3年から4年が「長期の別居」=婚姻破綻のメルクマールか。

同居期間が約10年に対して、別居期間が控訴期間を含めて4年10カ月余りの事案で離婚判決が出されました。 こうした点をみると、高裁は5年を経過しそうな夫婦については婚姻破綻を「長期の別居」として認める傾向にあるといえるわけですが、現在ではそれでも短くても認められるかという点です。 妻は、夫による暴言や暴力等により全般性不安障害に陥り別居に至ったことから婚姻関係は破綻したと主張し、離婚及び離婚慰謝料を請求しました。 原審の段階では、これら事実をすべて認定できないとして、3年5か月の時点での婚姻破綻を否定しました。 これに対して、控訴審は、別居期間が4年10カ月になっているとしていますが、控訴審でなぜ1年5か月も審理をしているのか異常というしかありません。 本件では、主文では、離婚と親権者しか定められておらず財産分与は求められていません。したがって、どうしてこれほど時間がかかったのか疑問が残るところです(東京高裁平成28年5 月25日) 控訴審は、別居期間が長いとして4年10カ月についてそのように指摘しましたが、4年10カ月であればそれは異論がないところかもしれません。どうして原審が3年5か月で結審したのに、控訴審にこれだけ時間がかかったのか、という点に疑問を感じます。 ただ、最近では3年説も有力であり、原審は3年5か月で棄却しているという点で、評価する見解と異論の余地があるとする匿名コメントの見解があるようです。 しかしながら、昔は、同居期間に比例するだけの別居期間が必要とされていました。3年経過したらと割り切るところも難しいところです。 熟年離婚では破綻が争われるケースがめずらしくありません。 別居がある程度の期間にわたって続いたとしても、その間に、当事者間に一定の交流があり、離婚に反対する配偶者が修復に向けた具体的な行動をしたり、当該配偶者が婚姻費用分担金支払義務を負う場合に分担金を誠実に支払続けたりしたといった事情があれば、これは、婚姻関係の破綻の認定を妨げる方向に働く事情ともいえます。 この点、東京高裁が、修復に向けた具体的な働きかけがあったとはうかがわれないと示しているが、この点は婚姻破綻の認定を妨げるポイントになり得るともいえるかもしれない。 東京高裁平成28年5月25日 控訴人は,本件別居後,一貫して被控訴人との離婚を求め続けており,原審における控訴人本人尋問においても離婚を求める意思を明らかにした。  他方,被控訴人は,原審における被控訴人本人尋問において,控訴人との関係修復の努力をするとの趣旨の供述をしたが,本件別居後,被控訴人が,婚姻関係の修復に向けた具体的な行動ないし努力をした形跡はうかがわれず,かえって,前記認定事実のとおり,別件婚費分担審判により命じられた婚姻費用分担金の支払を十分にしないなど,被控訴人が婚姻関係の修復に向けた意思を有していることに疑念を抱かせるような事情を認めることができる。  以上のとおり,別居期間が長期に及んでおり,その間,被控訴人により修復に向けた具体的な働き掛けがあったことがうかがわれない上,控訴人の離婚意思は強固であり,被控訴人の修復意思が強いものであるとはいい難いことからすると,控訴人と被控訴人との婚姻関係は,既に破綻しており回復の見込みがないと認めるべきであって,この認定判断を左右する事情を認めるに足りる的確な証拠はない。  したがって,控訴人の離婚請求には理由がある。 原審 婚姻の本質は,両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことであるところ,原告は,被告との接触のストレスから全般性不安障害となっていて,被告との同居は無理である旨述べる。しかし,原告が婚姻関係の破綻原因と主張する事実は,上記認定のとおり,その存在自体が認められないか,存在するとしても,いずれも,性格・考え方の違いや感情・言葉の行き違いに端を発するもので,被告のみが責を負うというものではない。そして,そのような隔たりを克服するためには,相互に相手を尊重し,異なる考え方であっても聞き,心情を汲む努力を重ね,相互理解を深めていくことが必要である。しかしながら,原告は,独り決めする傾向が見受けられ,被告が後から何か意見などをすると,自分の判断・行動を責められていると感情的・被害的になって受け入れず,被告に自身の精神状況について深刻に相談をすることもしないまま一方的に別居し,別居後も,頑に離婚を主張している。他方,被告も,独断的な傾向(とにかくやれば良いのだなど)があり,口論の末ではあったかもしれないが原告に大声を出すなど,原告の精神状態に配慮を欠いた相互理解の姿勢に乏しい言動があった。しかし,現在被告は,原告との修復を強く望み,従前の言動を真摯に反省し,全般性不安障害の理解のための努力も重ね,今後も原告の治療を優先に(夫婦カウンセリングも視野に入れている),段階を踏んだ時間をかけての関係改善を考えている。また,原告の,全般性不安障害の原因は,原告の生育歴や思考パターンによる部分も大きいものと考えられる。さらに,被告は,長男誕生時からその養育に関わり,現在も被告と長男の関係が良好に保たれているうえ,原告と被告の同居期間が約10年であるのに対して別居期間は約3年5か月と短い。    以上を総合考慮すると,原告と被告との婚姻関係は,原告の治療を優先に進めながらではあるが,原告と被告が相互理解の努力を真摯に続け,長男も含めた家族のあり方を熟慮することにより,未だ修復の可能性がないとはいえず,婚姻を継続し難い重大な事由があるとまでは認められない(ただし,被告が原告に対し,定められた婚姻費用を支払うべきことはいうまでもない。)。  3 よって,その余の点につき判断するまでもなく,主文のとおり判決する。

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