熟年離婚したい方へ

熟年離婚に踏み切る要因は人それぞれありますが、「第二の人生を楽しみたい」という思いを持っている方も多いのではないでしょうか。本当は夫婦関係は冷めきっていたのに、様々な事情があって離婚を思いとどまっている方が多くいらっしゃいます。ですが、熟年離婚の場合、一方が離婚を望んでも、他方が離婚を望まないケースが多いです。
熟年離婚の場合、長年にわたり夫婦で築いてきた財産の他、退職金や年金分割など、離婚後の生活設計に欠かせないお金が絡む問題が多くなります。また、離婚を切り出された方は、大変なことも色々あったが何とかやってきたのに、なぜ今更離婚する必要があるのか、と取り合ってもらえないこともあります。実際、長年の生活スタイルや環境を年老いてから変更するのは精神的にとても負担が大きいことです。

熟年離婚の注意点

50代、60代以上で退職金支給が迫っているケースで、離婚を検討されている方、婚姻年数が20年を超えている方などはぜひ参考にしてみてください。

1. 熟年離婚とは

「熟年離婚」とは「長年連れ添った夫婦の離婚」を意味します。
具体的にどのくらいの年代、婚姻年数の場合の離婚を意味するのでしょうか?
熟年離婚は法律用語ではないので、正確な定義はありません。一般的に以下のような場合「熟年離婚」というケースが多いでしょう。

1)婚姻年数が20年以上
2)夫婦の年齢が50代以上

熟年離婚の場合、若い夫婦の離婚とは異なる問題が発生するケースが多いので、知識を持って慎重に対応していきましょう。

1-1.熟年離婚の原因

熟年離婚でよくある原因は以下のようなものです。
1)夫の定年退職をきっかけに離婚したい
2)子どもが成人したから離婚したい
3)定年後は自分の好きなように生きたい
4)他に再婚したい人がいる
子どもがいるなどの事情で長年我慢していたけれど、退職をきっかけに離婚を決意する方が多数となっています。
退職後10年以上が経過して70代になってから離婚を考え始める方も少なくありません。ただし、この場合、退職金は給付済みであるため、賢明な選択とはいえません。

1-2.熟年離婚が増加している理由

近年の社会情勢や意識の変化が熟年離婚の増加に影響していると考えられます。
昔は離婚がタブー視される傾向がありましたし、高齢の女性が1人で生きていくのは困難でした。
しかし今は離婚が珍しいことではなくなっており、自立した女性も増加しています。行政による支援制度も充実しており、平成19年には「年金分割」の制度も導入されました。
今は熟年離婚を検討される方が珍しくありません。長年連れ添った相手であっても一緒に暮らすのが苦痛であれば、我慢する必要はないでしょう。

2.熟年離婚のメリット

熟年離婚には以下のようなメリットがあります。

2-1.相手に縛られず自由に生きられる

もっとも大きなメリットは、相手に縛られずに自由に生きられることでしょう。
たとえば専業主婦だった方は経済力がないため、夫から高圧的な態度で接されたり理不尽な要求をされたりしたご経験も多いのではないでしょうか?
本当は仕事をしたかったけれど子どもがいるのでできなかった、趣味に没頭したかったけれど家事や相手の世話があるのでできなかった方もおられるでしょう。また、こどもも多くなっているため、交流が維持できるケースも少なくないと思います。
離婚すれば家事は自分ひとりの分だけでよいですし、相手に命令されたり束縛されたりすることもありません。自分の好きなように人生の貴重な時間を過ごせます。

2-2.DVや不倫などの問題から解放される

熟年離婚を検討される方の中には、長年相手の不倫問題やDV、モラハラに苦しんできたケースが相当数おられます。
子どもがいるから不倫されても目をつぶっていた、自分さえ我慢していればよいと思って耐えてきた方も少なくありません。
本来なら、相手に不倫やDVなどの問題があるなら早期に離婚できたはずです。
機会を失って年数が経過してしまったとしても、今から熟年離婚すれば人生を取り戻すことができます。

2-3.相手の親族との付き合いや介護が不要となる

年をとってくると、相手の両親の介護が現実的な問題になってきます。
相手自身が体調を崩し、介護が必要になるかもしれません。
また婚姻関係が続く限り、面倒な親族付き合いもしなければならないでしょう。
離婚したら相手や相手の親族との姻族関係も切れるので、介護の必要はありません。
「嫌いな相手や相手の実家の親族と同じお墓に入りたくない」方も多いのですが、そういった心配もなくなります。

2-4.再婚も可能

最近では、年をとっても気の合うパートナーと出会って再婚される方が増えています。
婚姻届を出さずに内縁関係を継続するカップルも少なくありません。
相手と結婚したままでは別のパートナーを見つけることはできませんが、離婚してしまえば自由に恋愛や再婚が可能となります。

3.熟年離婚のデメリット

熟年離婚には以下のようなデメリットもあるので注意しましょう。

3-1.金銭的な不安

これまで専業主婦だった方などの場合、離婚後に急に職を見つけて高収入を得るのは簡単ではありません。子どもが成人していれば養育費も払ってもらえず、離婚後たちまち生活不安に陥る可能性があります。
熟年離婚するならできるだけ高額な財産分与を受けておくべきですし、離婚後の生活費について現実的なシミュレーションをしておく必要があるでしょう。

3-2.孤独になる

熟年離婚すると、孤独感にさいなまれる方が少なくありません。
親はすでに他界しており子どもとも疎遠になり、自分1人だけになってしまう可能性があります。
もちろん友人と遊んだり趣味に没頭したりして楽しむことはできますが、家に帰ると1人きり、というのは思った以上につらく感じる方がいます。離婚の際には自分の性格の見極めも大切です。

3-3.介護してもらえない

歳を取ると、自分自身が体調を崩して介護が必要な状態になってしまう可能性もあります。脳梗塞を起こしたり認知症になったりする方も多く、要介護は誰にとっても他人事ではありません。
パートナーがいれば支えてもらえるでしょうけれど、離婚して1人暮らしをしていたら、誰も助けてくれない可能性も高くなってしまいます。孤独死してしまうリスクもないとはいえません。
熟年離婚するなら、子どもや友人と密に連絡をとるなど、いざというときに備える必要があるでしょう。

3-4.周囲の理解を得にくい

近年では熟年離婚が周知されてきたとはいえ、まだまだ「理解を得られた」とはいいにくい状況です。特に「他人事ならまったく問題だと思わないが、自分ごとになると反対する」人もたくさんいます。
子どもや親族に「夫と離婚したい」と切り出すと猛反対されるケースが少なくありません。
理解を得ないまま離婚すると子どもとの関係が疎遠になってしまう可能性もあります。離婚を進める前に「離婚したい理由や自分の気持ち」などを伝え、なるべく同意してもらっておくのが理想です。

4.熟年離婚の注意点

熟年離婚を進めるときには、以下のような点が問題になりやすいので注意しましょう。

4-1.相手が離婚に応じてくれない

熟年離婚を相手に切り出すと、断られるケースが多々あります。
たとえば専業主婦だった妻が意を決して夫に「離婚したい」というと「何を言っているのか」「お前が1人で生きていけるわけがない」などと一蹴され、相手にされないケースが少なくありません。しかし、長い夫婦関係ですので、「不貞行為」に該当する行為がないかを調べることも重要であると考えられます。
夫としては夫婦関係に何の問題も感じていないため、こういった受け答えになってしまいます。
相手がどうしても離婚に応じない場合には、家庭裁判所で離婚調停を申し立てなければなりません。最終的には裁判になる可能性もあります。熟年離婚を進めるときには「相手方に離婚に応じさせる」のが第一のハードルとなるでしょう。
弁護士が代理人として交渉すると相手も離婚に応じやすくなるものです。調停を避けて協議離婚したいなら、まずは弁護士に相談してみてください。

4-2.財産分与でトラブルになりやすい

熟年離婚では財産分与に関するトラブルが多発する傾向がみられます。

財産分与の対象は「夫婦共有財産」であり、夫婦共有財産とは「婚姻中に夫婦が積み立てた資産」です。熟年離婚の場合、婚姻期間が長いので夫婦共有財産が多種多様となり、評価額も高額になりやすいでしょう。
財産分与を求める側は「なるべく多くの分与を受けたい」と考えますし、分与する側は「できるだけ払いたくない」と考えるのが一般的です。
このようにお互いの利害が真っ向から対立するので、財産分与の話し合いが非常に難しくなるのです。

「退職金の財産分与」をめぐる争いも多いので注意しましょう。
退職金も財産分与の対象になりますが、夫の側としては「長年がんばって働いて得られた退職金を離婚する妻には絶対渡したくない」と考えるケースが多いためです。
また退職金の評価方法も問題になりますし、相手名義の口座に振り込まれた退職金を使い込まれるトラブルも多発します。
離婚時にしっかり財産分与を受け取りたければ、弁護士による支援が必須となるでしょう。

4-3.年金分割に関するトラブル

夫婦の片方または双方が厚生年金に加入していれば、離婚時に「年金分割」ができます。
年金分割の金額は婚姻年数(そのうち厚生年金に加入している期間)が長くなるほど高額になるので、熟年離婚の場合には年金分割によるインパクトも大きくなる傾向があります。
そこで夫側が頑なに合意分割を拒み、調停に発展してしまうケースも少なくありません。

ただし訴訟や審判となればほぼ確実に0.5(2分の1)の割合で年金分割が認められるので、相手が拒否しても年金分割の請求を取りやめる必要はありません。
離婚後に安心して生活するためにも、公平に年金分割してもらいましょう。

4-4.離婚しないほうが得になる場合も

高齢のご夫婦の場合、経済的な問題だけであれば「離婚しないほうが得」になる可能性があります。

  • 遺族年金

    1つには、相手が先に死亡すると「遺族年金」を受け取れる場合があるためです。
    遺族年金の金額は、年金分割を行った場合に受け取れる金額より高額になるケースが少なくありません。

  • 遺産相続

    離婚時の財産分与より死亡時の遺産相続のほうが有利になるケースも多数です。財産分与であれば「夫婦共有財産の2分の1」しか受け取れませんが、「遺産相続」であれば「相手の総資産のすべて」を受け取れる可能性もあります。
    たとえば相手が独身時代から持っていた資産、実家の親から受け継いだ財産は財産分与の対象になりませんが、遺産相続であれば遺産の範囲に含まれます。

  • 離婚までの婚姻費用

    離婚すると相手からの給付は受けられませんが、離婚を成立させずに別居を続けていたら「婚姻費用」も支払ってもらえます。

もちろん「どちらが先に亡くなるのかわからない」「相手がいつ亡くなるかわからない」などの問題はあるため「必ず離婚しないほうが得」とはいえません。
とはいえ、ときには離婚しない方が経済的に得になる可能性があることは知っておくとよいでしょう。

5.弁護士に依頼するメリット

熟年離婚する場合、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。

5-1.離婚後の生活についてアドバイスを受けられる

熟年離婚しようとしても「まず何から手を付けてよいかわからない」「相手に離婚したいといったら断られてしまった」など、つまずいてしまう方が少なくありません。
「財産を隠されているので調査したい」というお悩みを抱える方も多数おられます。
弁護士に相談すれば、状況に応じたアドバイスを受けられます。自己判断で動く前に相談すれば、より有利な条件で離婚しやすくなるでしょう。

5-2.自分で交渉しなくて良い

熟年離婚するとき、自分ひとりで相手と交渉すると多大なストレスがかかりますし、相手がまじめに対応しない可能性も高くなります。
弁護士に代理人を任せれば自分で直接やり取りする必要はありません。
相手も真剣に対応するでしょう。離婚を拒絶する相手でも、弁護士が説得して離婚に応じさせられるケースも少なくありません。

5-3.高額な財産分与を受けやすくなる

熟年離婚では財産分与が争点となるケースが非常に多くなっています。その実質は、解決に、長い歳月が必要な「金銭消費貸借契約訴訟」や「遺産分割調停」と実態は大きく変わらないといえるでしょう。
弁護士に相談すると、財産調査を行い適正に評価して「法的に正しい方法」で財産分与を受けやすくなります。
相手の財産隠しや使い込みを防いで公平な財産分与を受けるためにも弁護士に相談してみてください。

5-4.調停や訴訟になっても安心

熟年離婚で相手と交渉しても合意できなければ、調停や訴訟の手続きに進めなければなりません。しかし1人で調停を申し立てるのは不安を感じる方が多いでしょう。
弁護士に依頼すれば、弁護士が申し立ての手続きや裁判所とのやり取りなどを代行するので、ご本人はほとんど何もする必要はありません。
調停にも弁護士が同行して調停委員とも一緒に話をするので、安心できます。
訴訟になった場合には、ご本人が裁判所に出頭する機会すらほとんどないので、負担が非常に軽くなります。

高齢で体調が芳しくない方でも、弁護士に依頼すれば安心して離婚を進められるものです。
いくつになっても離婚したいなら、あきらめる必要はありません。当事務所では離婚を希望される方への支援に積極的に取り組んでいます。熟年離婚の解決実績も多数ありますので、安心してご相談ください。

年金分割の注意点

財産分与と同じですが、離婚後の生活設計を考えるうえでは、年金分割が欠かせません。特に、熟年離婚した女性にとって、離婚後の経済的な問題は非常に重要です。長年、専業主婦やパートタイマーであった女性が、いきなり正社員やフルタイムの職に就くのは簡単ではありません。ですので年金分割は非常に大切です。
年金分割とは、離婚後に、配偶者の一方の年金保険料の納付実績を、もう一方の配偶者の納付実績として取り扱う制度をいいます。よく誤解されている方が多いのですが、支給される年金自体を分け合うものではありません。あくまで、婚姻中の年金保険料の支払実績を分け合うものです。
年金受給年齢まであと僅か、あるいは既に達している場合には、直ちに生活に直結する事柄です。しっかり分割しないと、その後の生活に大きく影響してきます。上記の点をもふまえて、離婚後の生活が現実に成り立つかどうかを考えながら、離婚に向かうことが大切です。
専業主婦の場合、夫が厚生年金保険に加入していれば、妻は保険料を支払わなくても、国民年金の第3号被保険者として扱われますので、夫は将来、国民年金と厚生年金を、妻は国民年金を受給することができます。しかし、離婚してしまうと、妻は国民年金だけになってしまうことから、年金分割により、婚姻中に夫が支払った厚生年金の保険料の2分の1を、妻が支払ったものとして扱うことになり、これを元に、将来妻の年金額が算定されます。
熟年離婚の場合、通常の離婚と異なり、夫側にも妻側にも、離婚後の生活面での問題が生じる可能性があります。また、婚姻期間が長かったために、財産分与の対象となる財産が高額になりがちであることから、合意が得られにくいという点もあります。
財産分与においては、自宅の不動産に住宅ローンが残っていて分割が難しかったり、退職金や年金分割の問題も絡んできたりすることから、法律的な専門知識も欠かせません。

弁護士に依頼するメリット

若い頃の離婚に比べればハードルの高い熟年離婚ですが、離婚してその後の人生を自分らしく生きるという選択を選ぶ以上、離婚後に後悔しないようにしなければなりません。思い付きで離婚するのではなく、まずは、法律の専門家である弁護士に相談する等して、しっかりと準備をしてから離婚することが大切です。
また、事前に専門家等に相談することで離婚を思い止まることもあると思います。そもそも離婚という選択が正しいのかどうかという点についても、第三者の意見を踏まえて再検討するということも必要な過程だと思います。
もし、調停となった場合は、今まで長年、他人との紛争や裁判とは無縁で生きてきた方には、裁判所に行くと聞いただけで不安になるかもしれません。しかし、法律のプロである弁護士があなたの味方として同行するのでご安心ください。また、仮に調停から離婚裁判にまで発展した場合でも、弁護士が最後までしっかりサポートいたします。

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