単身赴任夫婦の婚姻費用をどう決めるか?
父母間が単身赴任をしている場合、週末帰宅するなどの事情で婚姻費用でどのように婚姻費用を決めるか。
相談者情報
XとYは、ともに働いているところ、Yは先進的な取り組みをしている企業に就職するため、A市に移転してしまった。これは、企業の事業範囲がA市のみであったことから、単身赴任が始まる時点においては、XとYが話し合った結果であった。
しかし、こども甲、乙、丙がそれぞれ大学に進学する年齢を迎え、食費や学費が高くなるところ、Yは、気分は「独身貴族」となってしまい、X、甲、乙、丙に対して、適切な婚姻費用の分担をしているとはいえなくなった。
なお、XYはいずれも、フルタイムで働いており、年収は500万円を超える。
Yは婚姻費用分担義務を含め、大きく争った。
調停では、Xは単身赴任をしているに過ぎず、経済的協力関係が続いているため、婚姻費用分担義務がない、平日の夕食に弁当を手配しているため主たる監護者は自分である、住宅費用について、ローンの支払いが終わったXY共有名義の家にXが居住していることから婚姻費用は減らすべきであること、乙の大学の学費の加算調整が認められるか、週末にYが帰宅する際の小遣い銭が既払い金として認められるかなど―単身赴任ならではともいえるが、争点は多岐にわたった。
それぞれについて、当方の言い分の多くが認められた。
第一審では、当方の言い分が多く認められました。控訴審では既払い金についての認定が一部変更されましたが、多くの点に変更はありませんでした。
まず、単身赴任において経済的協力関係が継続しているので、婚姻費用分担請求をすることはできないと主張した点については、当事者間で婚姻費用分担の合意はないと認められました。
また、夕食の弁当を手配をしている点は、一部、第一審と抗告審で判断が分かれましたが、1週間のほとんどを空けているのに、夕食の弁当を手配しているから監護者であるとの認定は相当とはいえず、原審裁判官の判断の方が妥当であると考えます。
控訴審は、原審が指摘した①Xとの協議がないこと、②意向に反していることに対する説明がなく、これでは濫りに弁当を手配すれば婚姻費用を減らせることになりかねず、合理性がないことは明らかです。ただし、控訴審も一切の事情として一定額を「推認」で認定しているに過ぎず、当方の主張が完全に否定されたものではないと考えています。
また、現在、夫婦XYの共有名義で、住宅ローンがない場合、ひとりで占有するXの側は婚姻費用が減じられるのではないかという新しい論点がありましたが、この点は、当方の主張のとおり、Yが精緻な議論をしているわけではないことや、週末に帰宅しYが使用している部分があることを指摘して、当方の言い分が認められました。
既払い金の認定について
本件では、様々な争点がありましたが、既払い金の認定が争点の一つであり、抗告審がYに命じた既払い額も共稼ぎの夫婦でありながら、200万円を超えるものでした。
実際のところは、Yにとっては、予期せぬ結果になったのかもしれませんが、Y側の弁護士がきちんとしたアドバイスをしていれば、裁判所からXの意向に反する費用負担などと事実認定されることもありませんでした。
また、Yが手配した夕食弁当は、甲乙丙に不評で実際は、こどもたちは食べていなかったなど、Yの不合理な行動のため、経済的合理性を損なわれた事例ともいえるかもしれません。
しかし、弁護士を就けながら、そのような不合理な行動に出たのは極めて残念なことでした。
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