再婚家庭構築中でも面会交流も認めた大阪高裁を分析する

本件は、母親が父親に対して当事者間のこどもである未成年者2名(4歳、8歳)との面会交流を求める事案です。  せあらは、瀬戸柊平さんと婚姻して、その後、柊平さんとは協議離婚し、その際、柊平さんは親権に固執したことから、緋生、千騎の親権者は柊平さんとなりました。  その後、柊平さんは、七美さんと再婚し、せあらさんも隆聖さんと再婚したものの、再度離婚し、現在は大輔さんと再再婚しています。  七美さんは、緋生、千騎を養子縁組しました。 弁護士弁護士と伊串法科大学院生の離婚と面会交流をめぐるパースペクティブ 伊串 :本件では、協議離婚の際、柊平さんが二度とこどもと会わないと約束させているうえ、せあらさんは、不倫をして隆聖さんとの再婚に踏み切ったという経過があります。 弁護士:今回は、8歳の子は年齢も高いですからね。それで、柊平さんとしては、こどもを遺棄して出て言っており、身勝手なせあらとは子の福祉の観点から面会交流を認めるべきではないという主張は出てきそうですね。 院生 :しかも再婚家庭、つまりステップ家庭を構築する期間でもあるから七美さんになついてもらえるかどうかという時期でもありますよね。本件では、むしろ面会交流を実施すると相手方が七美さんの悪口をいうなどして、未成年者らが父母の紛争に巻き込まれ、かえって未声援者らの健全な成長、発達を妨げる危険性があり、子の福祉を害するという主張がありました。 かつて、先生も同じ案件で勝訴し、高裁でアファームされた例もありますよね。 弁護士:各裁判体で考え方が大きく変わるのですが、困ったものですね。外形的にみると、第三者的には面会交流制限を1年程度は認めるべきというのが常識なラインです。まだ、こどもは小さいですし可塑性に富んでいますし、七美さんにも母親としての自覚を持ってもらうために、会わせない方がいいだろうと世間の「義理と人情」はそう考えますね。その上、本件は不倫により駆け落ちのような形で出て行ったケースですし、「義理と人情」からは、せあらの自業自得ではないか、またそういう性格から悪性の吹込みも十分考えられるところですね。 院生 :原審は認めましたね。 弁護士:裁判所は、原則実施説ですので、連れ去り、DV、児童虐待、子の拒絶が調停での振り分け要件になっていますね。今回は、どれにもあてはまらないので審判になったのでしょう。再婚家庭の場合、その構築期間の配慮の利益と非監護親の面会交流の利益をどのようにバランスをとるかという問題ですね。 院生 :原審の判決をもらったら先生は怒りますかね? 弁護士:ちょっとね。だって、もう会いませんという当事者間の合意があるうえ、客観的にみても人格形成に資する人物とは思えない。ステップ家庭を築きつつあるのであれば、そちらを重視すべきでしょうね。 院生 :抗告審も棄却でしたね。 弁護士:非訟は裁判官がする行政処分なので、裁量権の逸脱濫用がないとなかなか変更されないのですよね。 院生 :まずもう逢わないという約束は有効なのでしょうか。 弁護士:父母間では公序良俗にも反しないし権利は放棄できるから有効でしょうね。ですから、裁判所が割り込んで「合意に拘束されず、子の福祉の観点から変更できる」としても、勝手に私的自治の合意を変更するし、こういう約束は子の福祉を考慮して合意されていることが多いので、私は事情の変更が必要だ、と考えますね。判旨には反対です。 院生 :本件では、せあらは、柊平さんとの婚姻の継続に苦しんでいたので、柊平さんの強硬な言い分におされても遺棄したとみるべきではないと匿名コメントに載っています。 弁護士:しかし、協議で親権を決める際は、ある程度、こういうやりとりになるものですし、親権者変更でも、親権者指定の経過はほとんど考慮されないうえ、せあらは現実に隆聖と再婚しているわけですね。ですから事実誤認もあるんじゃないか、と思います。 院生 :僕もせあらさんのような人がくると、再婚家庭への配慮、つまりステップ家庭の場合、こどもが養親と別居親との間で心理的な葛藤状態に陥り面会交流の実施が子を不安定にさせるという事情が認められますから面会交流を制限すべきですね。 弁護士:匿名コメントでは、「本件ではそこまでの事情がない」と書いてありますが、子の福祉のみならずステップ家庭構築の利益も考慮されるべきですね。 院生 :あまり理解できないのは、本件では高葛藤事案であり、未成年者が忠誠葛藤を抱えやすく、他方、せあらも取り戻したいとの心情にかられる可能性もある、と指摘されていて論旨明快ではありませんね。 弁護士:本件は実施要領付ですし、時間も、母親と識別できないだろう千騎のことを考えると、抽象条項にとどめるべきであり、原審、抗告審、いずれも失当と云わざるを得ず、未成年者のペースに合わせて段階的に延長することを考えるべきですね。 院生 :ここまでの内容だとあまりステップ家庭と面会交流において、粗雑すぎるので実務上の参考にはなりませんね。ハーグ条約の影響もあるのでしょうか。 弁護士:中国はハーグ条約にも加盟していませんから連れ去られると原状回復も難しいですが、渉外だからこそハーグ的「感覚」が働いたのかもしれませんね。しかし、5カ月程度で審理を終えてしまう大阪高裁家事抗告集中の審理は拙速という批判も伴うかもしれません。これではアファーム以外考えられません。 弁護士:判断の分かれ道としては、「未成年者らが,申立人と相手方が離婚した直後の半年あまり,いずれも申立人を慕う反応を見せていたということは,相手方自身も認めている。未成年者らは,母親を喪失したことによる情緒的な混乱はあったが,幼いなりに現実の生活を受け入れて適応してきたと見られる。未成年者Dは,家庭裁判所調査官に対し,申立人に会ってもよいという言い方をしており,相手方の意向を気遣いながらも,申立人を慕う気持ちを見せている。」という点にあると思いますね。 院生 :可視化のない調査官調査が決め手になっているところがありそうですね。この点、「相手方から,申立人や姉達に会わないでほしいと言われて,「はい。」と返事をしたと述べており,未成年者Dの成長発達段階から考えて,相手方の意向に逆らうことはできなかったと考えられる。」との締めくくりもありますね。 弁護士:そのとおりです。ただ、再婚家庭については、親の利益として面会交流が制限されても良いのではないか、と思います。七美さんになついてくれないと夫婦間にも亀裂が走ってしまいますからね。疑問の残る判旨です。 ★大阪家庭裁判所平成28年3月17日 第1 申立て   申立人と未成年者らが面会交流する時期,方法などにつき定めることを求める。 第2 認定事実   本件記録によれば,次の事実が認められる。  1 申立人(1971年□月□□日生。国籍・中国)と相手方(昭和43年□月□□日生。国籍・日本)は,平成3年□月□□日に婚姻し,両名の間に,平成4年□月□□日に長女であるFが,平成5年□月□□日に二女であるGが,平成7年□月□□日に三女であるHが,平成20年□月□□日に四女である未成年者Dが,平成23年□月□□日に長男である未成年者Eが生まれた。  2 申立人と相手方は,平成25年□月□日,未成年者らの親権者を相手方と定めて離婚した。その際,中国語で,「申立人と相手方は性格不和により離婚する。子と財産は全ていらない,男性側に帰属する。これを証明する」旨記載された誓約書(以下「本件誓約書」という。)を作成した。    離婚後,相手方が未成年者らを監護養育している。なお,他の3人の子らは,当時,既に成人になっており,独立して生活していた。  3 相手方は,平成25年□月□□日にIと婚姻したが,平成26年□月□□日に同人と離婚した。    その後は,相手方は,B(1976年□月□日生。□□□□□□□□□)と婚姻し,Bは,平成28年□月□□日,未成年者らと養子縁組をした。  4 申立人は,前記離婚後,相手方に対して,未成年者らとの面会交流を求めたが,相手方が拒否し,面会交流は実現していない。  5 申立人は,平成26年□□月□□日,大阪家庭裁判所に,相手方に対して未成年者らとの面会交流を求める調停の申立て(同裁判所平成26年(家イ)第6876号,第6877号)をしたが,平成27年□月□□日,調停不成立となり,本件審判手続に移行した。  6 家庭裁判所調査官は,平成27年□月から□月にかけて,相手方,B,未成年者ら,未成年者Dが通う小学校の担任教諭,未成年者Eが通う保育園の園長と面接したが,その結果は,次のとおりであった。   (1) 未成年者Dについて     相手方によると,未成年者Dは,申立人が出て行って半年ほどは,「ママに電話してほしい。」と言って駄々をこねており,2番目の母親であるIとの関係は悪かったが,3番目の母親であるBとの関係は良好であり,今では,Bをママと呼んで,申立人に会いたくないと言っているということであった。     学校調査の結果,未成年者Dは,Iと同居していた時,一時的に精神的な不安定さを見せたことはあったが,現在では落ち着いて学業に励み,Bを慕う発言も出るということであった。現状は安定しており,家庭訪問時に未成年者Dから聴取したところ,現在の生活に不満を抱いていないことが分かった。     大阪家庭裁判所で未成年者Dの心情を聴取したところ,申立人について具体的なエピソードは語らなかったが,何をしたか言われたら思い出せるとも述べており,申立人に対する何らかの思いは抱いていると見られた。姉達の話題に絡めて,同居中の申立人との関係を質問したところ,優しかったなどの言葉も出ており,申立人との良い思い出を持っていることがうかがわれた。ただし,相手方から,申立人や姉達に会わないでほしいと言われて,「はい。」と返事をしたと述べており,未成年者Dの成長発達段階から考えて,相手方の意向に逆らうことはできなかったと考えられる。なお,家庭裁判所調査官が話を聞いていたところ,未成年者Dが,面会交流を一緒に暮らすことであると勘違いしていることが分かったので,申立人がときどき会いに来て,一緒に遊ぶことであると訂正したところ,未成年者Dは,申立人に会ってもよいという言い方をするようになっており,相手方の意向を気遣いながらも,申立人を慕う気持ちを見せていたと考えられる。   (2) 未成年者Eについて     相手方によれば,申立人と離婚した直後は,未成年者Eは,申立人を恋しがって毎晩泣いていたということであり,申立人を母親として認識していたため,急に母親を喪失して,混乱していたと見られる。その後の2年間に母親という存在が3人入れ替わっているが,現在では,Bを母親として慕い,十分に甘えているということであった。保育園調査の結果,現状の未成年者Eの生活状況に問題は見られないということであり,家庭訪問の際にも,未成年者Eの様子や相手方及びBとの関係に,特に気になる点はなかった。     大阪家庭裁判所で未成年者Eの心情を聴取しようとしたが,調査時に4歳1か月の幼児であり,語彙が十分獲得できていないことに加えて,幼児期の知的発達段階から考えて,抽象的な思考に制約があるため,申立人という存在をどこまで認識できているか,把握することは困難であった。相手方は,大阪家庭裁判所での調査に先立ち,未成年者Eに対して,申立人のことを説明したということであるが,家庭裁判所調査官が聴取したときには,ママという言葉だけでなく,パパという言葉にも「知らん。」という反応に終始した。未成年者Eは,遊びには熱中できていたので,緊張感からというよりも,遊びに気持ちが移ってしまい,実際に目の前に存在しない母親に関する質問に興味を示さなかった可能性がある。  7 申立人は,主に中国に居住しているが,面会交流が決まると,いつでも日本に来る意向を有している。    相手方は,当裁判所が勧めた試行的面会交流を拒んだため,家庭裁判所調査官による申立人と未成年者らの交流場面観察調査を実施することはできなかった。 第3 判断  1 国際裁判管轄及び準拠法    面会交流は,子の福祉の観点から認められるものであり,子と最も密接な関係を有する地である子の住居所地国に国際裁判管轄を認めるのが相当であるところ,本件につき,未成年者らは日本に住所を有しているので,日本の裁判所が国際裁判管轄権を有しているということができる。    面会交流は,親子間の法律関係に当たるので,法の適用に関する通則法32条により,子である未成年者らと父である相手方の共通の本国法である日本法が適用される。  2 面会交流の可否    未成年者らが,申立人と相手方が離婚した直後の半年あまり,いずれも申立人を慕う反応を見せていたということは,相手方自身も認めている。未成年者らは,母親を喪失したことによる情緒的な混乱はあったが,幼いなりに現実の生活を受け入れて適応してきたと見られる。未成年者Dは,家庭裁判所調査官に対し,申立人に会ってもよいという言い方をしており,相手方の意向を気遣いながらも,申立人を慕う気持ちを見せている。そして,子と子を監護をしていない親(以下「非監護親」という。)との面会交流は,子が非監護親と交流して,その愛情を確認する機会となるものであり,子の健全な成長にとって重要な意義を有することを考えると,申立人と未成年者らとの面会交流を実施するのが相当であるといえる。    これに対し,相手方は,①申立人が,本件誓約書において,「子はいらない」という記載に合意したことの意味は,親権がいらないという意味のみならず,未成年者らに二度と会わないという意味であること,②未成年者らは,現在,Bと新しい家族関係を築きつつある大事な時期であり,この時期に申立人と面会交流させると,未成年者らが混乱することを理由として,面会交流は認められるべきではない旨主張する。    しかし,①については,面会交流等の子の監護に関する処分について,未成年者が成人するまでの間,必要に応じて協議し,協議が調わないとき等には,家庭裁判所が協議内容を変更することができることになっており(民法766条1ないし3項),仮に相手方が主張するような合意が離婚時にされていたとしても,子の福祉の観点から,家庭裁判所においてその合意を変更することができるものである。②については,確かに,Bが,未成年者らと養子縁組をし,母親として既に未成年者らと同居生活を始めており,未成年者らもBを母親として受け入れているという事実を考慮する必要があることは,相手方が主張するとおりである。しかし,早い時期から未成年者らに真実の親子関係を教えることが,長い目で見て家族関係の安定につながると考えられるところであり,非監護親と定期的な交流の機会を持てることで,未成年者らの自尊心を高め,健全な成長を促進するということもできる。そうすると,未成年者らの健全な成長の観点から,一時的な混乱はあっても,幼い時期から申立人との良好な関係を築かせることは欠かせないと考えられるので,面会交流を禁止することは相当でない。  3 面会交流の方法    そこで,申立人と未成年者らとの面会交流の方法について検討する。    面会交流の実施日及び頻度については,未成年者Dが小学2年生,未成年者Eが保育園児であるので,学校等の生活になるべく支障をきたさない日曜日に実施すること,申立人が中国から来日して面会交流することになるため,月1回,申立人の希望する第2日曜日とすることが相当である。    1回当たりの実施時間については,未成年者Eが申立人のことを記憶しておらず,親子関係を構築し直す必要があること,未成年者らの生活リズムの安定及び翌日からの学校等の生活に支障をきたさないように配慮する必要があることに加えて,相手方の懸念(未成年者らとBとの関係性の安定)を考慮すれば,現時点で宿泊付きの面会交流を実施することは時期尚早であり,午前10時から午後5時までとすることが相当である。    同伴者(立会人)については,相手方は申立人による未成年者らの連れ去りを心配しているが,申立人が,パスポートを持たない未成年者らを直ちに中国に連れ帰ることは不可能であり,親権者が相手方になっていることからも,その可能性は極めて低いと考えられ,同伴者(立会人)を認める必要性に乏しい(なお,相手方の懸念に多少なりとも配慮するとすれば,当事者双方が合意して面会交流援助を実施している第三者機関を利用する方法もある。)。    受渡場所については,相手方が自営する店舗から徒歩圏であり,申立人の希望するとおり,□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□付近とすることが相当である。    面会交流の日時の変更については,未成年者らの病気,その他やむを得ない事由が生じて,上記に定めた面会交流の実施ができないときは,当該事由の生じた当事者から他方当事者に速やかに連絡を入れ,当事者間で協議して,代替の面会日時を設定することとし,その場合,原則として,実施予定日の1週間後の同時刻とすることが相当である。    連絡方法については,申立人と相手方のいずれからも具体的な希望は出されていないが,未成年者らの急な体調不良や交通機関の乱れ等で,実施当日に緊急連絡を入れる可能性を考慮すれば,当事者双方の携帯電話を利用して,電話または電子メールの方法により連絡を取ることが相当である。  4 結論    よって,申立人と未成年者らとの面会交流については,別紙面会交流実施要領のとおり定めるのが相当であり,主文のとおり審判する。   平成28年3月17日     大阪家庭裁判所家事第1部  別紙        面会交流実施要領  1 面会交流の日時    毎月第2日曜日の午前10時から午後5時まで  2 受渡場所   (1) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□付近   (2) 相手方または相手方の指定する親族等は,1で定める開始時刻に,上記(1)の場所で未成年者らを申立人に引き渡す。申立人は,1で定める終了時刻に,上記(1)の場所で未成年者らを相手方または相手方の指定する親族等に引き渡す。  3 実施日の変更    申立人,相手方または未成年者らの病気その他正当な事由により上記1の日時を変更する場合は,当該事由の生じた当事者は,速やかに他方の当事者に対し,携帯電話または電子メールの方法により連絡し,協議により代替日を決めるものとするが,代替日は,原則として,実施予定日の1週間後の同時刻とする。  4 本実施要領の変更    当事者双方は,協議により合意したときは,本要領の定めを変更することができる。

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