再婚

もし再婚しこどもが生まれた場合養育費は減額できますか。

 離婚にあたり養育費を決めても、その後に事情変更が生じたときは、養育費の金額を増減することが可能です。再婚して、新たにこどもができることは、事情変更に該当すると思われます。

養育費について

 離婚すると、元夫婦は別れてくらすことになりますから、多くは元夫婦の一方がこどもを引き取り、もう一方はこどもと別れて暮らします。しかし法律上は同居の有無にかかわらず、こどもに対して扶養義務を負っていますので、非監護親は監護親に養育費を支払うことになります。

 その終期ですが、今後、こどもの「成人」が20歳から18歳とされたことに伴い、幼年期の離婚の場合、20歳までとされていた取り決めに変動が生じるかが注目されます。他方、近時は両親が4年生大学を卒業している場合は、22歳を超える最初の3月まで養育費を支払うことがめずらしくありません。今後、「未成熟子」の定義をめぐる問題が生じると思いますが、法律上の「成人」と民法の「未成熟子」は定義が異なりますので、今後は、以下のような場合分けが進むのではないでしょうか。

①20歳を目安とする根拠は失われる。

②10歳くらいまでのこどもの終期は18歳までとされる可能性が高い

③大学や専門学校進学の可能性が高いと判断材料がある16歳くらいまでは20歳とされる可能性が高い。

④大学や専門学校の進学がほぼ確定的に分かる17~19歳までの話しについては、20歳や22歳を超える最初の3月までとされる蓋然性がある。

⑤18歳までと終期を定めても、事情変更が認められやすくなる

―というようなことが推測されます。

養育費の決め方

 養育費については、算定表を目安に決めており、協議離婚の際においても参照されている例が多いと思います。他方、日弁連が新算定表を公表したり、最高裁が新たな算定表を作成する司法研究を行ったりしており、加算調整材料があるときは1~3万円程度上乗せされる場合もあるかと思います。

 なお、養育費については、再婚し養子縁組がなされた場合、非監護親は支払いを免除されるという考え方が有力になっています。論理的には、親が3名いることを前提に養育費を割り付けることができることもありますが、裁判所の運用は免除とするところも有力のようです。

 なお、主に父親としては、養育費を支払うことがこどもに対する唯一の愛情表現などと指摘されることがありますが、通常、愛情表現は「カネを出すこと」ではなく、むしろ感情的交流をすることによって、積み重ねられるもので、そこに養育費の問題も出てくるという問題にすぎず、カネを出していれば愛情表現になるという考え方は社会的相当性に欠けると思います。

養育費を決めた後の再婚での生活環境の変化が事情変更

 養育費を決めた後に再婚して生活環境が変わることは事情変更に該当します。

パースペクティブ

シュシュ:東京家裁平成2年3月6日は、もともと、終期23歳、離婚後3年間は20万円、3年後は30万円とする公正証書の合意をした内容だね。

弁護士:審判では、父母双方が再婚し、3人のこどもは母の再婚相手と養子縁組をしています。

シュシュ:この審判では事情変更を認めて、養育費を21万円に減額して、養育費の支払いの終期を成人到達の時までとして、義父は臨時の出費を負担すれば良いとしたものだね。

弁護士:そうですね。東京では、昔は事情変更があっても生来の父は、親が3名になるという認識のもとで生活費を割り付ける裁判所が多かったのでこのような審判になったと思います。

シュシュ:今は違うの?

弁護士:もともと名古屋家庭裁判所では、養親に養子縁組された場合は支払いを免除される運用でしたので減額というのは、非監護親に厳しい判断だと思います。この影響もあってか、最近、東京家裁も、養子縁組後は、支払い免除の裁判所が多くなっています。

シュシュ:どうして運用が変わってきているの?

弁護士:そもそも、養子縁組をするということは、養親の嫡出子となり実子との間にも法的には何の差別もないのです。だから、養子をしたのであれば、第一次的扶養義務は同居の養親が負うのが当然で、非監護親は第二次的扶養義務を負うのに過ぎない、と解されています。なので、支払いを免除する審判の方は最近は多くなっていますね。

シュシュ:そのほか、考慮される事情はある?

弁護士:そうですね。やはり、再婚相手と養子縁組の事実を知りながら、当初の合意通り養育費を支払い続けた場合は、状況を安定させるために支払い免除とならない可能性があります。したがって、そういう事情を知った場合はしっかりさせたい場合は離婚弁護士に相談することが必要ですね。

シュシュ:しっかりさせたいというのは?

弁護士:基本的に公正証書や調停で決まった養育費は、調停を起こさないと変えられません。また、強制執行の可能性もあるので、話し合いではなく債務名義を変更しておく必要があるのです。しかし、相手を信頼したり、事実上支払わなくても良いというだけで済ます社会的実態もあります。ご相談に来られる方は、再婚するにあたり、前妻との関係につき、後妻に誠実に対応するため法的手続きをとられる方が多いので、デュー・プロセスの観点から、養育費減額調停を申し立てることが多いですね。また、単に収入が減っただけなので、という場合は事情変更に当たらない可能性もあるので、当事者間で対応することが妥当な場合もあります。

シュシュ:成人が20歳から18歳になることについてはどうかな。

弁護士:感覚的な問題だけど、名古屋市は大学進学率が高くありませんから就労している場合は18歳までとされる可能性があります。また、人事訴訟は18歳までとされ、その後は家事事件手続法の扶養請求で対応して欲しいとされるでしょう。

シュシュ:養育費の終期を18歳から22歳に延長することは認められるのかな。

弁護士:こどもが大学に進学するからといって、養育費の支払いの終期を18歳から22歳に延長するだけの事情変更にあたらないとしたものもあります。これは大阪高裁平成19年11月9日ですね。

シュシュ:この判例は、事情変更を知らないで養育費を支払い続けた非監護親に対して、大学進学などを理由に、再婚し養子縁組をして事情変更事情を非監護親に伝達していなかった監護親の事情変更の主張を認めなかった事例ということができるね。

こうした問題もありますので、今後とも、調停や話し合いで幼児の場合は原則20歳まで、として、安易に18歳までとする取り決めよりも18歳で就労した場合は、養育費を支払わないとするような決め方が主流になるかもしれません。

簡単に養育費の終期を変える事情変更は認められない

大阪高裁平成19年11月9日

第2 当裁判所の判断
 1 事実関係
 (1)記録によれば,原審判1頁24行目から3頁12行目までの事実が認められる。
 (2)記録(当審分を含む。)によれば,更に,次の事実も認められる。
   ア 抗告人は,平成9年×月×日,相手方がDと再婚したことに伴い,未成年者も同人と養子縁組をしたことを知り,その後も,「抗告人は,相手方に対し,未成年者が18歳に達する月まで,その養育費として月額5万円を支払う。」旨の相手方との協議離婚時の合意(以下「本件合意」という。)に従い,平成19年2月まで毎月5万円を支払い続けたが(このうち,未成年者の養子縁組から養父の死亡時までの間の支払分は相当額に達している。),上記養子縁組の事実をもって本件合意により定められた抗告人の養育費分担義務を変更すべき事情として問題を提起することをしなかった。
   イ また,抗告人は,平成9年×月×日に再婚し,妻との間に,同年×月×日長男を,平成12年×月×日長女を,それぞれもうけたが,これらの事情についても,本件合意に定められた養育費分担額の減額事情として問題を提起することはなかった。
 2 上記の事実関係に基づき,相手方の原申立ての当否を検討する。
 (1)当事者の合意によって養育費の分担額や分担期間を定めた場合も,その後,事情変更が生じて,従来の養育費の定めが実情に適さなくなった場合には,これを変更することができると解される。
    したがって,本件において,相手方が,本件合意による養育費分担の終期(未成年者が18歳に達する月,すなわち,平成19年2月まで)以降も,更に抗告人に対し,養育費の分担を求めるためには,上記合意による終期の定めを維持することが,その実情に照らして相当でないと認め得るような事情変更があることを要する。
 (2)ところで,上記認定事実によれば,本件合意後,未成年者と相手方の再婚相手との養子縁組,抗告人の再婚及び子の誕生という本件合意に定められた養育費の分担義務を減免させるような事情変更が生じたが,これらについては,当事者間において一切考慮されず,その結果,抗告人は,相手方に対し,本件合意どおりの養育費分担額を支払い続けたものである。
    このような本件合意後の経緯に照らせば,未成年者の大学入学やその準備に費用を要することをもって,本件合意による養育費分担義務の終期の定めの延長を認めるべき事情変更があったとみることは相当でない。
 (3)そうすると,抗告人は,本件合意に従った養育費分担義務をすべて履行しており,平成19年3月以降も,抗告人に未成年者の養育費分担義務を認めることはできないから,相手方の本件申立てを却下するのが相当である。
    以上を指摘するものと解される抗告人の主張は理由があるものというべきである。
 3 以上の次第で,本件抗告は理由があるから,家事審判規則19条2項に従い,これと異なる原審判を取り消し,上記説示に沿った審判に代わる裁判をすることとして,主文のとおり決定する。

 

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