意外と難しい乳幼児との面会交流

乳幼児との面会交流

 面会交流について、10歳を超えるとこどもの意向が尊重されるものの、小さすぎても面会が難しいという事例があります。

それは、意思能力や論理的思考ができない乳幼児にいえることです。トイレなどに非監護親が上手に対応することは、普段一緒に生活していませんから難しいとは当然です。そこで面会交流補助者の提案をしますが、相手方祖父母には逢わせたくないという人も多いようで、適当な補助者がいない、あるいは意地悪されて補助者なしでの実施を余儀なくされるというケースもあります。
本来的には親族の付添いを拒否されるいわれはないのではないでしょうか。ときに裁判所は親族が面会交流補助者になると「親族が関与することは当事者間の紛争を再燃させる端緒となる可能性がある」といいますが、面会交流は自由交流であり遵守事項を決めればこうした弊害はないようにも思われます。

乳幼児の場合、分離不安など特殊な理論を振りかざして面会交流を拒否・制限するという見解もあります。つまり母親への密着状態が強く、いわゆる分離不安の傾向を示すというものです。しかし、習い事をしていたり保育園に通っていたりしている場合に分離不安があるというのは、無理があるように思われます。 しかし、子の年齢をどの程度重視すべきは難しい問題であるが、3歳程度未満ですと忠誠葛藤などの弊害が生じにくいという考え方もあります。 

面会交流の申立

 面会交流の回数については、かつては制限的でしたが、現在ではかえって時間が少ないのだから増やした方が良いのではないかという議論もあります。すなわち、月1回、数時間程度の面会を認めても、どの程度親子の交流が図られるのか、親の満足は得られてもこどもの観点からはどうかという問題もあります。 こどもは発達が早いので、2歳、3歳、4歳、5歳程度を射程に入れた審判も出されたことがあります。それが京都家裁平成22年4月27日です。なお、毎月ではないのは、申立人の方の希望でそうしたもので構わないという意向が伝えられていたようです。

第1 申立て

   申立人と未成年者とが面会交流する時期・方法につき審判を求める。

第2 事案の概要

 1 本件は,申立人と相手方とは夫婦であり,当事者間には未成年者がいるが,相手方が平成20年×月申立人との家を出て,相手方の実家に戻り,以後申立人と未成年者とを会わせないために,申立人が相手方に対し,未成年者との面会交流を求めている事案である。
 2 当事者の主張   
 (1) 申立人     
     相手方は,平成20年×月以降申立人と未成年者とを会わせない。そこで,申立人は,同年×月末に相手方の実家に未成年者に会いに出かけたが,相手方の母の拒否にあって面会できなかった。さらに,申立人は,相手方の父を通じて相手方に未成年者と会わせてくれるよう求めたが,親権が決まるまで会わせられないと拒否され,その他,申立人のビデオカメラなどで未成年者の様子を撮影して送ってほしいとの依頼を拒否された。よって,申立人は,未成年者との面会交流を求めて本件申立てをなした。
 (2) 相手方
     未成年者が申立人と会うと,情緒不安定になり,未成年者の状況からは現時点で申立人と未成年者との面会交流を認めることは未成年者の福祉を害するものである。未成年者が自ら申立人と面会交流を求めるようになれば,面会交流の場を設定する。そもそも,申立人の求める面会交流は申立人の父母のためのものであり,未成年者のためのものではない。したがって,申立人の面会交流の申立てを却下すべきである。

第3 当裁判所の判断

 

 1 事実関係    本件記録によれば,次の事実が認められる。

 

 (1) 申立人(昭和38年×月×日生)と相手方(昭和47年×月×日生)とは,平成19年×月×日婚姻した夫婦であり,当事者間には,平成20年×月×日未成年者が生まれた。相手方は,新婚旅行からの帰国後,新居での生活に関して申立人と意見が分かれ,妊娠中の相手方に対する思いやりがなく,その他,些細なことに文句を言う申立人に不満を抱き,次第に申立人ヘの不満を募らせ,未成年者の出産のために,相手方の実家に里帰りし,出産した以後もはや自宅に戻りたくないと思ったが,両親の説得もあって,やり直すことにし,同年×月末日ころ,未成年者と共に自宅に戻った。しかし,相手方は,申立人との生活を苦痛に感じ,さらに慣れない育児のために苦慮していたこともあって,毎週末相手方の実家に戻り,時には同家で泊まることもあった。そのために,申立人は,相手方を非難し,相手方に対し,相手方の実家に帰る回数を月2回程度に減らすことを求めたが,相手方には受け入れてもらえず,しばしばそのことで喧嘩となった。

 (2) 相手方は,申立人と寝室を別にし,未成年者と寝起きしていたが,帰宅の遅い申立人が帰宅後同部屋を訪れ滞在することから,申立人に対し,1階の部屋の戸が閉まっているときにはノックして部屋に入るよう,同部屋の戸が閉まり中の照明が消えていたら同部屋に入らないよう求めた。申立人は,帰宅して未成年者の顔を見ることを楽しみにしていたことから,相手方の上記申入れに納得することができなかったが,やむを得ず受け入れた。また,申立人は,出かける際や寝る時には声を掛けない相手方を不満に思っていた。
相手方は同年×月×日には自宅を出て実家に戻った。以後申立人と相手方とは別居している。申立人は,別居後相手方に未成年者との面会交流を求め,三,四回午前9時から10時ころに約1時間半程度,相手方の実家の最寄りの駅付近にある喫茶店で相手方と未成年者と3人で会ったが,その際相手方は拒否的な態度を取り険悪な状態であった。なお,相手方は,その際の申立人の状況について,申立人が未成年者をあやすこともなく,ただ写真を撮影したり,ビデオカメラで未成年者を撮影していただけであったと申立人を非難している。また,相手方は,申立人と未成年者との面会交流の帰宅途中,未成年者が号泣して手に負えなくなり,その数日後も夜泣きをしたとする。

 (3) 相手方は,申立人に離婚を申し出たが,申立人は拒否したので,代理人作成の同年×月×日付け書面により離婚に関して未成年者の親権,養育費の支払,面会交流などの条件に関する話合いを求めた。申立人は,相手方に戻ってくれるよう申し入れたが,相手方は,同年×月×日付け代理人作成の書面で離婚を決意した経緯を説明し,帰宅することを拒否し,未成年者との面会交流を自重するよう求めた。

 (4) 申立人は,未成年者の様子を知りたいと思い,同月×日ころ相手方の実家に赴いたが,相手方の母に面会を拒否され,同月×日午後0時30分ころから午後2時ころまで相手方の実家で相手方を待つも会えず,同日午後7時ころ再び相手方の実家に赴いたが,警察に通報され追い返され未成年者に会えなかった。その後も,申立人は,未成年者との面会交流を求めるが,相手方に拒否され,現在まで会うことができない。

 (5) 相手方は,同月×日当裁判所に夫婦関係調整調停(平成20年(家イ)第×××号事件)を申し立てたが,同調停は平成21年×月×日不成立となった。相手方は,申立人の言動が常識の範囲を超えており,引き続き一緒に生活していくことができないこと,申立人の両親からの過干渉,未成年者をあやしたこともなく未成年者に対する愛情はないと断言する。
    申立人は,同年×月×日当裁判所に子の監護に関する処分(面会交流)の調停の申立てをなしたが,同調停は,平成22年×月×日不成立となり,同日本件審判手続に移行した。相手方は,終始申立人と未成年者との面会交流を否定し,申立人との面会交流を認めることは子の福祉に反するという頑なな態度を取り,当裁判所の調停委員会からの試行的面会交流を強行に拒否した。他方,申立人は,未成年者との頻回な面会交流を切望している。

 (6) 相手方は,○○家庭裁判所に離婚の訴えを提起し,平成22年×月×日未成年者の親権者を相手方とし,申立人が相手方に養育費を支払う旨の和解離婚が成立した。

 (7) 申立人は,現在,申立人の両親宅で居住している。申立人は,奈良県○○市に所在する会社に勤務しており,申立人の勤務時間は,月曜日から金曜日の午前9時から午後5時30分までである。
申立人は,当初頻繁に面会交流を求めていたが,その後,月に4回延べ24時間会いたいと希望を変更し,さらに,1か月に1回を基本とし,隔月で月2回を最低の回数とするという内容に希望を変更した。

 (8) 相手方は,両親と未成年者との4人暮らしである。相手方は,現在○○で臨時職員(3か月単位の契約である。)として稼働するようになり,勤務時間は午前8時30分から午後5時15分までである。相手方は,申立人と未成年者との面会交流に否定的であり,「今は父親に会わせる必要が全くないと思う。こどもにとって百害あって一利なし。壊れた食器洗い洗浄機を勧められているようなもの」などと言って申立人への不信感をあらわにしていた。また,相手方は,申立人からの面会交流の要求を退け,未成年者を不安定な状態におくことを避けること,安心した環境で育てることが未成年者にとってベストであるとする。さらに,未成年者の母として未成年者を危険な状態にさせる可能性のあることに晒すことはできないし,それを阻止するのが母親の役目であるとする。相手方は,申立人が未成年者と面会交流すると未成年者を相手方に返さない可能性が高いと述べる。

 (9) 未成年者は平成21年×月当時,歩けるようになり,手づかみであるが自分で食事も食べ,保育園ではトイレットトレーニングを受け,一語文も発するようになっていた。

 

2 検討・判断

 

 (1) 子と非監護親(非親権者)との面会交流は,子が非監護親(非親権者)から愛されていることを知る機会であり,子の健全な成長にとって重要な意義があるため,面会交流が制限されるのは,非監護親(非親権者)から暴力を受けるなど面会交流することが子の福祉を害すると認められる場合に限られ,そのような事情がないときには,子は非監護親(非親権者)との面会交流が認められるべきである。前記1で認定した事実からは,申立人が相手方や未成年者に暴力をふるっていたことは認められず,その他申立人が未成年者と面会交流することが不適切であるとの事情は全く認められない。
 (2) 相手方は,未成年者が申立人と面会交流すると情緒的不安定になり,母としてはそのような状況を阻止すべき責務があるとして,申立人との面会交流を頑なに拒否しているが,子は両親の愛情を平等に受ける権利を有しており,非監護親(非親権者)と定期的に面会交流することにより人的関係及び直接的な接触を通じて非監護親(非親権者)の愛情を感じることにより健全な成長を果たすことができるものであって,親権者であってもそのような子の権利を害することは到底許されるものではない。そして,離婚による子の喪失感や不安定な心理的状況を回復させ,子の健全な成長を図るためにもできるだけ別居後早期に非監護者(非親権者)との面会交流を実施することが重要である。たしかに,離婚問題を抱えている両親の葛藤が子に影響することを否定することができず,監護親(親権者)の情緒的不安定が子の情緒的不安定を引き起こす可能性を否定できないし,両親の離婚により子自身も情緒的不安定を抱え不適応な症状を呈することも想定される。しかし,子は監護親(親権者)と独立した存在であって監護親(親権者)の心情と一体するものではなく,子のそのような情緒的不安定や不適応な症状は一過性のものであり,監護親(親権者)が愛情を持って子を十分支持し,冷静に振る舞うことができれば,そのような状況は次第に収まってくることは過去の経験の示すところである。したがって,相手方の上記主張及び縷々述べることを,面会交流の可否の判断において考慮することは相当ではない。
 (3) そこで,未成年者と申立人との面会交流の条件について検討するに,相手方の生活状況や未成年者の年齢,未成年者と申立人とが約1年8か月間会っていないことを考慮すれば,未成年者が申立人との面会交流に慣れるためには面会交流の回数及び時間を段階的に増やすのが相当である。また,未成年者の年齢からは,相手方もしくは相手方の指定する親族の立会いを必要とする状況にある。さらに,申立人の未成年者ヘの愛情から頻繁な面会交流を求める心情を理解できない訳ではないが,過去の経緯からは,今後も,未成年者が申立人と相手方との葛藤の大きい状況下に置かれ情緒的に混乱を来す可能性が極めて強いことが懸念されることから,申立人においても未成年者の置かれる状況を十分理解し,強い愛情のもと未成年者の心情に十分配慮すべきであり,未成年者と申立人との面会交流を円滑に実施するには,申立人,相手方双方が未成年者の福祉に慎重に配慮することが重要である。

 

 3 よって,本件申立ては理由があるから,主文のとおり審判する。(家事審判官 山口芳子) (別紙)

 

面会交流の要領

  1 面会交流の回数・日時
   ア 平成22年5月,7月,9月,11月,平成23年1月の各第2土曜日の午前10時から午前11時
   イ 平成23年3月以降平成24年1月までの奇数月の各第2土曜日の午前10時から午後0時
   ウ 平成24年2月以降平成25年2月までの各月の第2土曜日の午前10時から午後2時
   エ 平成25年3月以降毎年各月の第2土曜日の午前10時から午後4時
  2 面会交流の方法
   ア 相手方又はその指定の親族等は,面会交流の開始時刻に○○駅改札口付近において,未成年者を申立人に引き渡す。
   イ 申立人は,面会交流の終了時刻に同所において,未成年者を相手方又はその指定する親族等に引き渡す。
   ウ 相手方又はその指定する親族等は,未成年者が小学校に入学するまでの間,未成年者と申立人との面会交流に立ち会うことができる。
  3 予定日の変更 未成年者の病気その他やむを得ない事情により上記1のアないしエの日時を変更するときは,当該事情の生じた者は,他方に対して速やかに連絡して,双方協議の上,振替日時を定める。ただし,振替日時は,原則として,予定日の1週間後の同時刻とする。
  4 申立人と相手方とは,未成年者の福祉に慎重に配慮し,申立人と未成年者との面会交流の円滑な実施につき互いに協力する。
  5 申立人と相手方とは,申立人と未成年者との面会交流の日時,方法等について変更を要するときは,互いに誠実に協議する。

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