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DV、不信感、嫌悪感で父母間の協力が期待できないとして却下した事例

申立人(父)と相手方(母)の離婚後、非親権者申立人が親権者相手方に対し、申立人と未成年者(長女七歳)との面会交流の時期・方法等について審判を求めたところ、申立人の暴力的言動、相手方の申立人に対する不信感や嫌悪感は深刻で父母間の協力関係は期待しがたく、第三者機関等の関与があっても円滑な父子面会の実施は期待しがたい等として、申立人の面会交流の申立てを却下した事例

シュシュとのパースペクティブ

シュシュ:平成27年のように原則実施説の中で、間接交流すら認めないで、申立てを却下するというのは珍しいですね。

弁護士:そうですね。私が担当した高葛藤事例でも、高裁で間接的面会交流は認められました。

シュシュ:裁判所は過去の事実関係を重視するので、どのような経緯があったの?

弁護士:一例を挙げると父が母に対して,母の右目を手拳で殴り、右眼窩底吹抜け骨折の傷害を負わせたり、母の足を蹴るなどの暴力をふるい、右頸部・右肘・左大腿・左膝・左下腿打僕の傷害を負わせたことがあった。こうしたことから、母は、父の暴力から避難すべく、警察等に相談しながら別居の準備を進め、子らを連れて大阪市内の自宅を出て、仙台市内に転居したという事情があります。加えて,大阪地方裁判所において、配偶者暴力に関する保護命令の申立てをし、保護命令が発令された。しかし、保護命令発令期間中、父が母や子らに度々接触したことから、仙台地方裁判所において、再び保護命令が発令された。ところが、父は、その後も同人の家族や知人等を通じて、母に対し、子らと面会交流させるよう働きかけるなどしたことから再々度の保護命令が発令されたという特殊事例ですね。保護命令をここまで受けていて、このような事情がある場合、面会交流のルールを守ってもらうことも無理でしょう。その後いろいろ小競り合いがあったようです。

シュシュ:裁判所は父母間の高い緊張状態を挙げていて、最近ではめずらしいですね。エフピックなどを用いれば問題なさそうです。引くと、「未成年者との面会交流にかかる申立人と相手方との間の紛争状態は長期間にわたっており、高い緊張状態が続いている。」と指摘していますね。

弁護士:確かに、父母間の葛藤を理由とする例は珍しいですね。本件は面会交流調停は母の保護命令が却下された後の話しなので、裁判所によるあっ旋が始まると考えても良いという事例とも考えられます。裁判例の指摘も母の事情をかなり挙げています。引くと、「申立人の希望どおりの面会交流をさせない相手方を「虐待者」「異常者」などと呼び、相手方の心情を慮ることなく強い言辞で非難し続けたり、相手方の意に反することを十分に認識しながら再三にわたって相手方や未成年者に話しかけたり、連絡を取ったりして、自らの希望を実現しようとしている一方、相手方は、精神的に疲弊しているのみならず、申立人に対する強い不信感や嫌悪感を抱いている。」と信頼関係の欠如を指摘しています。

 続けて、「このように、申立人と相手方の相互の不信感は相当深刻であり、容易に解消できるものではない。申立人と未成年者との面会交流を実施するに当たっては、非監護親である申立人と監護親である相手方との協力関係を築くことが必要不可欠であるが、こうした状況においては、上記協力関係を期待することは極めて困難であり」「また、面会交流を実施した場合には未成年者が葛藤に陥りやすい状況にもあるといわざるを得ない。これまで様々な関係者等の関与があったにもかかわらず実効的な意味をなさなかったことや申立人の言動等からすれば、適切な第三者や第三者機関の関与があったとしても円滑な面会交流は到底期待できない」としています。父母の葛藤状態が高く、あまり認定を示さないで忠誠葛藤を示している点は珍しいと思います。

 そして、「従前行われた申立人と未成年者の面会交流が必ずしも円滑に実施されたとはいえないこと等からすれば、相手方が、申立人において、面会交流のルールを遵守しないのではないかとの疑いを抱くのも不自然不合理なことではない」と指摘し、「申立人は、自らの行為が相手方や未成年者らに与えている影響を十分に認識しているとは言い難い。」と批判していることが考えられます。

 そして、ある意味の裁判規範ともいえると思うのですが、「申立人において、相手方の監護を尊重し、同人や未成年者の心身の状況、生活状況等に配慮した適切な面会交流を期待することも困難」と指摘していて面会交流のルールを守れない場合は間接交流すら考慮しないことの一つの要素としていると考えられます。

シュシュ:射程が広いと影響が大きそうだけど

弁護士:やはり本件は刑事告訴されたら傷害罪で逮捕されてもおかしくなかった事例であること、保護命令が数次に出されていることがありますが、一定の時の経過が生じた場合にどうするか、ということが問われた裁判例といえるかもしれません。正直論理的基盤は盤石とはいえないですが、父母間の協力関係を期待することが困難としているのと、大阪から父自体も合理的理由もないのに仙台に引っ越しをするなど、社会的相当性からの逸脱の程度が判断された可能性もないとまではいえません。

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