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三日月と流れ星

「三日月と流れ星」というコミックスをリコメンドされたので、少し読んでみました。 ストーリーは、公式サイトによると、「長谷川充希、大学1年生。充希には16歳のころから思い続けている人がいる。その相手は18歳年上、カフェ店長の浅井隆聖。妻とは死別していて息子が1人いる。隆聖は充希のことを大切に思っているが、なかなか恋愛対象には見てくれない」というものです。 (1)年令差18歳 (2)死婚された方 (3)玲於という息子と主人公は4歳しか年齢が離れていない ―とよくできた設定だなあと思いつつ、三日月は、不完全さの象徴なのか、暦の上で1日に近いことからスタートを示すのか、月を象徴するものなのか秋の季語なのか、ハイドンの「月の季節」、ベートーベンのピアノソナタ14番あたりを思い浮かべつつ、今般の三日月の印象は、綾香の三日月のイメージが広く浸透しているから、こういうものとしてとらえているのかもしれないなどとも思い浮かべます。三日月のイメージは、今にも消えそうで細くて、でも凄いパワーを放っている三日月、あるいは「たとえ離ればなれになっても距離が遠くても、同じ空、同じ三日月を通じて想いはつながっている」の象徴とも受け止められていると思います。流れ星は、流星の願いがかなうことをイメージしているのでしょう。ということになると、テーマは、今にも消えそうな細い絆に願いをかけている、といったところなのでしょうか。 この主人公のバックボーンはあまりあかされませんが、18歳も年上の男性を好きになる場合、理想化されていた父親像をその人に重ねあわせていることが多いと思います。ですから、主人公の幸せも将来を見据えると、どうなるのかなと思います。主人公の友人が本来であれば「18歳も年上子持ちなんて全力で止める!」という心情も理解できるものです。 他方、もう一つの軸になるのは玲於。16歳になる玲於は、10年前に母と死別して父親と暮らすものの、3年前に浅井が脱サラしてカフェの経営者になるまでの間、ほとんど自宅を不在にして、玲於との間には溝ができていたものの、玲於が父親を取り戻してカフェでアルバイトを始めるなど距離を縮めようとしている中でのお話しでもあります。初期の玲於は、結婚指輪を外さないのは太っただけ、キャバクラに出入りしている、彼女が父親には何人もいると、ある意味ディスる情報を主人公に伝えて、更に、付き合い始めたら「親子止める」と言い放ちます。 浅井と主人公は、西村京太郎などの文学青年と文学学生という点で、かなりマニアックなところで重なり合って話題が絶えないことでしょうか。たしかに結構マニアックなレベルで結び付いたり、異なる視点を提示できる人とは話しもはずみます。その姿をみて主人公の友人たちは、むしろ応援をするようになります。 しかし、浅井サン。死婚というのは、亡くなった配偶者への想いが続いているということは、本当にあります。離婚相談でも、そういう女性の相談や男性の相談を数多く受けましたが、やはり亡くなった奥さんへの想いを乗り越えて、新たな創造をできるのかなのですが、玲於やカフェの経営を理由に自分自身と向かい合ってこなかったような印象を受けます。 そして、主人公と浅井サンはもともと良い雰囲気なので、このままではハッピーエンドに結びつきそうですが、そこに玲於が、どうからんでくるのかが楽しみなポイントかなと思います。 もともと、息子が1番で、仕事が2位という浅井さんも、2年後、玲於が18歳になれば子離れする必要も出てくるでしょう。他方、30歳前後の世間体に合った人を選ぶのか、玲於が主人公を狙いに行くのかといったところでしょうか。 公刊の後半では、玲於は、浅井さんの息子らしく「気持ちダダ漏れ」といって、主人公の気持ちを表情や雰囲気から読み取ってしまっています。しかし、玲於の主人公に対する気持ちも「ダダ漏れ」である様子が示唆されています。これに対して主人公から玲於は「女性に誠実ではないタイプ」と評されるなど、なかなかハードルは高そうです。 ただ、充希に感情移入すると、おそらく背後に父親をみているので勢いだけで結婚までいってしまってよいのかな、といったところでしょうか。あれだけの作品を読んでいれば自分と向かい合う時間もあったように思います。他方、浅井さんとしては、シングルでも構わないし、もう玲於のために結婚する必要性も感じていません。そして、亡くなった妻への想いもあり外さない指輪。彼は、誠実さがあるようにみえて内省に乏しく、そして主人公が自分にまだみぬ父親を重ねあわせているだけで、将来を伴走するのは自分ではないと早くから主人公に伝えています。心理的にも合理的な見立てにセカンドソウトがあるのだろうか、と。 玲於としては、高校生の間、自分と年齢が4歳しか違わない女性と父親が交際するというのは生理的に受け付けられないという気持ちと自分自身が充希を好きになったと気付けたとき、どういう行動を移すのか、玲於は素直になれない思春期の高校生で、言動が直情的で、大人なキャラクターが多い中で、作品にスパイスを与えているように感じます。玲於は、怪我をさせた充希に真摯にアテンドを続けて、みな内心は誠実な人だと見抜かれているという点が幸せな子なんだろうなあと思います。しかし、俺様的言動が多いため多くの女性ストーカーに愛されているようです(笑) ある弁護士が「ロミオとジュリエット」はその場で終わるからおもしろい。でもその後を描けば絶対離婚すると断じていたロマンの欠片のない女性がいました。 しかし、なんとなく、充希と浅井さんがもし結婚してその場で終わるとしても、実はその後作品に描かれない様々な問題が出てくるのではないかなと思ってしまいます。 なんといっても、二回りも年齢が違うのですから、そのうち二人が求めるものが異なってきて、むしろ離婚とまでは言えなくても距離が離れていくことはあるでしょう。 とはいうものの、男性と女性で10歳程度年齢が違うカップルは普通のように思うのですが、やはり18歳というのは心理的問題を抱えているから、それを克服してからじゃないかな、と思ってしまいます。