婚姻取消が認められた珍しい事例
婚姻取消が認められた珍しい事例
相談者情報
2022年の政府統計によりますと、婚姻の届は120万件であり、婚姻取消しは15件です。
ヒラソルが取り扱ったのは、2023年のものとなりますが、婚姻取消が認められることは、上記の統計から見て、とても珍しいことといえます。
依頼者は、特殊な環境にあり、婚姻をしなければ秘密を暴露するなどと言われ、婚姻に応じてしまったのだが、取り消したいというご相談でした。
そもそも、婚姻って取り消せるのか?
婚姻の取消しは、離婚の場合のようにその婚姻によて生じた身分関係を将来にわたって消滅させるものとされています。
したがって、婚姻取消の判決があれば、それ以後夫婦関係は消滅し、婚姻関係も終了します。
しかし、それまで夫婦であったという法律関係は残ることになります(名古屋高裁昭和37年10月3日判決)。
婚姻の取消しは民法747条の規定によれば「詐欺又は強迫」がある場合、裁判所が婚姻を取消すことができるものとされています。
例えば、婚姻の意思を有するにいたる動機に錯誤に瑕疵があった場合、その婚姻は取り消すことができます。
ポイントは、「詐欺又は強迫」の場合、その影響下から脱して3カ月以内であることも必要となります。
例えば、詐欺の場合は、第三者が、配偶者の一方に婚姻前数カ月精神異常のため入院加療した事実を隠して婚姻を勧めて成立させた場合は詐欺取消しの対象になるとしています(東京地裁昭和7年2月26日判決)
このように、詐欺による取消は極めて限られた場合にしか認められません。
強迫による婚姻とは、相手方または第三者の言動によって畏怖の念を生じ、それによって婚姻した場合をいいます。例えば婚姻成立にあたり、威圧的言動が用いられることがあります。ただし、法律上、威圧的言動の全てが強迫に該当するとはされておらず違法性の強度のものが必要であると解されています。
これは、民法の教科書的な説明ですが、私見は、「違法性の強度」という限定は今日の自由な婚姻という趣旨からすれば必要ないと考え、弁護もかかる私見に基づいて行いました。
婚姻取消の調停及び審判を提起
民法の規定によれば、家庭裁判所への請求が必要であり、速やかに婚姻の取消しを求める調停を提起しました。
本件では、婚姻の解消についていえば、離婚も婚姻取消も効果が大きく異ならないことから、相手方の合意も得て、合意に相当する審判をすることができました。
実務上、審判に至らず調停が終了した場合は婚姻の取消しの訴えを起こすことになっています。
結果的に、①取消原因があることに当事者間に争いをなくすよう調整し、②事実の調査により取消原因を認められ、③調停委員会が相当と認めてくださったのと考えられます。
婚姻の取消しという形式にこだわらず総合的な解決
最初に示したように、依頼者は離婚歴を残したくないという付加的な理由もあり、真実のとおり、離婚ではなく婚姻取消しを望んでいました。そして、その他のところで、利益考量的な話合いができたことが良かった点ではないかと思います。
本件は、実務上、出会うことが少ない婚姻取消を実現したという意味で、実務上の参考にもなるかと思います。
弁護士費用
詳細は、こちらをご覧下さい。