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家事育児・家事労働に対する非協力などで婚姻破綻を認めた特殊例

 高裁で別居期間が3年5か月を超えて、その間、復縁に向けた具体的な動きがないとして、婚姻関係が破綻していないとした一審を取り消して、およそ3年余りの期間で離婚を認めた事案を名古屋駅にあります名古屋駅ヒラソル法律事務所の弁護士が紹介します。

 名古屋市にあります名古屋駅ヒラソル法律事務所は、離婚相談を得意とする弁護士事務所です。当事務所では、日々多くの離婚相談をお受けしています。その内容は人によりさまざまですが、そもそも離婚原因があるのかという相談が多く寄せられています。 そこで今回は、離婚原因の存在の有無も検討していきたいと思います。出された判例は東京高裁平成29年6月28日です。

 本件は、妻が夫に対して、①流産や妊娠中の冷淡な対応、②身勝手・無配慮な言動、③育児への非協力により婚姻関係が破綻し、親権、養育費、財産分与を請求した事例である。

Step1.強制離婚は、法定離婚原因がないとできない現実

 原則として、離婚は自由にできるわけではありません。民法に法定離婚原因があり、実質的な離婚原因として多く持ち出されるのが5号事由、すなわち、「婚姻を継続しがたい重大な事由」、言い換えれば婚姻が破綻しているということになります。

 しかし、婚姻破綻といっても、社会通念と裁判所の解釈は異なります。強制離婚は裁判所が認めるものですから、今日は裁判所が考える強制離婚原因を検討していくことにしましょう。
 「婚姻を継続しがたい重大な事由」というのは、①有責性、②別居期間で構成されており相補的補完関係にあると考えられています。一例を挙げれば「重大な侮辱」があれば短期間で離婚が認められる一方、決め手がない別居の場合は我が国のみならず諸外国でもこどもの福祉も考えて、直ちに離婚を認めるという立法政策は少ないように思われます。
 有責性についてみると、性格の不一致、暴行虐待などの夫婦不和の典型的な事情を総合判断することになります。そして、有責性の相補的補完関係として、別居期間の長短を総合考慮して破綻を認定することになります。

Step2.3年別居すると、離婚できるのは本当ですか。

 原則、嘘です。例えば、有責性が強い者からの離婚請求については、別居期間は3年では足りないと考えられます。ここは相補的補完要件ですが、裁判所はこどもがいないような場合、婚姻期間と別居期間がイーブンになり始めたところから破綻を認めます。そうしますと、概ね婚姻3年の夫婦が多かったことから、古くから「3年で離婚」できるというようにいわれたのだと思います。ただし、例外的に、東京家裁では、3年経過している場合は機械的に破綻を認めているという運用もあるとも聴いています。
 婚姻破綻は、評価概念ですので、裁判官の人生経験や成育歴にも影響を受けるため予測をしづらいといえそうです。かって、横浜家裁長官は論文で5年が一つの目安になると指摘していたことがあります。
 別居期間の目安は、有責配偶者の例(不倫)を除けば、3年、4年を基本原則として、夫婦不和の類型的事情に応じて、プラスマイナス1年が座標軸とされています。特に、0歳児などのインファントがいる場合、有責配偶者ではなくても裁判所は離婚を否定する傾向にあります。
 特別な事情、具体的には人格を否定するような「重大な侮辱」がある場合は、これよりも短い期間でも破綻が認められる場合があります。他方、これよりも長い期間、別居をしていても、婚姻破綻が認められないことがあります。裁判所によっては、別居期間をなるべく後ろで認定して「事実で殺す」戦法をとる場合もありますので、いつから別居しているのかという事実認定論も伴ってきます。

Step3.有責性と別居期間の2つの要素から認定される

 このように裁判所は、有責主義というよりかは、「別居期間」を中心に据えて、配偶者の感情に根差した生活感覚の違いから、夫婦の信頼関係に亀裂を生じ、これが拡大される過程を一つの道筋として、代表的なエピソードを時系列的に認定していくことになります。
 その結果、①夫婦としての信頼関係・絆が完全に切れているか、②修復の見込みがないかという2つの要素から破綻を認定することになる。

Step4.裁判例の流れは?

 裁判例をみても、①別居期間が1年余りの夫婦については、原審はいまだ破綻していないとして、離婚請求を棄却したのに対して、控訴の申立てがあり、控訴審は、婚姻関係はもはや修復困難な状況に至っていると指摘し、原審を取り消して離婚判決を行ったものもある。(大阪高裁平成21年5月26日)
 しかしながら、当庁では、別居から3年3か月の夫婦について、婚姻関係を改善することが期待でき、いまだ破綻しているとはいえないと指摘し、離婚判決を認容した原審を取り消して、請求を全面的に棄却する判決を行った裁判例もある。(名古屋高裁平成20年4月8日)
 

Step5.東京高裁平成29年6月28日は?

 本件東京高裁では、別居期間は3年であり、一審と二審で判断も分かれている分水嶺的事例といえる。
 控訴人が離婚原因として主張しているのは、①二度の流産や妊娠中の夫の無配慮な言動、②家事育児に対する非協力的な態度、③家事労働への無理解とまとめることができる。
 本件東京高裁の上記①ないし③の事例はいずれも有責性を基礎づける事由とは言い難く、判旨には大いに疑問がある。ゆえに原審が破綻を否定したことも頷くことができる事案をいえる。このような事例では、上記①ないし③について局所的に詳細な認定をして、大袈裟な認定になることが多く本件東京高裁の結論は後記のように支持できない。
 論旨は要するに、①夫婦間のコミュニケーションの不足、②互いの心情を理解し合う意思の有無というレベルで互いに努力の形跡があるのか、努力がなくなった時期はいつかという観点で夫婦間の「心」の溝の大きさを見たなどと指摘されており、法的判断と心的判断を混同しているといわざるを得ないであろう。
 論旨は、さらに①夫婦の年齢差が9歳あること、②夫の家事育児の役割分担に対する無理解、③対等なパートナーとしての専業主婦に対する心情への無理解、④復縁に向けた具体的動きがないこと―以上を指摘して、夫婦の信頼、絆が完全に切れており、回復の見込みがないなどと指摘している。
 なお、本件では、控訴人は、控訴審において、附帯処分(養育費、財産分与)の申立てを取り下げており、それ自体、離婚意思の強固さをうかがわせる。
 しかしながら、本件は、婚姻15年の夫婦であると認められるところ、両者の間には長女と長男がおり、控訴人は専業主婦である。なるほど、夫は仕事が多忙であったことは認められるが、おむつ替えなどには参加していたのであって、家事育児に対する非協力な態度は控訴人が専業主婦であることに照らすと、社会通念上許容できない範囲とは到底いえず(②)、また、夫婦間のコミュニケーションも当審が指摘するものは、「育児の辛さに対する理解を示さず、控訴人は疎外感を持った」程度のことにすぎない(①)。そして、常勤の労働者と専業主婦ではおのずと役割分担に違いがあるのは当然のことであって、「対等なパートナー」といっても、世界的統計によれば、男性は我が国においても欧米においても、家事の2割から3割程度しか行わないといわれている。従って当審は客観面を指摘しているのではなく、あくまで「心情」への配慮を問題視しているが、ではどれほどのカウンセリングをしたら心情に配慮しているのか、全く指針を示していない。かえって、論旨が指摘するような年齢差は関係がなく、また、二度にわたる流産から情緒不安定な女性が頑強に離婚を求めることはままみられることであるが、8歳と6歳の幼児がいることや大した離婚原因が存在しないことに照らすと、東京高裁判決は是認できない。論旨は理由がない。

Step5.息子とのパースペクティブ

 
青人:パパは、この事案をみてどう思いましたか。
弁護士:判決文を読んで、感情的な説示が多く、論理的には説得できない事件なのだろうと思いました。ただ、本件では離婚を認めるべきではなく、流産を複数回繰り返した女性の心情から男性に嫌悪感を抱く心理的機序の中にあるので、長女や長男のためにも簡単に破綻を認めるべきではありませんでした。このような女性は仕事に出たりすると、流産の自己嫌悪感が薄らぐことが期待できるので結論を急ぐべきではありませんでした。
青人:僕も「罪悪感と悲しみに襲われたが、その思いを父とは共有できず、控訴人は孤独をもった」とか、「疎外感を持った」とか、「妻をねぎらうこともなかった」とか、「心境を逆なでした」とか、「怒りすら湧かず、孤独と悲しみを感じた」とか、馬鹿なのと思う説示がたくさんあるね。
弁護士:おそらく「篠原絵里」という左陪席裁判官が主任だったんだろうね。さすがに文章が心理描写で心理的に伝染しているような内容になっているので、部総括が「これではいかん」と思って、第3項のみは部総括が執筆しているみたいですね。文体が全然違いますから。
青人:匿名コメントでも、「罪悪感と悲しみ」とか、教会みたいな説示はとりあげられていないね。全く説得力がないからだろうね。
弁護士:「結論ありき」だけど論理的に説得的な叙述ができない場合は、「涙が溢れ、涙がこぼれ」とか、馬鹿なの?ということを特に左陪席は平気で書きますね。それが、認定事実になるわけですが、なぜ心理描写が事実として認定できるのか、これは精神科医でも分からないことだよね。論理破綻しているとしかいいようがない。非訟ならともかく憲法32条の裁判で馬鹿なの?みたいな判決をもらう方は気の毒でしょうね。
青人:パパが原審だったら棄却だね。
弁護士:そうだね。「罪悪感と悲しみに襲われた」とか非論理的なこと嫌いですから。原審は、妻が、長女と長男の出生後6年間、専業主婦として稼働していて、その間、社労士の勉強をしたり、看護学校に通うなどの場当たり的な行動を繰り返してきました。そして、別居直前まで離婚の切り出しにつながるような事実関係は認められないとしました。そして、夫の言動も社会生活の範囲内であり有責な言動では一切ないと指摘して、さらに、妻に対して「一般的にこどもを持つ夫婦間では日常的に生じる不満であり、夫は育児を手伝っていないわけではないし、夫なりにも心情に寄り添ってきたものと認められる」と指摘しました。そして、夫は、家事や育児についても協力していきたいと述べて、さらに、結婚期間が14年近くに上るのに別居期間はわずかに3年にすぎないと主張して、婚姻関係の破綻を否定しました。
青人:ものすごくまっとうだね(笑)。依頼者の承諾をもらってパパの打ち合わせに入れてもらったとき、パパが「ストレスを生じたと認められる」という判決文をみて、ストレスがない家族なんてあるのかな、って呟いていたけど、原審裁判官はパパの考えに近いね。というかそれが健全か。
青人:馬鹿なの?という篠原絵里左陪席裁判官はともかく、部総括が書いたとみられる部分の論拠はなんなの?
弁護士:結局のところ、部総括も文章は綺麗だけど、①二度の流産がつらかった、②夫がこどもらを厳しく叱るということがあった、③別居期間が3年、④復縁に向けての協議がない、⑤流産の際に気持ちに寄り添ったという証拠がない、⑥他方控訴人の実家がそばにあり助力を得ることは容易であったと。エッセンスを取り出すとこの程度なんですけど、全部説得的ではないですね。結局のところ、妻の側が、別居前後の事情から大幅に離れる流産を牽強付会で持ち出して、看護師資格を取得したので、夫を悪意に遺棄して独立したかったというのが本音ではないですかね。復縁についての協議は、妻が応じなければできないし、かえって面会交流にも応じてこなかった可能性を示すもので悪情状の一つとも評価できるし、流産の事情も、平成16年、平成22年のことで、平成26年に別居しており、現在の別居を中心に離婚原因をとらえる考え方とも一致せず、論理は破綻していると言わざるを得ませんね。この裁判は、本人訴訟という特殊性があり、夫側に代理人が就いていたら結論は変わっていたかもしれませんね。
 この程度の理由で離婚が認められるとすると、民法の法定離婚制度を根底から覆すことになり、「間違い」と断じる外ない判決ですね。結局、別居期間以外に根拠はないので、別居期間をメルクマールになるとは思いますが、幼児がいるケースでは相当であるのか疑問であるし、匿名コメントも疑問を呈しているところをみると、極めて特殊で奇天烈な判決であり、先例としては認められないというべきですね。

Step6.判決文

第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所は,控訴人の離婚請求は理由があり,未成年者らの親権者は控訴人に指定すべきものと判断する。その理由は,次項以下に記載するとおりである。
 2 前記前提事実及び本件各証拠(甲1,2,22,23,乙4,5,控訴人本人(原審),被控訴人本人(原審))並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
  (1) 被控訴人は,昭和46年○月○日生であり,控訴人は,昭和55年○月○○日生であって,被控訴人と控訴人は,平成16年2月22日,婚姻した夫婦である。被控訴人は,控訴人が大学卒業後に就職した勤務先の先輩社員であり,両者は職場で知り合い,交際を開始した。
  (2) 控訴人は,平成16年3月流産した。控訴人は,流産後,子供を見ると,おなかの中の子を無事出産してやれなかった罪悪感と悲しみに襲われたが,その思いを被控訴人とは共有できず,控訴人は孤独感をもった。
  (3) 控訴人は,平成17年9月頃,長女を妊娠し,平成18年○月○○日,長女を出産した。
    控訴人は妊娠中悪阻がひどく苦しんだが,被控訴人には控訴人の苦しみが伝わらず,控訴人が被控訴人に背中をさすって欲しいと頼んでも被控訴人はこれに応えず,控訴人は被控訴人から無視されたように感じたことがあった。
    被控訴人は仕事が多忙で,長女の育児にはおむつ換え程度しか関与できなかったが,控訴人が被控訴人に育児の辛さを訴えると,被控訴人は,「お前は子供の面倒を見ているだけだろ。家のことだけだろ。」と言って,育児の辛さに対する理解を示さず,控訴人は疎外感を持った。
  (4) 控訴人は,平成20年○月○○日,長男を出産した。
    控訴人は,長男の妊娠中,長女の世話もしながら,悪阻に苦しんでいたが,被控訴人は家事の手伝いを増やすことや,控訴人をねぎらうこともなかった。
    長男が出生後,控訴人が長女を寝かしつけているのに,被控訴人が大きな音でテレビを視聴していることがあり,被控訴人に苦情を述べたが,被控訴人はこれを改めないということがあった。
    家計をめぐって,控訴人と被控訴人が口論になった際に,被控訴人は控訴人に対して,「お前に稼げるのか。稼いでもいないくせに。どうせできないだろう。俺は平均以上稼いでいるんだ。」と述べ,専業主婦をしている控訴人の心情を逆なでした。
  (5) 控訴人は,平成22年9月,再び妊娠したが,まもなく流産した。
    控訴人が被控訴人に対して,妊娠したことを伝えても労いの言葉がかけられることはなかった。
    控訴人は,流産したことに自己嫌悪を覚え,家に閉じ籠もっていると精神に変調を来しそうであると思い,気を紛らわせるために就職したいと被控訴人に伝えると,被控訴人は,「仕事に行くのであれば,家のことも,もちろんちゃんとやるのだろうな。」と応えた。控訴人は,被控訴人のかかる言葉を聞き,怒りすら湧かず,孤独と悲しみを強く感じた。
  (6) 控訴人は,自分で安定的に収入を得たいと考えて,平成24年4月,看護学校に入学した。
    入学後,テストや課題作成のため,控訴人が被控訴人に対して,一時的に家事の負担を求めても,被控訴人は,結婚する際に家事は一切しないと言ってある,家事は一切しないなどと述べて,家事の分担を拒否した。被控訴人は,控訴人が外出する際にスカートを着用しているのを見て,控訴人に男ができたのではないかと疑う姿勢を示したりもした。被控訴人は,控訴人の作る食事に対する不満をカレンダーに書き込むようになった。
  (7) 被控訴人の休日に控訴人が看護学校に通学すると,被控訴人が未成年者らを控訴人不在中にきつく叱り,控訴人が帰宅すると未成年者らが泣きながら控訴人のもとに駆け寄ってくるという出来事が続いた。控訴人が,未成年者らを按じて,被控訴人に対して,被控訴人の休日には外出してはどうかと話すと,被控訴人は,「遊びに行けというなら行ってやる。しかし,来月から生活費を減らすからな。その分はお前がなんとかしろ。」と応えた。
  (8) 控訴人は,平成26年1月頃,夫婦で口論をした後に,「私がいけないんだよね。」と長女が自らを責める発言をするのを聞いて,被控訴人との婚姻関係がうまく行かないことによる悪影響が未成年者らに対してまで及んでいると感じ,もはや被控訴人との婚姻関係は維持できないと考えて,被控訴人との離婚を決意した。
  (9) 控訴人は,平成26年1月27日,未成年者らを連れて自宅を出て,被控訴人とは別居することになった。
  (10) 控訴人は,離婚調停を申し立てたが,平成26年7月4日,調停は不調となった。その後,控訴人と被控訴人との間では,復縁に繋がる具体的な動きはない。
 3 以上の事実によれば,控訴人は,被控訴人が9歳年上で職場の先輩でもあったことから,被控訴人を頼りがいのある夫と認識して婚姻し,一方,被控訴人も,控訴人を対等なパートナーというよりも,庇護すべき相手と認識しつつも,家事は妻が分担すべきものとの考えで控訴人と婚姻したところ,控訴人は,流産,長女及び長男の出生,2度目の流産を経験するなかで,被控訴人が家事や育児の辛さに対して共感を示さず,これを分担しないことなどに失望を深め,夫から自立したいという思いを強くしていったこと,これに対し,被控訴人は,控訴人の心情に思いが至らず,夫が収入を稼ぐ一方で,妻が家事育児を担うという婚姻当初の役割分担を変更する必要を認めることができずに,控訴人と被控訴人の気持ちは大きくすれ違うようになっていたこと,そうした中,控訴人が看護学校に行っていて不在の際に,被控訴人が未成年者らを厳しく叱るということなどが続き,控訴人はこのまま被控訴人との婚姻関係を継続しても,自らはもとより未成年者らにとっても良くないと離婚を決意するに至り,平成26年1月になって,未成年者らを連れて別居したという経緯が認められ,かかる経緯に加え,別居期間が3年5か月以上に及んでおり,しかも,この間,復縁に向けた具体的な動きが窺えないという事情をも加味すれば,控訴人・被控訴人のいずれかに一方的に非があるというわけではないが,控訴人と被控訴人の婚姻関係は既に復縁が不可能なまでに破綻しているといわざるを得ない。
   被控訴人は,事柄の背景を考えれば夫婦喧嘩にすぎないもので,離婚原因は存在しないと主張するが,前記のとおり,夫婦の役割等に関する見解の相違を克服できないまま,控訴人は離婚意思を強固にしており,その意思に翻意の可能性を見いだしがたい上に,既に述べたとおり,別居後は,双方に,今日に至るまで,復縁に向けての具体的な動きを見い出すことができないのであるから,かかる事情に照らせば,既に夫婦喧嘩という範疇に留まるものではなく,離婚原因を形成するものといえ,被控訴人の主張は採用することができない。
   被控訴人は,控訴人が最初の流産をした際には控訴人に寄り添おうとしたとか,家事や育児についても,被控訴人としては,仕事との兼ね合いはあるができる限りの協力をしたつもりであるなどと主張するところ,本件においては,被控訴人の主張を裏付けるに足りる証拠はないし,その点を措くとしても,そもそも,被控訴人の主張自体,被控訴人としては自らができると考えた範囲のことを自らの判断で行ったと主張するものにとどまり,被控訴人が控訴人とコミュニケーションをとり,その心情を理解しようと努めたと主張するものではない。被控訴人自身,原審における本人尋問において,夫婦が対等なパートナーという関係ではなかったと述べ,控訴人から育児の窮状を訴えられた際には,控訴人が家事しかやってないじゃないかと述べた旨自認しているほか,控訴人の心情への配慮という点についても,控訴人の実家が自宅のすぐ近くにあることから,被控訴人はこれといったことはしていないと認めている。
   以上によれば,控訴人と被控訴人の婚姻関係は既に修復不能なまでに破綻しているものと言わざるを得ない。控訴人の離婚請求は理由がある。
 4 甲第22号証,乙第5号証,控訴人及び被控訴人の各本人尋問(原審)の結果並びに弁論の全趣旨によれば,別居の前後を問わず,未成年者らの養育監護に当たっていたのは主として控訴人であると認められるし,本件全証拠に照らしても,現時点における控訴人の未成年者らに対する監護養育に格別問題を窺うこともできないから,未成年者らの親権者はいずれも控訴人とするのが相当である。
   被控訴人は,控訴人が子供嫌いであり,長女の幼稚園時に,同人に対する虐待を行ったと主張するが,本件においては,被控訴人の主張を裏付けるに足りる証拠は存在しないし,前記判断を覆すに足りる事情を窺うこともできないから,被控訴人の主張は採用できない。
 5 以上によれば,控訴人の離婚請求は理由があるから認容すべきであり,また,未成年者らの親権者は控訴人に指定すべきである。よって,これと結論を異にする原判決は相当ではなく,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消して主文のとおり判決する。
    東京高等裁判所第5民事部
        裁判長裁判官  永野厚郎
           裁判官  三浦隆志
           裁判官  篠原絵理

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