親権に関するお悩み

本案で認められた面会交流審判が執行で履行不能とされた事例

面会交流債務が母の意思のみによって履行することができず履行不能とされた事例

 

第1 事案の概要

 父母は平成23年、9歳の長女の親権者を母と定めて協議離婚し、母は再婚し、ステップファミリーとなった。そして義父とは養子縁組をして、共同親権行使が復活したことになる。

 父は、面会交流を求め、毎月1回の面会交流の本案審判を得たものの面会を拒絶されたことから間接強制を申し立てたものである。原審は不履行1回につき10万円の支払いを決定した。本件の複雑な経過は省略する。

 さて、間接強制の原審は、1回の不履行につき30万円を命じる決定をした。

第2 抗告審の決定

 本件は執行抗告の事例であるが、本件では未成年者が父との面会交流を強く拒否しており、その年齢や精神的成熟度を考慮すると、未成年者に面会交流を強いることはかえって子の福祉に反するので、履行不能の状態であるとして原決定を取り消し、間接強制の申立てを却下したものである。

曰く「検討するに,上記決定の事案においては,離婚した夫婦間で月1回の子との面会交流を認めた審判に基づく間接強制について,義務者である母親において,子が面会交流を拒絶する意思を示しているとして間接強制決定が許されないと主張したのに対し,上記決定は,「子の面会交流に関する審判は,子の心情等を踏まえた上でされているといえる。したがって,監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判がされた場合,子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは,これをもって,上記審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し,又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別,上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。」と説示した。
    しかし,上記事案における子は平成18年■月生まれであり,上記決定当時は満7歳に達していないのに対し,本件の未成年者は平成13年■■月■日生まれであり,平成29年■月■■日(当時満15歳3か月)に行われた前記家庭裁判所調査官による意向調査において,相手方との面会交流を拒否する意思を明確に表明し,その拒否の程度も強固である。そして,そのような意思は未成年者自身の体験に基づいて形成されたもので,素直な心情の吐露と認められるから,その意思は尊重すべきである(なお,相手方は,未成年者の意思は,頑なに面会交流を拒否する抗告人らの影響を受けており,本心とは評価できないと主張する。しかし,仮に未成年者が面会交流に消極的な抗告人らの意向を聞いているとしても,上記意向調査の結果によれば,未成年者はそれも踏まえて自らの意思で面会交流を拒否していると認められるから,未成年者の意思を本心でないとか,抗告人らの影響を受けたものとしてこれを軽視することは相当でない。)。
    また,間接強制をするためには,債務者の意思のみによって債務を履行することができる場合であることが必要であるが,幼児のような場合であれば,子を面会交流場所に連れて行き非監護親に引き渡すことは監護親の意思のみでできるが,未成年者のような年齢の場合は子の協力が不可欠である上,未成年者は相手方との面会交流を拒否する意思を強固に形成しているところ,未成年者は平成29年■月より高等学校に進学しており,その精神的成熟度を考慮すれば,抗告人らにおいて未成年者に相手方との面会交流を強いることは未成年者の判断能力ひいてはその人格を否定することになり,却って未成年者の福祉に反するということができる。したがって,本件債務は債務者らの意思のみによって履行することはできず履行不能というべきである。
 加えて,前記認定のとおり,抗告人らは相手方と未成年者の面会交流の拒否を求めて調停申立てをしているところ,その帰趨を待つ余裕がないほど喫緊に面会交流を実施しなければ未成年者の福祉に反するような事情があるとも認められない。」として間接強制を却下したものである。

第3 解説

 面会交流と間接交流をめぐっては、最判平成25年3月28日が間接強制を認めているが、最高裁は本案で「子の心情も含めて、上記審判に基づく間接強制を妨げる理由にならない」とされているのです。

 しかし、間接強制決定は、債務者が債務を履行できることが前提となるところ、本件では、債務者に間接強制金の支払いを命じたうえ、債務者にとって過酷な執行になる可能性がある。

 思うに、子の発達段階に応じた場合分けをした場合、少なくとも子の判断に独自の価値が認められる場合には、子に対して可能な範囲で説得を行えば債務者としての期待可能なすべての行為を尽くしたことになる。その意味で面会交流債務は第三者であるこどもの協力が得られなければ実施できない不代替的作為義務ということができる。そして、子の利益との関係を重視し、子の拒絶の意思が強固なことが明らかな場合であって、子の年齢その他の事情を考慮し、監護親に履行を強制することが子の利益にそぐわず不当である場合は間接強制は、許されない。

 抗告審の判断では、最高裁は7歳、本件では15歳3か月としているが、最高裁でも10歳前後の係属はあったのであり、単純に年齢で割り切ることはできない。そして、本件では、再度の面会交流禁止の調停が申し立てられたものである。そして、これらの評価として、自らの意思で面会交流を拒否していると認められたものである。

 思うに15歳ともなれば、面会を強いることは、人格否定になりかねず未成年者の福祉に反することから本件は履行不能として、間接強制は許されないものとしたものである。

 もっとも、本案で面会が認められたのに、執行で拒否できるという枠組みは不適切極まりないようにも思われる。たしかに、執行の問題はあるとしても、短時間の非監護親との面会が本当に難しいのか、それらも含まれた働きかけをしているか、慎重に判断すべきように思われる。

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