される。必要性の高いもののためには、他の憲法上の価値を制限することが許される場合もあり、重婚の禁止はその例である。しかし、必要性の低いものについては、他の価値が優先するべきで、これを制限することは許されない。
 本件規定は無遺言の場合に相続財産をいかに分配するかを定めるための補充規定である。人が、その人生の成果である財産を、死後自らの選択に従って配偶者や子供など愛情の対象者に残したいと願うのは、極めて自然な感情である。民法も、本人の意思を尊重して、相続財産の分配を被相続人の任意にゆだねている(遺留分は別個の立法目的から定められたものであるからしばらくおく。)。この点をみれば、民法は相続財産の配分について法律婚主義の観点から一定の方向付けをする必要を認めなかったと知ることができる。相続財産をだれにどのような割合で分配するかは、法律婚や婚姻家族の保護に関係はあるであろうが、それらのために必要不可欠なものではない。もし民法が必要と考えれば、当然これに関する強行規定を設けたであろう。要するに、本件規定が補充規定であること自体、法律婚や婚姻家族の尊重・保護の目的と相続分の定めとは直接的な関係がないことを物語っている。嫡出子と非嫡出子間の差別は、本件規定の立法目的からして、必要であるとすることは難しいし、仮にあったとしてもその程度は極めて小さいというべきである。
 3 本件規定の定める差別がいかなる結果を招いているかをも考慮すべきである。双方ともある人の子である事実に差異がないのに、法律は、一方は他方の半分の権利しかないと明言する。その理由は、法律婚関係にない男女の間に生まれたことだけである。非嫡出子は、古くから劣位者として扱われてきたが、法律婚が制度として採用されると、非嫡出子は一層日陰者とみなされ白眼視されるに至った。現実に就学、就職や結婚などで許し難い差別的取扱いを受けている例がしばしば報じられている。本件規定の本来の立法目的が、かかる不当な結果に向けられたものでないことはもちろんであるけれども、依然我が国においては、非嫡出子を劣位者であるとみなす感情が強い。本件規定は、この風潮に追随しているとも、またその理由付けとして利用されているともみられるのである。
 こうした差別的風潮が、非嫡出子の人格形成に多大の影響を与えることは明白である。我々の目指す社会は、人が個人として尊重され、自己決定権に基づき人格の完成に努力し、その持てる才能を最大限に発揮できる社会である。人格形成の途上にある幼年のころから、半人前の人間である、社会の日陰者であるとして取り扱われていれば、果たして円満な人格が形成されるであろうか。少なくとも、そのための大きな阻害要因となることは疑いを入れない。こうした社会の負の要因を取り除くため常に努力しなければ、よりよい社会の達成は望むべくもない。憲法が個人の尊重を唱え、法の下の平等を定めながら、非嫡出子の精神的成長に悪影響を及ぼす差別的処遇を助長し、その正当化の一因となり得る本件規定を存続させることは、余りにも大きい矛盾である。
 本件規定が法律婚や婚姻家族を守ろうとして設定した差別手段に多少の利点が認められるとしても、その結果もたらされるものは、人の精神生活の阻害である。このような現代社会の基本的で重要な利益を損なってまで保護に値するものとは認められない。民法自体が公益性の少ない事項で当事者の任意処分に任せてよいとの立場を明らかにしていることを想起すれば、この結論に達せざるを得ないのである。
 4 婚姻家族の相続財産に対する利害関係は、非嫡出子のそれと比べて大きいといわれる。普通、嫡出家族の方が長い共同生活を営んでいるから情愛もより深く、遺産形成にもより大きく協力しているから、相続分もより大きいのは当然とされる。それぞれの家族関係は千差万別で、右のような一般論で割り切り、その結果他人の基本的な権利を侵害してよいかは、甚だ疑問である。あえていえば、非嫡出関係が生じる場合には、一般論の例外的な場合に当たることもあろう。しかし、仮にこの一般論に譲歩して婚姻家族の相続分をより大きくしようとすれば、他人の基本的な権利に抵触することなく、かつ憲法上の疑義を生じさせるまでもなく、その目的を達成する手段が存在する。つまり、遺言制度を活用すれば足りるのである。
 もともと遺産の処分は、被相続人の意思にゆだねられているのであって、遺族の期待に反する処理がされても何人も異議を差し挟み得ない。それは生前処分の場合でも遺言による場合でも異ならない。被相続人の意思が何であるか、親族関係が真にその名に値する愛情によって結ばれていたかが帰結を決定するのである。これが本来の遺産相続の在り方であって、無遺言の場合の法定相続分の定めは全くの便法にすぎない。基本的人権に対する配慮が希薄であった立法当時には、本件規定は深く疑問を抱かれることもなく受容されていた。本件規定が非嫡出子を不当に差別するものであり、その差別により生ずる侵害の深刻さを直視するならば、そして他方、得ようとする利益は公益上のものでなく、当事者の意思次第で容易に左右できる性質のものであることに思いを致せば、非嫡出子のハンディキャップを増大させる一因となっている本件規定の有効性を否定するほかない。
 五 我々が目指す民主主義社会にとって法の下の平等はその根幹を成す重要なものであるが、本件規定の立法目的には合理性も必要性もほとんどない上、結果する犠牲は重大である。しかも、本件規定がなくとも具体的事情に適した結果に達する方途は存在する。本件規定の立法目的と非嫡出子の差別との間には到底実質的関連性を認めることはできない。いわば無用な犠牲を強いる本件規定は、憲法に違反するものというべきである。」

弁護士:大学で、尾崎行信裁判官追加反対意見を読むまで、法曹で形而上学的なものと思っていましたけど、人間の血が通っているというのは、こういうものをいうのだなと思いました。大学院の学友にも、自分はこういう弁護をしたいのだ、と語り合ったこともありました。とても人権尊重に重点を置いた大切な追加反対意見なのです。本件規定が法律婚や婚姻家族を守ろうとして設定した差別手段に多少の利点が認められるとしても、その結果もたらされるものは、人の精神生活の阻害である。このような現代社会の基本的で重要な利益を損なってまで保護に値するものとは認められない、と峻烈に指摘できる裁判官や弁護士が世の中にどれくらいいるのかと思うのです。

シュシュ:叔父さんは利益衡量が過ぎるから、芦部先生の本にそう書いてあるから、ということで、配偶者の権利保障では一定の合理性はあるというのです。そんなことはフランスやドイツでは極めて明らかです。日本は平成25年まで時間を要したことを恥ずるべきです。相続分を差別するよりも、もっとより制限的ではない他の選び得る手段があることは明らかだったことが、この改正で明晰に明らかになったといえると思います。

弁護士:さて、非嫡出子を差別していた根拠は、配偶者保護にあったんだけど、配偶者相続分の引き上げには反対的な意見を多く寄せられました。今はいかに下の世代におろすかがテーマなのに、一次相続を助長するような内容は時代に合っていないのでしょうね。

シュシュ:相続税法の方が配偶者保護をしているじゃない。税理士としても稼働し始めた叔父さん税理士(笑)。

弁護士:そうだね。男性の方が早く死亡するケースが多いから、婚姻期間が20年を超える夫婦の間で居住用不動産の贈与、あるいは、購入資金の贈与があった場合には、基礎控除の110万円をのぞいて2000蔓延までは課税控除を認める特例を認めているんだ。税法の方が民法より進んでいるよね。

シュシュ:問題なのは、妻に対して居住用不動産を贈与する場合において、課税控除の特例を意識することがあっても贈与とする意識はないことだろうね。

弁護士:うん。弁護士が関与して遺言書を作成しているのなら別ですけど、司法書士や行政書士ではそこまで知らないですから、明確に持ち戻しの免除の意思表示があるというのはうちの事務所が関与しているものは除いては少ないね。

シュシュ:そもそも、黙示には、持ち戻し免除の意思表示をしているよね。現実に持ち戻しをされては、多くの場合、生前贈与の意義はなくなっちゃうよね。

弁護士:そこで婚姻期間が20年以上の夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に居住用不動産を遺贈・贈与があったものと推定する規定を置くことが提案され立法化されることになったね。

シュシュ:法律要件は?

弁護士:うん。相続税法の影響も受けているのだろうけど、

①婚姻期間が20年以上の夫婦の間で

②居住用の土地・建物の遺贈・贈与を行ったとき

―なのだけど税法の要件に近いよね。このときに持ち戻し免除が意思表示の推定が働く要件とほぼ同じか、包含関係にあると解されると思うね。

 

 

 

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