個人事業者の夫の収支がマイナスであった場合の婚姻費用
個人事業者の夫の収支がマイナスであった場合の婚姻費用
相談者情報
Aさんは1歳のこどもがおり、Bさんは夫です。
Bさんは、個人事業主で、美容師のような仕事をしています。
確定申告書をみると、課税される所得はゼロ、収支もマイナスになっていました。
夫の収支がマイナスでも婚姻費用分担を請求できるのでしょうか?
夫の収支がマイナスであるということは、夫の「総所得」はゼロと認定されてしまう恐れがあります。妻の所得も100万円前後であったことから、夫から婚姻費用をもらえるかは誠実な問題でした。
夫側には大手法律事務所が就きましたが、婚姻費用の暫定払いをすることもありませんでした。
確定申告書の矛盾をついた。
私たちは、営業赤字が多すぎること、売り上げが正確に反映されているか疑問であること、同種業者と比較して所得が少なすぎること、経費に水道光熱費が計上されておりなぜ事業所を持っていないのに水道光熱費が経費になるのか、旅費日当、損害保険料の支払いについても相当性に疑義が残ると指摘しました。
かくして私は、税理士の立場からも、このような事業は通常維持できない(倒産する)はずで何らかのからくりがあるはずだと主張しました。
相手方は確定申告から機械的に認定するよう求めたが・・・。
裁判所から、調停案が出されました。名古屋家裁で調停案が示されることは珍しいかもしれませんが、調停委員の先生がとても聡明なコンビであったことからこのような展開になったのかもしれません。
女性側の収入はこちらの主張どおり。
相手方の収入については、
「・・・の仕事をしており、令和4年度確定申告書を提出するが、事業収入が195万円であるのに対して、事業所得が約150万円のマイナスとなっているところ、損害保険料、旅費交通費及び出張費の費目が不自然に高く、また、外注工賃、地代家賃及び専従者給与については、相手方の仕事の内容からしてその実態が不明確であることに加え、従前、申立人と同居していた際の生活水準からしても、確定申告書には不自然な点が多く、事業所得はそのままを採用することはできない」とされました。
そのうえで、「旅費交通費、出張費、損害保険料、外注工賃、地代家賃、専従者給与については経費として不相当」とされ持ち戻しの対象とされ、相手方の総収入が計算されました。
なお、本件では、妻が一定額を別居の際に持ち出していましたが、「その清算は、原則として、財産分与で考慮すべきであって、婚姻費用において考慮しなければならない程度に義務者が過酷な状況に置かれている事情まではうかがわれない」として考慮の対象とはされませんでした。
弁護士費用
詳細は、こちらをご覧下さい。