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性格不一致・愛情喪失と熟年離婚

【性格不一致・愛情喪失と熟年離婚】

  •  結婚して30年で子は成人して独立。夫は神経質でわがままなため、夫の退職を機に離婚したい。

 

こどもを育て上げて、この先旦那の面倒をみるなんて耐えられない。しかも毎日、「新聞!」とかいわれる日々・・・。涙があふれ涙がこぼれてしまいます。

性格の不一致や愛情の喪失が原因で夫婦関係が修復不可能なまでに破綻していれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、離婚が認められる場合があります。いわゆる熟年離婚といわれる高齢期タイプの離婚となり、30代とは異なる難しさがあります。

ただし、特に熟年・高齢離婚の場合は、婚姻破綻あるいは婚姻継続の相当性についてより慎重な判断がされるとおもわれますので、留意して下さい。つまり、3年間別居していたら離婚できるとは限らないのです。

 

  • 性格不一致とと離婚原因

上記の場合においては、いわゆる性格の不一致や愛情の喪失が問題になっているようです。このような性格不一致や愛情喪失も離婚原因になるとする見解もあるものの、そもそも、性格の不一致というのは多かれ少なかれすべての夫婦について言えるという見方もあり、また、離婚訴訟を提起するに至った段階では、離婚を請求している配偶者は他方配偶者に対する愛情を喪失しているのが通常です。

したがって、性格不一致や愛情喪失が主張されている場合には、そのことのみで離婚が認められるわけではなく、性格不一致の程度や愛情喪失の原因等を見極め、夫婦関係が修復不可能なまでに破綻しているかどうかについて、慎重に検討する必要があります。

 

裁判例も、性格不一致や愛情喪失が直ちに離婚原因になるとは考えていません。夫婦間の性格不一致や愛情喪失が原因となって、どんなに努力しても夫婦関係が修復不可能なほどにまで破綻してはじめて、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、離婚を認めた裁判例が昭和54年東京高裁、昭和59年東京地裁・横浜地裁の3件あり、昭和50年札幌地裁で否定した事例があります。

 

昭和54年東京高裁の事例は、結婚して一子をもうけた夫婦で、夫は高い水準の知的生活を妻に求めていたことに対して、妻は平凡・平和な家庭生活に満足するというように、2人の生活観、人生観の隔絶していました。この性格の不一致から夫婦は長期間別居しており、その中での夫からの離婚請求につき、この隔絶の存在は夫婦のいずれをも非難することはできないから、夫が有責配偶者であるとの主張は失当であり、離婚請求は理由があるとしました。

 

昭和59年東京地裁の事例は、性格の不一致・愛情の喪失から夫の同居希望にもかかわらず長期間の別居をしてきた妻からの離婚請求につき、婚姻破綻の原因は、夫婦乃至結婚生活に対する双方の考え方の隔離(性格の不適合)ともいうべきものであるとして、有責配偶者からの離婚請求はできないとして認容した事例です。

 

昭和59年横浜地裁の事例は、夫からの離婚請求につき、夫婦双方の妥協し難い性格から生ずる婚姻生活の継続的不和による破綻は、婚姻を継続し難い重大な事由に該当し、双方の責任を比較して婚姻破綻の生活が主として夫にあるものとは認められないとして離婚を認容しました。

 

否定例として昭和50年札幌地裁の事例は、開業医で4子ある夫から7年余別居中の妻に対する離婚請求について、双方が今日の事態に至ったのは、双方ともに相手を理解し合い、長短合わせて受容し合う気持ちを欠いていたことに大きな原因があったということができ、将来互いに努力し合うことによりこれを克服することができると考えられるので、婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえないとして棄却した事例です。

 

  • 離婚請求の拒否と離婚原因についての有責・無責の関係

上記裁判例では、婚姻の破綻について双方の有責性の有無とその程度が判断されており、性格の不一致、愛情の喪失はそれ自体当然には当事者の責任を問えないものと捉えられています。

このことは離婚請求の許否において、離婚原因についての有責・無責が重要な要素となることを示しています。すなわち、およそ婚姻関係の破綻を招くについて、専らまたは主として責任のある当事者はこれをもって婚姻を継続し難い重大な事由として離婚を請求することを許されないとする判断が昭和27年最高裁判所でされました。

 

それ以降の裁判例は以下の通りです。婚姻の破綻を理由に離婚を請求する際、

  • 婚姻破綻の原因が配偶者の一方にのみの非行によって惹起されたものである場合には、その配偶者からの離婚請求は認められません(昭和29年最高裁)。また、夫婦双方に責任がある場合には、
  • 婚姻破綻について主として責任のある配偶者からの離婚請求は認められません(昭和38年最高裁)が、
  • 夫婦の一方にもいくらかの落ち度はあったが、相手方により多くの落ち度がある場合には離婚請求が認められており(昭和30年最高裁)、
  • 破綻の原因が双方のいずれかに存するかということもにわかに断定できず、双方にあるとみるのが相当である場合にも離婚請求が認められています(昭和38年名古屋地裁)。

さらに、

  • 夫婦双方が無責の場合でも、夫婦関係が朱副不可能に至っていれば夫婦関係は破綻しているとして、(1)で述べた昭和54年東京高裁のように離婚が認められてしまいます。

結局、婚姻関係が破綻している場合で離婚請求が棄却されるのは、原則して、有責配偶者、すなわち離婚請求者が婚姻破綻について専ら又は主として責任を負う場合に限られると思い割れます。

 

  • 熟年夫婦の離婚

厚生労働省平成26年人口動態調査によりますと、平成26年の離婚件数は22万2107組で、同居期間が判明している20万6960組のうち、期間20年未満が17万189組約82%、20年以上が3万6771組で約17.8%です。また、前年比ですと、離婚総数では約4%の減少であり、同居期間が判明しているもののうち、期間20年未満が0.2%減少し、期間20年以上がその分増加しています。

熟年夫婦の離婚の場合、一般的にはその婚姻中に築かれた夫婦の共有財産が若い時よりも多額に上ると思われること、また、退職金や年金など熟年夫婦に特有の財産があり得ること、他方、離婚後の再就職は若い時と比べて困難になりますので、夫婦双方の生活が経済的に保証されるように適切な解決を図る必要があり、離婚に際して財産分与、年金分割が占める重要性はより大きくなるとおもわれます。

 

裁判所も、熟年夫婦の離婚については、上記のような諸事情等を慎重に判断していると思われます。というのも、やはり財産分与狙いで、退職したとたん離婚請求というのは信義則に反する面もあるからではないかと裁判所が考えているからだと思います。

 

例えば、長年会社人間的な生活をしてきた夫の定年後に妻が求めた離婚請求が棄却された裁判例もあります。

一審は離婚を認めましたが、控訴審は、夫には妻の立場を思いやるという心遣いに欠ける面はあったけれども、格別に婚姻関係を破綻させるような行動があったわけではないこと、夫婦の年齢や妻が病弱であるなどから夫が婚姻関係の継続を強く望んで居ることなどの事情から、現段階で婚姻関係が完全に破綻しているとまで認めるのは相当でないとしたものです。熟年離婚はなかなか認められない場合もあります。(平成13年東京高裁)

他方、80歳に達した夫が病気がちになり、生活力を失って生活費を減じた頃に、妻が夫を軽んじる行為が始まり、先妻の違背を無断で親戚に送りつけ、夫の思い出の品々を勝手に償却処分するなどの行為が夫の心情を深く傷つけるものであったが、妻はその精神的打撃を理解する姿勢に欠けているとして、別居期間が1年余りの夫婦について婚姻を継続し難い重大な事由があるとしました。(平成21年大阪高裁)

 

このように、熟年離婚の結論は裁判官個人の婚姻観や価値観によるところも大きいといえましょう。当事者側としては、離婚原因・婚姻継続の相当性の有無について一層きめ細かな主張・立証の方法を磨くことが求められます。

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