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HOME > 離婚の手続き・流れについて > 婚姻を継続し難い重大な事由で別居期間が1年余りで認められた裁判例

 名古屋の離婚専門弁護士のコラムです。

 本件は、婚姻期間約19年、別居期間1年の夫婦について、婚姻を継続し難い重大な事由は認められるとした大阪高決平成21年5月26日家月62巻4号85頁を紹介するものです。

 婚姻を継続し難い重大な事由については、破綻の主観的要素と破綻の客観的要素が必要となります。一方に夫婦共同生活の意思の放棄があれば、後は客観的要素に照らして婚姻が破綻しているのかを判断することになります。

 離婚弁護士としては、総合的な評価といっても、結婚生活の全部が評価の対象になるわけではありません。婚姻共同生活における特に重要又はエピソードである必要があります。したがって、日常生活における相手方の言動に対する不満などは、直ちに破綻の評価に結び付くわけではありません。「婚姻を継続し難い重大な事由」は、重視すべきものとそうでないものがありますので、それを峻別する作業が必要になります。

 客観的要素では、長期間の別居、被告の有責行為、性格の不一致が挙げられます。この点、離婚弁護士としては、中核は長期の別居と被告の有責行為にあると立論をします。実務上は、長期間にわたる別居には特別な位置づけが与えられています。すなわち、被告の有責行為は客観証拠がないなど認定が困難な場合があります。ところが、別居期間の長さに着目して、別居期間が長いと破綻を推定する機能が働き有責性の立証を不要にするものと考えられるのです。

 本件では、別居期間は短期間でした。通常は、離婚は認められないだろうと判断されることが裁判官としては多い判断と考えらえれます。しかし、あきらめないことが大事です。

 別居が短期の場合は破綻が推定されることがありません。そこで積極的に離婚事由につき被告の有責行為の認定の立証が必要になることになります。

 ここでは、有責性として重大な侮辱が挙げられています。配偶者に対して耐えがたい侮辱的言辞を弄することや言葉によらない侮辱的行為に及ぶことは、重大な侮辱として婚姻を継続し難い重大な事由となります。本件判決は、別居期間が短いときであっても、他の有責性を示す事情があれば婚姻破綻が認められた例である。妻の夫に対する問題行動であって、当該行為自体に問題が大きい場合には、当該行為の経過は考慮には限界があるというべきでしょう。すなわち、「当該行為自体の問題が大きいときには当該行為に至った事情を考慮するにも限界があるといえよう」と解されています。本件では夫を軽んじる発言、先妻の位牌を投げつける、青春時代の思い出を焼き捨てるといった自制の薄いあてつけ行為があったという経過があります。そして、あてつけというには、余りにも人生に対する配慮を欠いた行為と断じて、これら一連の行動が夫の人生でも大きな屈辱的出来事として、その心情を深く傷つけるものであること、精神的打撃を理解しようという姿勢に欠けることなどから修復可能性を否定し、婚姻を継続し難い重大な事由があると認めたものです。

大阪高決平成21年5月26日家月62巻4号85頁

1 事実経過等
   証拠(甲1ないし8,乙1ないし3(書証については枝番号を含む。),原審控訴人・被控訴人各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 控訴人は,昭和55年ころ,貸金の返済の代わりに飲食店(バー)の営業権を引き継ぎ,その店のママとして働くことになった被控訴人と知り合った。
    当時,控訴人は,貿易会社を経営し,先妻Dがいたが,被控訴人と交際し,昭和59年×月×日,その間に長女Cが出生した。被控訴人は,長女が出生したころ,仕事を辞めた。
(2) Dは,昭和64年×月×日に死亡した。
(3) 控訴人と被控訴人は,平成2年×月×日婚姻の届出をし,そのころから,長女と三人で同居するようになった。
    控訴人は,被控訴人と同居するに際して,被控訴人の求めやこだわりを容れて,自宅マンションを改装し,Dの衣類等生活のにおいを残す主な持物を処分した。そして,被控訴人は,同居に際して,各部屋に札を貼ってお祓いをした後,生活を始めたという経過があった。
(4) 平成9年,控訴人が経営していた貿易会社が倒産し,特別清算手続が開始され,控訴人は,平成11年ころから,貿易関係の会社の顧問として働くようになったこともあって,当初の50万円から逓減したとはいえ,平成19年でも月額30万円の生活費は入れていたが,生活費が減ることに被控訴人が不満を募らせ,その多寡を巡って控訴人と口論になることもあった。
(5) 控訴人は,平成6年ころから○○○○の持病をもち,平成15年×月,△△△△で手術を受けた。
    控訴人は,それまでは家族三人がリビングで食事を共にしていたが,退院後は,被控訴人が夕食をトレイで控訴人の自室に運ぶのを待ち,そこで一人で食事をするようになった。また,被控訴人は,控訴人のために朝食や昼食の準備をしなくなり,控訴人は,朝食を一人で用意して食べ,昼食は一人で外食をしていた。
    そして,このころから,被控訴人は,長女の勉強の邪魔になるからと言って,控訴人がリビングに入るのを嫌がるようになり,控訴人は,自室で一人で過ごすことが多くなり,家族団欒の機会がなくなった。
(6) 被控訴人は,実家が○○宗を信仰していたことなどから,平成10年ころから,毎月,○○宗の○○寺の写経会に通っていた。
    長女は,平成18年4月,○○大学大学院に入学し,同年秋ころから,論文の作成などで自宅で深夜まで勉強をするようになり,それに被控訴人が付き合うため,両者の生活は昼夜が逆転するようになった。
    また,このころ,長女は,大学院内でセクシャルハラスメントの被害を受けたとして,精神的に不安定な状況になり,そのことが影響してか,被控訴人は,不浄を払うと称して,自宅の玄関,便所,浴室等に,コップに塩を入れて置いたり,長女と一緒に深夜に○○宗の経を唱えたりするようになった。
    控訴人は,被控訴人に対して,昼夜が逆転した生活や深夜に経を唱えることを改めるようにとたしなめたが,被控訴人は,「昔の人間は口を出すな。」とか,「大学も出ていないのに,口出しするな。」,「上の階の人も夜中に喧嘩をして騒がしいことがある。」という趣旨のことを言い返すだけであった。控訴人は,被控訴人の上記のような言動を,宗教的奇行であり,老人扱いをして,家族の一員として処遇しない冷たい仕打ちであると不満を蓄積させながら,リビングに出入りできず,一人で食事をとる生活を続けていた。
(7) 被控訴人は,平成19年ころから,控訴人の妹の嫁ぎ先の告別式や法要を欠席し,長男の妻の両親の来訪を受けても部屋に閉じこもって顔を見せないなど,控訴人の親戚縁者を疎んずる傾向が高じていたが,平成20年×月×日,前触れもなく,自宅の仏壇に祀られていた先妻の位牌を,百貨店の紙袋に包んで,長男の妻の実家である△△宅に送り付けた。その位牌の包みには,在米中の長男に送ってほしいとのメモが添えられていたが,もとより,控訴人や長男には一言の相談もないままの行動であった。
    長男の妻の母親は,同月×日,突然位牌を送りつけられたことに驚愕し,長男と控訴人の妹であるFに連絡した。そして,長男は,アメリカから控訴人に電話をかけたが,被控訴人が控訴人に電話を取り次がなかったことなどから連絡が取れず,Fに連絡し,Fが,同日,控訴人宅を訪れ,控訴人に対して先妻の位牌の確認を求めたため,控訴人が仏壇を調べて,初めて位牌がなくなっていることに気付いた。
    そこで,控訴人は,被控訴人に位牌の行方を質すと,被控訴人は,平然と,先妻の位牌は子である長男が祀るのが当然であるから,嫁の実家(△△宅)に送って長男に届けてもらうことにしたという趣旨のことを答えた。そこでFが,控訴人の承諾なく,勝手にそのようなことをするのは筋が違うのではないかなどと口を挟むと,興奮した被控訴人は,Fに対して,「○○家のことに口を挟むな。」,「帰れ。二度と出入りするな。」などと悪態を吐き,Fの腕を掴んで,玄関まで引っ張るなどした。
    その後,控訴人は,△△宅に家族の不始末をわびて,位牌を送り返してもらった。
(8) 控訴人は,位牌の件でひとり悶々と考えるうち,平成20年×月×日,ふと気になって部屋の中を探したところ,戸棚の中にあった控訴人のアルバム10数冊(控訴人の両親,親族,学友や戦友との写真などが収められたアルバム1冊のほか,長男の成長過程を撮影した写真のアルバム等が含まれていた。)がなくなっていることに気付いた。
    これらのアルバムのうちの1冊は,長男が米国に持っていっていたが,被控訴人は,平成19年×月ころ,それ以外のアルバムを中身を全く確認することなく,○○寺で行われた大護摩の際に焼却していた。
    控訴人が,被控訴人にアルバムの所在を尋ねると,被控訴人は,「全部捨てた。」,「Eも嫁も邪魔になるから処分してくれと言っていた。」,「嘘だと思うのなら,電話して聞いてみろ。」などと居直った弁解に終始した。
    控訴人は,自身の人生史が刻まれたアルバムの焼却という思いもしない出来事に度肝を抜かれ,被控訴人を詰問したが,逆に,被控訴人から,幸せにしてやると言っていたのに,騙されたなどと,控訴人が経営していた会社が倒産し,生活費も次第に減っていることなどについて責められた。
(9) 控訴人は,平成20年×月×日,菩提寺の△△寺を訪れて,住職に被控訴人のことを相談した。そして,住職から,被控訴人が,平成19年×月末ころ,控訴人に無断で△△宗の古い教本や控訴人が作成した先祖の過去帳を処分してほしいと持ってきたことを聞いた。
    控訴人は,被控訴人が何か悪い宗教に取り憑かれているのではと思い,被控訴人が通っていた○○寺を訪れて,住職に相談したところ,○○宗ではそのような教えはしていない,昨年の大護摩のときに,被控訴人が大きな荷物を運び込み,焼却してほしいと頼まれたことがあったと聞かされた。
(10) 平成20年×月×日,長女の○○大学大学院の卒業式であり,被控訴人と長女は,卒業式に出席したが,控訴人は自宅にいた。
    被控訴人と長女は,卒業式終了後に,長女のセクシャルハラスメントの問題について学長と話し合っていたことから,帰宅が遅くなり,午後9時30分ころに帰宅した。
    控訴人は,帰宅した被控訴人に食事を作るよう求めたところ,被控訴人と口論となり,我慢がはじけて自宅を飛び出し,そのまま,弟宅に泊まった。控訴人は,これまでは,被控訴人に死に水をとってもらおうと,被控訴人の言動にも耐えていたが,位牌の件やアルバムを処分されたことなどから,もはや一緒に暮らしていくことは耐えられないと感じ,離婚を決意し,F宅にしばらく身を寄せた後,ワンルームマンションを借りて別居し,夕食だけはF方の世話になっている。
 2 争点(民法770条1項5号の離婚原因の有無)について
   上記1認定事実によれば,控訴人,被控訴人の結婚生活は,夫婦破綻を来すような大きな波風の立たないまま約18年間の経過をみてきたのに,控訴人による今時の別居生活が,平成19年から始まった被控訴人の一連の言動が主な理由であるため,双方の年齢,家族関係,婚姻期間等だけをとりあげて論ずれば,いまだ十分に婚姻関係が修復できる余地があるとの見方も成り立ち得ないではない。
   しかし,被控訴人の控訴人の親戚縁者と融和を欠く忌避的態度はさて措き,齢80歳に達した控訴人が病気がちとなり,かつてのような生活力を失って生活費を減じたのと時期を合わせるごとく始まった控訴人を軽んじる行為,長年仏壇に祀っていた先妻の位牌を取り除いて親戚に送り付け,控訴人の青春時代からのかけがえない想い出の品を焼却処分するなどという自制の薄れた行為は,当てつけというには,余りにも控訴人の人生に対する配慮を欠いた行為であって,これら一連の行動が,控訴人の人生でも大きな屈辱的出来事として,その心情を深く傷つけるものであったことは疑う余地がない。しかるに,被控訴人はいまなお,これらの斟酌のない専断について,自己の正当な所以を縷々述べて憚らないが,その理由とするところは到底常識にかなわぬ一方的な強弁にすぎず,原審における供述を通じて,控訴人が受けた精神的打撃を理解しようという姿勢に欠け,今後,控訴人との関係の修復ひとつにしても真摯に語ろうともしないことからすれば,控訴人と被控訴人との婚姻関係は,控訴人が婚姻関係を継続していくための基盤である被控訴人に対する信頼関係を回復できない程度に失わしめ,修復困難な状態に至っていると言わざる得ない。
   なお,被控訴人が,子供までなした長年の愛人関係に終止符を打って,先妻を亡くして間もない控訴人との結婚生活を始めるに当たり,自宅の改装や先妻の生活の痕跡を残す動産類の処分やお祓いにこだわったのは,家庭内に先妻の痕跡を残したまま新たな生活を始めたくないとの妻の心理の発現として,それなりに理解できないではないものであるが,そのような再婚のいきさつを考慮しても,先妻の位牌,先祖の過去帳を中心とする祭祀や,戦前からの控訴人及び一家の写真アルバムの保存等は,控訴人が再婚に当たって被控訴人に配慮すべき事柄とは無関係であって,それゆえ,被控訴人も,これを受け容れて夫婦間の軋轢が生じないまま曲がりなりにも結婚生活が送られてきたものといわねばならず,結婚後十数年も経過して,改めて問題にすベき事柄とは考えられない。
   したがって,別居期間が1年余であることなどを考慮しても,控訴人と被控訴人との間には婚姻を継続し難い重大な事由があると認められる。
3 以上によれば,控訴人の離婚請求は,理由があり,これを棄却した原判決は相当でないから,本件控訴は理由がある。

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