親権・監護権

離婚家庭の子育て

離婚家庭のこどもたちは、ほとんどが多少とも自尊心を傷つけられています。こどもたちは、離婚について、パパとママが本当に僕を愛してくれているなら、どうして離婚なんてできるの、と思うとされています。そのうえで自責の念にかられることがあります。 親からみると、離婚問題を切り抜けることがどうしてそんなに大変なのか理解できないのか、と思ってしまいます。

服部弁護士と辻崎十斗くんのパースペクティブ

弁護士:別居や離婚直後にトラウマを体験したこどもに有能で自信にあふれた自己イメージを持たせるため、親ができることは何か、いろいろあると思います。

十斗 :うん。こどもの立場からは「声なき声」ですよね。両親が離婚でバタバタしていて置いてきぼりにされていることもトラウマを援助、助長してしまうと思うよ。でも親って何ができるのかな。

弁護士:現在から将来にかけてこどもの自意識が大きく左右されるということを理解する必要があるよね。裁判官は離婚で親権を決めるとき、これまでの監護実績を重視する傾向にあるのですけど、過去ばかりではなく将来にも目を向けて判断をするべきとの批判が裁判官の中からもあがっています。

十斗 :以前、先生がいってた「主たる監護者基準」とか、「監護の安定性」とかのことです。そうすると、女性が有利になることが多いけれど、そのままフルタイムで働きに出るのが普通だから、こどもは結局孤立してしまうというパースペクティブですね。僕は、結局、パパが建築士で自宅にいて、小学生の間は、送迎は法律上の義務です。だから、送迎してもらうこと自体も愛着関係を深められるんですよね。

弁護士:知っている。フランス語で会話していたら、パパさんのフランス語の文法がおかしくて、十斗から怒られたとパパさんが泣いていたよ、「パパは本気でフランスで生きていく気があるの!」って。でも、第三外国語を覚えるのは大変だから許してあげて欲しいなあ。

十斗 :パパはなんでも話してしまうから(笑)。

弁護士:でも、十斗の不安感もわかるけどね。やっぱりパパがパパでいてもらうためにはフランス語話せるようになってこそ、自分のケアもできるという気持ちがあるんじゃないかな。

十斗 :うーん、そういう心理だったのかな。ある意味、パパに甘えているみたいな。でも、パパってひどいんだよ。学校の説明会の内容も半分くらいしか理解していないし(笑)

弁護士:それで、青人と同じくエチュード(補講)行きに(笑)。難しいなあ、フランスだと中途半端なフランス語を話すくらいなら、今般は英語を学んだ方がいいといわれているんだよね。ビジネスもそれで成り立つし、仕事をする人は仕事の領域の英語は相当話せるからあまり必要性を感じていないのかも。頑張ってフランス語を話しても「あなたが話すフランス語は、アフリカのブルンガ族のフランス語のようです」とか、みな容赦ないからなあ。

十斗 :自尊心ってプライドのことかな。

弁護士:自尊心は、能力、自他にとっての存在価値、自信、チャレンジ精神、他人を尊重する心といった観点から人が自分自身に対して抱く感情や思いのことです。健全な自尊心を持っている人は、成長してから自分で人生の舵取りができる人は、内省的でポジティブな人が多いね。

十斗 :分かるかも。青人は交通遺児だけど、自尊心は傷ついている気がするから、親戚づきあいでバランスをとろうとしている傾向があるかな。また、成績も下がるよね。

弁護士:うん。学校でポジティブなことが起きることよりも、今日、学校で悪いことが起きないかなみないな不安愁訴、集中力の低下かな。十斗もフランス語の成績下がったよね。 十斗 :えへ。それが離婚のせいにできるんだ。そうだ、離婚のせいだ。パパとママが悪いんだ(笑)。でも、パパも先生に呼び出されているから、あまり笑えないけどね。

弁護士:親が子の自尊心を育んであげるには、その子がかけがえのない存在というだけで自分の宝として無条件に愛され尊重される存在だ、という自覚をもたせてあげるといいよね。ただ、行動が伴わないとダメです。世話を焼いたり、話しかけたり、スキンシップをはかったり。その根底には、無条件の愛が必要なのです。 十斗 :勇人さんのママは条件付愛だよね。

弁護士:うん。成績が良ければ愛してくれるとか、愛想がよければ愛してくれるとか、本来親がこどもに与えるべきものを、反対に取ってしまっている側面がありますね。

十斗 :そういえば青人(シュシュ)も、「ママは口でいっていることと心で思っていることが違う。ママがいうことなんて信用できない」といって補導事件起こしたことがあったよね(笑)

弁護士:あれは好きな女の子に独りで会いに行ってしまったという説もあるけどね。

十斗 :でも、悪いけど、成績悪い子や問題児は母子家庭の子が多いよ。その事実には向かい合ってもらわないといけないよね。ほかの子が迷惑するから。

弁護士:心理としては、片方の親を愛するイコール他方の親を愛されないことであるというメッセージを受けてばかりいると、自分の感覚や判断力に対する自信がぐらついてしまいます。また、片方の親を愛したら他方に拒絶されるとか、既に片方の親を失ったこどもは、もう一方の親まで失わないようどんなことでもしなければ、と考えるようになります。十斗が、「パパの飛行機が落ちたら僕は天涯孤独になってしまうよ」といったやつだね。

十斗 :なんども昔のことを・・・(恥)。でも、それからパパは飛行機に乗るときは僕を同行させるようになりましたし、あとあんまり飛行機に国内の移動は乗らなくなりましたね。もうパパ大丈夫だから飛行機乗ってっていわなきゃ。

弁護士:こどもに前の配偶者を敵視させることができたとしても、長くは続きません。そういう親は、こどもの精神衛生を害したり、こどもが親になるとき意趣返しされるものです。具体的には成人したら距離をとられてしまうということですね。再婚を含む親の恋愛問題についても同じことが言えます。十斗は、パパに僕がいるから再婚しないでね、って真顔っていったことがあるんだって(笑)

十斗 :もー!パパはペラペラ話しちゃうんだから。

弁護士:パパさん、十斗が大人になったら孤独になっちゃうといわれたよね。でも十斗は、自分とステディと一緒に暮らせばいいから問題ない、って。何で、ステップファミリーで新しいママに抵抗感があったの?

十斗 :大切なものを2回も失いたくなかったんだよ。

弁護士:再婚を含む親の恋愛問題についても同じことが言えます。こどもがステップファミリーに愛着を持つことができれば、情緒が安定します。他方、こどもの情緒が混乱してしまうことがありますね。また、こどもはロボットではないので大人が話して、こどもは聴くものだという考えは間違っています。こどもにも大人から注目されたいとか、尊重されたいという気持ちがあります。こどもが自分の想いや要求を気兼ねなく口に出せ、また受け入れてもらえるような家庭環境をつくるほうがはるかに建設的です。

十斗 :シュシュを甘やかしているような気がする(笑)。

弁護士:そうかな~。

十斗 :でも、僕もお小遣いはもらっていません。欲しいものがあるときは、パパとディスカッションをして必要性を認めてもらう必要があるんです。だいたい、一生懸命、合理性を説明すると、そうだね、となります。 弁護士:僕もロンドンにいったとき、飛ばないドローンをねだられたかな。そのときもシュシュとちゃんとディスカッションをしたよ。 甘やかしていることと、要求をある程度聞き入れてもらえる場合とは違って、後者の場合、大人に安心感を持ち頼れる存在だと思えるようになるんだよね。そうすると、わがままをいわない、人を信じられるこどもになります。

十斗 :わがままは、ときどきしかいわないようにします(笑)。

弁護士:親が感情をどのように処理するのか、こどもには強い印象になって残ります。例えば、悲しくなると寝室に引きこもる親やいったん起こると歯止めがきかない親をみているとこどもたちは同じになります。

十斗 :当のこどもは親の真似をしているだけなんだけどね。それを否定されると情緒は混乱しますよね。また、パパがフランス語を勉強しろといってもパパがフランス語の勉強を疎かにしていると、やっぱり混乱しますよね。

弁護士:ですから、こどもに教えて諭すことは親もそのまま実行するようにしましょう。 こどもの話しに熱心に耳を傾けるということについて、シュシュとの会話を設例に考えてみましょう。

(良い例) シュシュ:ママ、叔父さんからライン電話があったよ。 ママ  :そう。 シュシュ:今週はブリュッセルにこられないって。 ママ  :そうだったの。青人。 シュシュ:まただよ!信じられない。仕事があるからダメって。これでもう3回目だよ。 ママ  :わかるわ。がっかりしているのよね。 シュシュ:がっかりというより頭に来ているんだよ。僕は会いたいのに。僕、ときどき思うんだ。会いたくないってことは、叔父さんは僕のこおなんて好きじゃないのかな、って。 ママ  :叔父さんはあなたのことが大好きよ。仕事をするよりも、あなたに逢いたいと思っているに違いないわ。大好きな人にがっかりさせられたら悲しくなってしまうわよね。 シュシュ:でも、叔父さん、来週の日本の連休は来れるって。プランを立て直さきゃ。 ママ  :よかったじゃない。今週はママと何かして楽しく過ごしましょ。

(悪い例) シュシュ:ママ、叔父さんからラインあったよ。 ママ  :そう、何かいっていた? シュシュ:今週はダメだって。 ママ  :そうやっていつもがっかりさせるのよね。あの人は。これでキャンセルは3回目ね。どうでもいいのよ。 シュシュ:でも、きっと何か理由があると思うんだよ。 ママ  :ないわよ。きちんと予定を入れておかなかったか、後からの約束を優先させたのよ。そして、あんたが嫌な思いをするのよね。 シュシュ:ママ、そんなことはないよ。ラインではさっきも結構話したんだよ。 ママ  :あら、どうしてそんな顔をするの、気にしない気にしない。けせらせらよ。どうせまた会えるんだから。

十斗  :良い例では、シュシュの自尊心を傷つけていないし、大好きな叔父さんの批判もないよね。これに対して、悪い方は探りを入れられている感じで話しを聞いてくれているって気がしないなあ。あと、ママさんが叔父さんを攻撃しているとき、シュシュは叔父さんを庇う側に廻っているよね。 弁護士 :この場合、ママさんは息子の気持ちを否定し落胆している息子の気持ちを慰めることをすっかり忘れていることと、こどもの前でパパさんの悪口等をいったりすることはよくないですね。こういうふうにこどもの話しを熱心に聞いてあげて欲しいですね。

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