面会交流

面会交流の間接強制金が20万円とされた事案

面会交流の間接強制金が20万円とされた事案

面会交流については、調停成立や審判などの債務名義ができた後、その給付内容(日時、場所、方法等)が特定されている場合は間接強制ができるということで、その特定の程度も最高裁の判決で決着をみることになりました。今回は、相場の5万円から20万円に間接強制金がアップされた事例です。詳しい概要は分かりませんが、妻側が監護者で歯科医でそれなりの収入があるので、養育費や婚姻費用を参考に決められる間接強制金が、その比例から飛び出たものとして理解できるので、話題になったのではないかと思います。

大阪高裁平成30年3月22日は次のように判断して、20万円の決定をしました。

まずは応じなければならない実施要領をみてみましょう。

面会交流実施要領
 1 面会交流の日時
  (1) 第1回
    本決定確定日の属する月の翌月の第2日曜日午前11時から午後2時まで
  (2) 第2回
    第1回の面会交流日(延期された場合の実施日ではなく,上記(1)で定めた日)の属する月の翌々月の第2日曜日午前11時から午後2時まで
  (3) 第3回
    第2回の面会交流日(延期された場合の実施日ではなく,上記(2)で定めた日)の属する月の翌々月の第2日曜日午前11時から午後2時まで
  (4) 第4回以降
    第3回の面会交流日(延期された場合の実施日ではなく,上記(3)で定めた日)の属する月の翌月から毎月第2日曜日午前11時から午後4時まで
 2 未成年者の受渡場所
   D駅改札口
 3 未成年者の受渡方法
  (1) 抗告人又は抗告人が指定する第三者は,上記1の面会交流の開始時に,上記2の未成年者の受渡場所で,相手方に対し,未成年者を引き渡す。
  (2) 相手方は,上記1の面会交流の終了時に,上記2の未成年者の受渡場所で,抗告人又は抗告人が指定する第三者に対し,未成年者を引き渡す。
 4 面会交流の立会い
   抗告人の指定する抗告人の親族又は第三者は,第1回から第3回までの面会交流に立ち会うことができる。
 5 面会交流の延期
   未成年者に病気その他やむを得ない事由が発生して,上記1に定めた面会交流の実施ができないときは,その1週間後の第3日曜日に,同様の条件で面会交流を実施する。1週間後にも代替の面会交流日を設定できないときは,当事者間で協議して,当月の面会交流の代替日を,その次の面会交流の日までの間のいずれかの日に設定し,実施する。

 以上のように最初は2か月に1回ですが、最終的には1か月に1回になるというもののようです。妻側にも一定の配慮は感じますが、改札口で受渡しとなっていることからも合意は成立する雰囲気ではなかったようです。

 大阪高裁の判断の内容は次のとおりです。

相手方は,抗告人との別居(平成27年■月)の後,前件調停前後を通じ,抗告人と未成年者との面会交流を拒否し続け,前件審判手続における親子交流場面調査(平成28年■■月)にも出頭しなかった。その後,本件決定が確定した(平成29年■月)ことにより,相手方は,本決定別紙面会交流実施要領に従って抗告人と未成年者を面会交流させる義務を負い,母方祖父母の協力(立会い,受渡し)を得て,その義務を履行することができたのに(同別紙3項,4項),第三者機関の関与に固執して,面会交流を拒絶し,原審に本件申立てがされても(平成29年■■月),その義務を履行しないことを正当化し続け,原決定で強制金の支払を命じられると,漸く面会交流に応じる姿勢に転じたものである。
 このように,相手方は,抗告人との別居から約3年間,抗告人と未成年者との面会交流を拒否し続け,本件決定後も,これにより定められた義務を任意に履行しなかった。相手方が上記義務を履行したのは,原決定による強制金の支払を命じられた中でのことである。これらの相手方の面会交流に対する約3年間にわたる拒否的な態度等に照らすならば,原決定後に相手方が本件決定により定められた義務を2回程度履行したからといって,相手方が今後もその義務を継続的かつ確実に履行するとみることは困難である。
 したがって,原決定後に相手方が面会交流に応じているとの現状を踏まえても,なお相手方に上記義務を継続的かつ確実に履行させるためには,相手方の収入や経済状況(抗告人から支払われる婚姻費用を含む。)等を踏まえ,相手方に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払を命じる必要がある。その強制金の額については,相手方が歯科医師の資格を有し,現在まで歯科医師として稼働し続け,別件決定時点(平成28年■■月)において,勤務医として年収500万円弱を得ており,その稼働能力が低減したとの事情は認められないことや,抗告人が相手方に対して支払うべき婚姻費用分担金の金額(月額21万円)などの事情に照らし,不履行1回につき20万円とするのが相当である。」とされています。

 金額設定ですが、母親側にも資力がある現代では、これまでのように養育費や婚姻費用を参考にできないケースもあるように思います。

 1 事案の概要は次のとおりである。
 (1) A(債権者・父)とB(債務者・母)とは,平成27年別居し,Bは未成年者(平成25年生)を監護している。AはBに対し,平成27年,大阪家裁に面会交流の調停を申し立て(前件調停),平成29年,毎月1回の面会交流を命ずる審判をした(前件審判)ところ,Bは即時抗告した。大阪高裁は,平成29年,前件審判を一部変更し,当初3回は2か月に1回の頻度とし,第三者の立会いを認める決定(高裁決定)をし,確定した。
 (2) Bは,別居後前件調停までの間,Aに3回ほど未成年者を合わせたことがあったが,前件調停の前後を通じ,面会交流を一貫して拒否し,親子交流場面調査にも出頭しなかった。
 (3) Aは,Bが高裁決定の定めた初回の面会交流にも応じなかったため,平成29年本件申立てをした。Bは,平成30年,原決定で強制金(不履行1回につき5万円)の支払を命じられた後,未成年者との面会交流に2回程度応じている。
 (4) Bは,歯科医師の資格を有し,高裁決定では年収約476万円と認定されている。また,AはBに対し,婚姻費用の分担金として月額21万円を支払うべき義務を負っている。
 2 原審は,上記の事実関係の下で,間接強制金の金額を不履行1回につき5万円と判断した。Aが抗告。これに対し,抗告審は,原決定を変更し,間接強制金の金額を不履行1回につき20万円に増額した、というものです。

 おそらく即時抗告はどちらからもできるのですが、父親側からも即時抗告が出た事例で間接強制が認容されつつ即時抗告するという事例はめずらしいと思われます。

 3 間接強制は、最高裁平成25年をなくしては語れなくなっています。実施要領付となるか、給付が特定されるかという点にも当事者の関心は移ってきているように思います。

 家庭裁判所の調停・審判によって面会交流義務を負う者に対する間接強制の可否については,最高裁平成25年3月28日決定により,給付内容(時間,場所,頻度,子の受渡しの方法等)の特定を前提として,これを認めるという方向で一応の決着をみました。そして必ずしも機械的でなく実質的判断として執行裁判所が申立てを認容するときは,債務者のなすべき作為を特定した上,その履行確保のために相当と認める一定額の金銭(間接強制金)を債務者に支払うべき旨を命ずるものです(民事執行法172条1項)。間接強制金の額は,一般的に,履行命令違反の阻止と債務名義上の執行債権の実現に必要な金額を,心理的強制の目的に即した執行裁判所の合理的裁量によって決するものです。

本件決定では、一般的にいわれる考慮要素を示している点でもめずらしいでしょう。

その考慮要素としては,執行債権の性質(金銭による代替的満足の可否),不履行による債権者の損害,債務者の不履行の態度(変更決定による対処の可否),履行の難易,不履行継続による債務者の利益,不履行の社会的影響などがあるとされている。
 4 面会交流における間接強制金の金額は,裁判例では不履行1回当たり2万円(東京高決平成26年3月13日判時2232号26頁),5万円(前掲最決平成25年3月28日,岡山家津山支決平成20年9月18日家月61巻7号69頁)から20万円(大阪高決平成14年1月15日家月56巻2号142頁の差戻し審である神戸家決平成14年8月12日家月56巻2号147頁,債務者が医師であり資力があることが考慮された)などの例がある。

 実務の考慮要素としては,債務者の支払能力や養育費の額等が掲げられているが,債務者の多くは監護親(母)であり,資力が少ない場合が多いので,金額は低下傾向にあるという指摘もある。ちなみに,東京家決平成28年10月4日判時2323号135頁は,不履行1回につき100万円の支払を命じて耳目を集めたが(債務者である夫の年収が2640万円に上る事情が考慮されたようである),その後,東京高決平成29年2月8日判タ1445号132頁で不履行1回につき30万円に減額されている。
 本件では,間接強制金の額を定めるに当たり,B(債務者・母)が歯科医師の資格を有し,勤務医として年収約476万円を得ていることに加え,A(債権者・父)から月額21万円の婚姻費用の分担金の支払を受けていることが考慮され,原審の間接強制金(不履行1回につき5万円)が20万円に増額されたと考えられる。この点については、実施要領、つまり給付が特定されるか否かが間接強制できるかのポイントであるので、今後、拒否の程度も間接強制額の決定の基準になるのか、帰納的分析が必要であるように思われます。

 現在、審判では、初回から実施要領付の給付を特定した内容の審判になることは少ないように思いますが、拒否の程度が著しい「拒否型」などの場合は最初から実施要領付の給付を特定した判断がなされる傾向にあるように思われます。今後は、「拒否型」について金額も斟酌要素とされる場合、間接強制額と連動させるのも一つの考え方ではないかとも思われます。その意味で現在、「拒否型」でないにもかかわらず実施要領を附している裁判所が多い反動で金額が低下傾向にあるのではないかとも分析できます。

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