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薬物中毒の夫と離婚する方法

薬物中毒の夫と離婚する方法

 

夫が覚せい剤や麻薬などの「薬物中毒」になっていると、妻には大変な苦労が及びます。ときには夫が逮捕されて「情状証人」として裁判に出廷させられたり夫に前科がついて子どもの将来が心配になったりすることもあるでしょう。なお、違法薬物ではない場合、双極性障害やうつ病、不安障害で服薬している方もいるかもしれませんが、その場合は薬物中毒ではなく、病気やそれに起因する生活態度を問題とせざるを得ないのではないでしょうか。

離婚を考えたとしてもやむを得ません。

 

今回は、薬物中毒の夫と離婚する方法について、弁護士の立場から解説します。

 

1.協議離婚する

夫が薬物中毒になって、当初は一緒に治そうと努力したけれども「これ以上はつきあっていけない」と感じたら、離婚を考えるしかありません。つまり、夫婦共同生活は、婚姻関係の根幹ですから夫婦の意思疎通とそれによる信頼関係が成り立たない場合は離婚もあり得るのです。また、薬物とまではいえなくても、精神的な問題に起因する不貞、浪費、転職、休職、失業、他者との衝突、スーサイドなどが家庭内トラブルにつながる可能性もあります。精神的な問題は間接的に夫婦関係やこどもとの関係にも影響していくものだと考えましょう。

夫が薬物中毒の場合でも、法的には離婚の方法は一般的なケースと同じです。まずは「協議離婚」を目指しましょう。

協議離婚とは、夫婦が話し合って離婚に合意し、離婚届を作成して役所に提出する離婚方法です。相手が納得さえすれば、離婚が成立します。

未成年の子どもがいる場合には親権者を決めなければならないので、あなたが引き取るように交渉しましょう。

協議離婚の場合、慰謝料や財産分与などの親権者以外の離婚条件は決めなくても離婚可能です。ただ、これらを決めておかないと離婚後にトラブルになる可能性もあるので、離婚の際に取り決めておきましょう。

相手から財産分与、養育費、慰謝料などの支払いを受ける場合には、必ず「離婚公正証書」を作成することをお勧めします。公正証書にしておけば、離婚後相手が不払いを起こしたときにすぐに相手の給料などを差し押さえて回収することができるからです。

 

2.調停離婚する

夫に離婚を持ちかけても合意してくれない場合や親権者に合意できない場合には、家庭裁判所で調停を申し立てましょう。調停では、家庭裁判所の調停委員があなたたちご夫婦の間に入り、離婚交渉を調整してくれます。あなたの離婚意思が固いとみれば、相手を説得してくれるでしょう。調停でも、親権者や養育費、慰謝料や財産分与などの離婚条件を取り決めることが可能です。

調停で決まった事項は「調停調書」にまとめられますが、調停調書には強制執行力があるので、相手が不払いを起こしたらすぐに相手の給料や預貯金などを差し押さえることができます。わざわざ自分たちで公正証書を作成する必要はありません。

 まず、親権については、こどもの心に負担にならないように、また調査官の過度の調査の負担とならないように、症状、性格、こどもの年齢を十分に配慮しましょう。代理人も事前に裁判所や調査官と相談し、調査方法等も含めて負担軽減について配慮を求める必要があるでしょう。

 また、財産分与については、その本人に心の問題があり就労できない場合はどこまで請求するかの検討も必要であり、離婚後のことも考慮する必要があります。心の問題を負った当事者の離婚後の生活に配慮した柔軟な解決が望まれます。

 また、慰謝料については、妻の情緒不安定や衝動的な性格にあっても、それが精神病質によるものである場合は倫理上道義上の非難の対象にはならないとして慰謝料請求を棄却した例があります。(東京高裁昭和51年8月23日)

3.裁判で離婚する方法

調停は話し合いで解決する方法なので、薬物中毒の夫が調停で頑なに離婚を拒絶する場合には調停は不成立になります。この場合「裁判」で離婚を成立させる必要があります。

 

3-1.薬物中毒は「回復しがたい精神病」に該当しない

裁判は話し合いの手続きではありません。裁判官が法律の要件を満たすか検討し、結論を下す手続きです。裁判で離婚を認めてもらうには「法律上の離婚事由」が必要です。

そして民法が認める法律上の離婚事由は以下の5種類です。

  • 不貞
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復しがたい精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

 

夫が薬物中毒の場合、「④の『回復しがたい精神病』に該当するのではないか?」と考える方もおられるでしょう。

しかし一般的に薬物中毒は回復可能と考えられており、回復しがたい精神病にはなりません。ただ、隣接していると考えることは可能であります。そこで④の要件によって離婚することは難しくなりますが、婚姻を継続し難い重大な事由の一つの要素として主張することになるでしょう。ただし違法薬物の場合や子の福祉に影響が出ている場合は例外と考えるべきでしょう。薬物中毒からの回復の意欲の程度もあるかは問われることになるでしょう。

 

3-2.前科は離婚理由ならない

夫が薬物中毒の場合、逮捕・起訴されて前科がついているケースもあるでしょう。何度も逮捕されたり懲役刑を執行されて家族に多大な迷惑を及ぼしたりすることもよくあります。

「夫に前科がついたらさすがに離婚できるだろう」と考えるのも当然です。実際、協議の場合、離婚に応じてくれることも少なくありません。

しかし前科はすぐには離婚理由になりません。夫の刑事処分がきっかけで夫婦仲が悪化したらそのことが⑤の婚姻を継続し難い重大な事由につながる可能性はありますが、「前科=婚姻を継続し難い重大な事由」とは評価されません。ただし、最近は、罪体によっては離婚が認められる可能性がないとはいえないケースもあります。一例を挙げると、殺人や強制性交等、社会的非難が強い犯罪等です。

特に夫の公判で妻が情状証人として出頭した場合などには、「刑事裁判の当時はまだ夫婦を続けていく気持ちがあった(つまり婚姻関係が破綻していない)」と評価される可能性が高くなります。

 

3-3.薬物中毒で離婚を認めてもらえるケースとは

薬物中毒で裁判離婚を認めてもらうには、「婚姻を継続し難い重大な事由」が必要です。薬物中毒でこの要件を満たすのは、以下のようなケースです。

  • 夫の薬物中毒が原因で夫婦のコミュニケーションがとれず、お互いにやり直す意思を完全に失っている
  • 別居が長引き、夫婦らしいやり取りが一切ない
  • 同じ家に住んでいるが、お互いの気持ちが離れて会話もなく挨拶もせず家庭内別居状態が継続している
  • 薬物中毒の夫から暴力を振るわれている

 

また薬物中毒の夫があなた以外の女性と不倫している場合には、上記の①の不貞によって離婚可能です。

薬物中毒の夫がお金を家に入れずに自分の薬物購入ばかりに使い込んでいる場合や家出した場合などには②の悪意の遺棄によって離婚可能です。もっとも、薬物中毒で稼働能力を失ってしまった場合は、多くのケースで離婚している例もあると思われます。まずは弁護士を通じた協議をおすすめします。

 

4.薬物中毒と慰謝料

夫が薬物中毒の場合、慰謝料請求できるのでしょうか?

まず「薬物中毒」というだけでは慰謝料は発生しません。慰謝料が発生するには相手に対する不法行為が成立する必要がありますが、夫も好きで薬物中毒になったわけではなく、あなたに対する不法行為とは言えないからです。

ただし相手が別の女性と不倫した場合や、家にお金を入れずに薬物代に使い込んだ場合、家出した場合や暴力を振るった場合などには慰謝料請求可能です。

 

5.薬物中毒と養育費

夫が薬物中毒の場合、養育費をもらえるのか不安に思う方もおられます。

薬物中毒であっても養育費は払わねばなりません。ただし、養育費の支払いをするだけの「収入」が必要です。相手が働けない状態になって入院治療中のケースや生活保護を受けている場合などには養育費を払ってもらうことは不可能です。

 

相手が薬物中毒の場合、一般の離婚事案とは異なる配慮も必要となります。名古屋で離婚に迷われた際には、お気軽に弁護士までご相談下さい。

 

6.自分の身を守る

 薬物中毒の方はあらぬ妄想を抱くことがないとまではいえません。例えば、悪徳弁護士が妻をそそのかして金を巻き上げようとしている、あの弁護士は妻と不貞関係にあるなどの妄想を抱くケースです。このような場合、弁護士事務所に依頼し、できないことはできないと述べて、配偶者とは一線を画すること、直ちに法的に適切な手段を選択することが非常に大切です。

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