親権・監護権

名古屋駅ヒラソルの離婚法5-親権者になるには?

親権を争った場合に勝てる見込みはどれくらいか

Step1.親権者とは何ですか?

1 親権者とは
 結婚中は共同親権行使となります。こどもの夫婦が離婚をするためには、日本では離婚後は単独親権行使となっているので、どちらか引き取る方が一方だけ親権者になります。親権者というと、わかりやすくいうと、こどもを育てるにあたり義務を負う者ですが、こどもと一緒にいられる権利というように考えている人もいるようです。また、通帳を作ったりあまりないとはいえ、こどもの財産を代わりに管理する親ということになります。ただし、こどもはそれほど財産を持っていませんので、実際上は心情監護権が中心になると思います。
 繰り返しになりますが、身上監護権を中心に、財産管理権、法定代理権を親権者が持つことになります。昔、親権者は父、監護権者は母ということがはやった時期がありましたが、財産管理や通帳を作るなどこどもに関する事務は父しかできないことに不便があるということで、現在は、親権者は、監護権者とイコールになるケースが多いように思われます。

Step2.親権者の指定はどのようになされていますか。

2 親権者指定の判断基準
 日本では、1980年以降、共同親権化に進まなかっためずらしい国の一つです。アメリカでは、1980年までは、キリスト教と相まって女性は不倫をしないという宗教的信仰から母子優先の原則(テンダーイヤーズ)という考え方が浸透しており、不倫などをする反道徳的な母親でもない限り、親権は母親が取得していました。日本は、この時代のアメリカの立法がそのまま現在の運用として定着しているので、親権を希望するといっても、テンダーイヤーズという考え方が強いということは押さえておきましょう。
 一般に親権者の指定について、考慮すべき具体的事情なのですが、アメリカでは、実証的研究によりテンダーイヤーズに根拠がないことの論証がされ、裁判所の考慮要素は論破されてしまいました。このため立法政策が共同親権又は単独親権+長期の面会交流という建付けに変更されました。テンダーイヤーズという判断基準がなくなり最も困ったのが、裁判官といわれています。唯一絶対の基準に「根拠がない」というレッテルを貼られてしまったからです。

Step3.我が国の親権裁判には明確な指針は欠けている

 ですから、我が国における考慮事項もやや後付け感があるものと考える方が妥当のように思います。父母の側では、監護に対する意欲と能力、健康状態、経済的・精神的家庭環境、居住環境・教育環境、子に対する愛情の程度、実家の資産、親族などの監護補助者の援助可能性、こどもの側では、年齢、性別、きょうだい不分離、心身の発育状況、こども本人の意向などが挙げられているのです。

Step4.監護の安定性

3 監護の安定性(継続性の原則)
 継続性の原則というのは、こどもの現在の環境を変更させないことが子の福祉に適うという考え方です。つまり、父母いずれが親権者にふさわしいかではなく、現在を維持すればそれでよいという考え方で、ときに不当な結果を招くこともあります。この原則は、現実に形成されている親子間の精神的結びつきを重視しており、ならば精神的結びつきが強い親に監護させるのが、子の最善の利益にかなうという考え方です。ただし、こどもは父母双方に精神的つながりをもっており、かかる監護の安定性ばかりを重視するのは不当との見解もあります。

Step5.母子優先の原則

4 母子優先の原則
 1980年のアメリカであった裁判の原則で、現在では「廃止」されていますが日本では、現在も重要な解釈指針となっています。これまで母親が監護してきたのだから、引き続き母親に監護がなされるべきという考え方です。また、テンダーイヤーズといって、女性はきめ細やかであるので子育てに向いているというジェンダーバイアスに基づいた基準ともいえます。
 もちろん父親にも「母性」があり、ここにいう「母性」とはこどもに対する情緒的な「質的」「量的」なつながりのことをいいます。したがって、父親であってもこれまで育児に積極的に関わり、あるいは、共働きの場合は、親権者となるチャンスはないわけではありません。もっとも3歳までのこどもについては女児は女性に母子優先の原則を適用する考え方が寝強いことを有力裁判官が明らかにしています。

Step6.主たる監護者基準

 主たる監護者という概念があり、主にこどものニーズに応えていた側が親権を取得するという考え方です。ただし、最近は保育園の活用や主たる監護者も共働きで分からなくなっていることに照らして相対的なものと考えるべきでしょう。主たる監護者の基準は、アメリカのウェストバージニア州最高裁判決が示したものですが、その後、ウェストバージニア州では、「基準があいまいすぎる」という批判に耐えられず、結局、共同親権に移行することになりました。ですから、主たる監護者基準においても、裁判官の家族観や主観に左右されることは大きいからこそ、客観的証拠により、これまでのこどもの食事を作ったり、食べさせたりしていたのは誰か、入浴はどちらが行っていたのか、遊んでいたのは誰か、学校の送迎は誰がしていたのか、寝かしつけはどちらがしていたのか、家庭内での読み書きなどしつけをしていたのはどちらか、こどもの友人を作るアレンジをしていたのは誰か―などを総合的に判断します。
 しかし、例えば、私の姉のように公務員の場合、父母が同じくらい働くというのは普通で、父親が働きすぎで病気になってしまい、母親がメインで労働し父親が家事をするということもあり、父親が主たる監護者である場合もみられます。

Step7.過去の監護実績が重視されている。

 主たる監護者というのは、主たる監護者に「継続的」に監護されるのが望ましいという意味合いですから、母子優先の原則のようにプライオリティがあるわけではなく、過去の監護実績が主な評価の対象になると考えておきましょう。

Step8.こどもの意向

4 こどもの意思
 最近は、監護の安定性、母子優先の原則に加えて、こどもの意思・意向が決め手になるケースも増えています。人事訴訟と家事事件手続法では、こどもが15歳以上の場合、裁判所は、親権者を指定するにあたって、こども本人の意向を聴くことになります。当然、こどもの意向は最大限尊重される必要があります。
 また、実務でも10歳以上のこどもの意向は原則として裁判所は重視する傾向にあるといってよいでしょう。それより幼いこどもについては、調査官調査やカウンセラーの調査を受けさせても「パパもママも両方好き」と答えるケースが多く、最終的には、こどもの意思ではなく心情を聞き取ったうえで、父母どちらの環境等が優れているかで判断しているように思います。

Step9.兄弟不分離の原則

5 きょうだい不分離の原則
 兄弟不分離の原則は、以前はほどんど重視されていませんでした。しかし、上記のとおり、裁判所には親権者指定にあたり、指針になるものがほとんどありません。そこで、最近は、兄弟不分離の原則に特別な意味を見出そうとしている傾向にあります。具体的には、兄弟は一緒に生活した方が情緒が安定し人格形成や人間関係の形成に役立つという点が根拠とされています。
 もっとも、裁判官によっては、ウェイトの置き方が全く異なり、兄弟の情緒的つながりが弱い場合、あるいは、現状が分属して定着している場合などには、解釈指針としては一歩後退している印象があります。

Step10.妻が有責配偶者で不倫をしている場合はどうか

6 有責性は考慮されるのか
 妻が不貞行為が原因で離婚された場合、一般的な協議離婚では、妻を親権者とはしない傾向が多少みられます。これは、1900年代のアメリカで母子優先の原則は「妻が貞淑であること」という条件の下でテンダーイヤーズが採用されていたことと関係があります。
 このような場合、協議離婚では、妻が親権者になった場合、夫は離婚し家事労働の利益を失い、こどもとの情緒的交流も失い、かつ、高額の養育費を不倫妻に支払うという結果になってしまいます。
 したがって、一般的な協議離婚実務では、離婚届で離婚する際、不倫妻もこどもがいると再婚に不利に働くということもあり、こどもを手放す傾向にあります。したがって、この場合は協議離婚で、親権を取得することが重要です。しかし、裁判実務上、アメリカでは、その後、「女性は不貞などするはずがない」という信仰がまん延したこともあり、その結果、我が国でも、相手方の有責性と親権者の判断は別物と考えられています。したがって、妻の不貞行為を理由に親権者としてふさわしくないという主張は難しいのですが、多くの社会通念は、裁判所実務を非常識と考えているので、男性にしても、女性にしても離婚弁護士に相談されながら物事を進めるのが良いでしょう。不貞行為がこどもの監護に害をもたらしている場合は、そのことをもって親権者としてふさわしくないという主張は可能です。
 いずれにしても、裁判実務では、監護の継続性という観点から親権を取得する可能性は高くなるというべきです。現状において、親権者と判断される可能性が低い場合、面会交流の量的拡大を求めるか、離婚をあきらめるかの選択をしないといけないことになります。

Step11.親権弁護士とシュシュとのパースペクティヴ

7 シュシュとのパースペクティブ
シュシュ:僕のパパはさ、ママに好きな人ができちゃったんだよね。
弁護士:うん。パパさんは一時的なものとして戻ってくることを期待したんだよね。
シュシュ:うん。でもすっとママはいなくなって離婚届が送られてきていたよ。
弁護士:どうだった。
シュシュ:うん。僕はね、離婚協議を自宅でしていたから、僕のこともどちらが引き取るかとかさ、理性的なパパとママでよかった。僕の気持ちに沿っていたから。
弁護士:パパさん、何か言ってきた?
シュシュ:裏で暗躍しているのは知っていました。学校とか、友人の両親にいろいろ僕が情緒不安定じゃないか聴いて回っていたよ(笑)
弁護士:それでどうしたの。
シュシュ:僕はさ、やっぱり、ブリュッセルで生まれてベルギー人なんだよね。パパとママが日本人でも幼稚園からずっとフランス語だったしね。それに兄弟のようなアレックスもいるし、今の環境から日本に行くというのは、不安の方が大きかった。僕はさ、パパの実家に帰ってもうまく日本語が出てこないことがあって、生活の90パーセントはフランス語だからね。それでね、「僕はパパとずっと一緒にいたいけど、いい?」っていいました。まだ、8歳だったけど、意向を尊重してくれて、嬉しかったです。
 日本的な見方でいうと、パパは建築士だから自宅で設計しているんだよね。だから家事もするし外食嫌いだし。仕事以外の学校の送迎はベルギーでは義務なんですけど、その義務を果たしてくれたのもパパだった。だから、過去のコミットメントもそうだけど、今後とも全体的にみて、パパは主たる監護者に近かったといえるでしょうね。自宅で仕事をしている自営業者だから。だから世界が狭くなることを心配して、パパには「日曜まで家事しないで、呑みにでもいきなよ」と僕が連れ出しています。
弁護士:ママさんから日本に帰ろうとはいわれなかった。
シュシュ:それは、・・・ストレートにはいわれなかったけど、日本には、僕も旅行で何度もいっているので、「いいところよ」というようにいわれました。でも、目の前の学校もあるし、ついていく気はありませんでした。
シュシュ:ママが自宅を出たけど、完全に自主的でした。その後、パパが建築ルームが欲しいとかいって、引っ越しすることになりました。だから、僕は違法な連れ去り、それこそハーグとか、追い出しとかもなかったかな。でも、その日はさみしくてベルギーでは親子は一緒に寝ないのですけど、一緒に寝て欲しいといいました。なんか幼児化しましたね(笑)

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