引き渡し・連れ去り

子の奪い合い-ハーグ条約と国内事案への影響

 ハーグ条約は、国境を越えた不法な子の連れ去りが行われた事案に適用されるものです。  しかし、これら制度設計は、日本の国内事案における子の奪い合い紛争にも少なからず影響を与えるのではないかと考えられます。  とりわけ母親による子どもの連れ出し別居については、ハーグ条約の枠組みを前提とされれば禁止されるべき自力救済にあたると考えられます。  従来は子連れ別居に日本の裁判例は寛容であると評価されてきました。しかし、ハーグ条約においては、子の奪い合いの際の裁判所の判断基準を変えるものと考えられます。  しかしながら、監護の開始における違法の問題は考慮されるべき重要な事情であるが、それだけで事が決められるわけではありません。  現在は、子連れ別居をすべて違法と評価することはできないというのが家裁実務といえます。このことからハーグ条約により考慮要素として監護開始の違法という考慮要素が加わると考えられますが、全体の総合評価という考え方は異ならないと考えられます。しかし、新たな考慮要素が加わることにより、監護者指定や子の引き渡しの審判に影響が生じると考えるのが妥当ではないかと解されます。  また、ハーグ条約は原則返還となると解されるわけですが、返還拒否事由として「重大な危険」の抗弁があります。つまり、子を返還することにより、子が身体的もしくは精神的な害を受けており、またはその他子どもを耐えがたい状態におくことになる重大な危険があること-である。  逆にいうと、これまで子の福祉の観点から結局継続が重視されてきましたが、「重大な危険の抗弁」という考え方が注入されることにより、継続性の抗弁に影響を与えるものではないかと解されます。

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